ホームドクター通信
2006年7月 No.10
◆当院からのお知らせ

梅雨になり、雨模様の日々が続きます。晴れると暑いし、雨だと結構降るし、やっかいな季節です。

お知らせその1

 6月1日からニコチンパッチが保険適応になりました。前回の院内報で、ニコチン依存症の治療が保健適応になったことはお伝えしましたが、ニコチンパッチの保険収載がまだだったので、結局は医療保険による禁煙指導には踏み切れませんでした。
 このたびニコチンパッチが保険適応になりましたので、6月から保険による禁煙指導をしています。ただ、まだ喫煙年数×1日の本数(ブリンクマン指数)が200以上の縛りがありますので、若年者、ことに妊娠前の女性への指導ができません。おかしいとは思いますが、これは我々が実績を積み上げて厚生労働省に申し立てをするしかないようです。当院はインターネット禁煙マラソン、ノバルティスの禁煙ネットに登録していますので、HPをご覧になった方が禁煙治療に来られます。まだ保険で診療できるところは少ないようです。これもおかしいなぁ〜と思いつつ、禁煙の標準手順書に沿って治療しています。今のところ反応はいいようです。7月1日にタバコも値上げされましたので、この機会に喫煙者の方は是非禁煙してみてください。禁煙してよかったと思う院長よりメッセージでした。


 お知らせその2

 パソコンの画面を一緒にみましょう♪

 医師がパソコンの画面ばかり見て、顔をみて話してくれない、というクレームがありました。どこの施設にもあるようで、そのひとつの診療所の対応策を当院でも採用(真似ですが)することにしました。

 患者さんへの提言で、医師がパソコンを見ている間は一緒に画面をみましょう、というものです。手書きカルテにしても、顔を見ながらカルテを書く人はほとんどいません。書いている間は下を向いて、患者さんの方は向いていないはずです(少なくとも私はそうでした)。私の文字入力は手書きの殴り書きよりは遅いけれども、丁寧に書くよりは早い、というレベルです。手書きと比べてパソコンで入力することにそれほど手間取っているわけではないと思います。また、手書きカルテの時は専門用語主に英語を使用していましたが、今はほとんど日本語で記載しています。カルテは当院で保管しますが、患者さん自身の記録ですので、出鱈目を書かれないよう監視しておいてください。診察中、過去の検査結果を参照することがありますが、これも一緒に見てくださることを希望しております。
   

 お知らせその3

 ご希望事項であった「身体障害者用のプレートを駐車場の壁に掲示する」が実現できました。まだ一部不具合がありますので(スペースが狭い)、改善しておきます。
                                                




◆特集:”痔”の治療について


 ご存知の方もおられるでしょうが…

 岸和田徳洲会病院で毎週月曜日、肛門科外来をしています。
月に一度(第一週の月曜日)は手術日になっており、外科のスタッフ・研修医の先生の協力を得ながら自分の担当した患者さんの手術をしています。もともとは外科医で、開業しても自分の専門分野の診療+手術をしたいとの希望で徳洲会病院の前院長廣岡先生にお願いして担当させていただいていました。おかげさまで月曜の午後は多忙な時間を過ごさせて頂いています。

 最近、徳洲会病院でしている内痔核の治療について説明します。
まず、痔の重症度分類と治療法を下表にまとめてみます。主に痔核の脱出の程度で病期が分かれて、治療法が変わってきます。荒っぽい言い方をすると、痔で手術が必要なのは、貧血になるくらい出血する、か痔核が肛門の外に出てきて自分で押し込まないと戻らない、あるいはずっと脱出したままのいずれかといえます。上記の治療の中でゴム輪結紮、PPH、ジオン注が新しい治療法です。























以下各治療法の説明です。

 注射硬化療法

 注射硬化療法は患部に硬化剤を注射して、痔核を硬化、縮小させ、出血を止める方法です。軽度の内痔核に適した治療法です。注射は直腸内の痛みを感じない部分にするため、麻酔の必要はありません。注射をするだけなので外来で治療を受けることが可能です。また、止血効果は高いのですが、いぼそのものを完全に消滅させる効果は弱いです。効果は一年程度、ともいわれています。


 痔核ゴム輪結紮法 

 ゴム輪結紮法は内痔核の治療に広く使用されており、特殊な器具を使って、痔核の根元にゴム輪をかけるというものです。1、2週間ほど時間が経過すると、ゴムで縛った痔核は壊死して排便中に排泄されます。この治療法を行えるのは内痔核のみで痛みは伴いません。しかし、病状を解消するために通常1回以上の処置が必要となります。外来ですることができます。当院でも導入を考えています。


 痔核結紮切除法

 従来からの手術療法です。痔核に流入する血管を結紮(しばること)して、痔核のみを切除する方法です。切除したあとの粘膜は縫い合わせます。多少の痛みを伴います。


 PPH(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)

 痔核治療用の特殊な器具を用いて、脱出した内痔核を「持ち上げ」て位置を直し、同時に内痔核への血流を減少させることによって痔核を縮小させる治療法です。術後から通常4〜6週間以内に完治します。
PPHは痛みを感じる神経のない部分、つまり肛門管内の歯状線(痛覚ライン)より上で行われるため、従来の痔核切除術より痛みが少なくてすみます。
かなり画期的な新しい治療法ですが、残念ながら保険が適用されていません。


 ジオン注射

 ジオン注は「脱出を伴う内痔核」に効能・効果を持つ局所注射用配合剤であり、痔核への投与にあたっては「四段階注射法」という独特な手法を用いて投与します。
 非観血的に病変組織を硬化退縮させることにより重度内痔核の脱出と排便時出血を消失させると考えられます。
 ジオンによる痔核注射療法は、従来、手術が選択された脱出を伴う内痔核または内外痔核に対して治療効果が期待できます。手術適応とされるV、W度で、28日後の脱出の消失率は手術と同程度であり、1年間の再発率は16%でした。今まで手術が必要とされたV、W度の脱出内痔核に対して有用な治療の選択肢となり得ます。
 
最近、岸和田徳洲会病院でこの治療が可能になりました(するのは私ですが…)。
内痔核治療法研究会のホームページにも掲載されています。
http://www.zinjection.net/general/list.php?var=kinki#27



 痔は成人の3人に1人が持っているといわれています。しかし、病院に受診される人はわずかです。初めて受診したときにはかなり進んでいる場合も多いです。また自分では痔だと思っていても大腸がんなどの病気が隠れていることがありますので、症状がでた場合はできるだけ早めにご相談ください。
 
詳しくは内痔核治療法研究会のホームページをご覧ください。












◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの? かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

 6月末までに原稿を仕上げる予定が、また少し遅くなり、福岡の編集者より催促をされていました。

 いつも遅れ気味ですが、月刊をめざしています。

 早くブログ(日々の医療情報に関するものです)も立ち上げたいと思ってはいるのですが、
 なかなかすすみません。

 暖かくご支援いただければ幸いです、と甘えております。