2015年 10月 No.119

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

秋が深まっていきます。
朝夜はかなり冷え込むようになってきました。
でも、まだ日中は暑さを感じます。
寒暖の差が激しいので、体調管理には十分留意してください。

インフルエンザ予防接種しています。

昨年のワクチンとは少しウィルス株が変わっています。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、一般の方、3000円です。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないこと、です。
ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。
ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。
当院としてもインフルエンザワクチンは接種はお勧めしています。

2015年のノーベル医学・生理学賞が、微生物が作り出す有用な化合物を多数発見し、医薬品などの開発につなげた北里大特別栄誉教授の大村智氏(80)ら3氏に授与されました。
日本人のノーベル医学・生理学賞は利根川進氏、山中伸弥氏に次いで3人目です。

 大村氏は昭和50年、静岡県内の土壌中で見つけた新種の放線菌から、寄生虫や昆虫をまひさせる機能を持つ抗生物質「エバーメクチン」を発見。
この化学構造を改良し、米製薬大手メルクが家畜の寄生虫駆逐剤「イベルメクチン」を開発されました。

 この薬剤は57年、アフリカなどの風土病である「オンコセルカ症」にも極めて高い有効性を持つことが判明。
オンコセルカ症は河川盲目症とも呼ばれ、線虫の幼虫が目に侵入して発症します。
途上国では失明の主な原因となる恐ろしい病気ですが、イベルメクチンによって症状の悪化を防いだり、感染を防いだりすることが可能になりました。

イベルメクチンは世界保健機関(WHO)を通じ、アフリカや中南米などで延べ10億人以上に無償提供され、多くの人々を失明の危機から救いました。
大村氏は多くの機能を持つ化合物を微生物から400種類以上も発見したことでも知られています。
また研究以外では、北里研究所の副所長や所長を歴任し、研究所の財政再建に尽力するとともに、メディカルセンター(現・北里大学メディカルセンター)の設置を推進された。
女子美術大学への支援や私費による韮崎大村美術館の建設、学校法人開智学園の運営などの貢献業績があるそうです。
素晴らしい活躍をされた方なんですね。
授賞式は12月10日にストックホルムで行われるそうです。おめでとうございます。

iPS細胞の話題

理化学研究所などのグループは10月2日、iPS細胞からつくった網膜細胞を移植する世界初の手術について、実施から約1年経ったが結果は良好だと発表した。
手術を受けた女性に、がんなどの異常は見られないという。

理研や先端医療振興財団は昨年9月「加齢黄斑変性」の70代の女性患者に対し、患者の皮膚細胞からiPS細胞を作り、さらに網膜細胞を作成、移植する世界初の手術を実施しました。
目の中は、移植後も外から観察できて検査が容易であるため、何か異常が起きた場合に発見しやすいこともあって、iPS細胞の最初の医療への応用として、実施が認められました。
手術から1年経った現在、患者の視力は術前とあまり変わらない0.1程度を維持しており、「明るく見えるようになり、見える範囲も広がったように感じる。治療を受けて良かった」と話しているとのことです。

iPS細胞は、治療が難しいパーキンソン病や脊髄損傷などへの応用が期待されています。
早く多くの患者に使ってもらえる治療にしていきたいものです。

STAP細胞

9月24日付の英科学誌「ネイチャー」に、STAP細胞の存在を否定し、その正体はES細胞だったとする2つの論文が掲載されました。これで世紀の大発見は捏造だったことが改めて立証され、世界に発信された形となります。
iPS細胞と同様に個人的に注目していたSTAP細胞ですが、今後この紙面で取り上げられることはないでしょう。
優秀な指導者の自殺もあり、残念な事件(?)でした。


 

サルコペニア

サルコペニアを御存知でしょうか?
聞き慣れない言葉かもしれません。
加齢に伴って筋肉量や筋力が著しく減り、転倒から寝たきりに至る危険が高い状態のことです。

サルコペニアは、ギリシャ語のsarx(筋肉)、penia(喪失)を合わせた言葉です。
同じような意味を示す言葉にフレイル、とロコモティブ症候群があります。
フレイルは以前紹介しましたが、「(年齢に伴って)筋力や心身の活力が低下した状態」のことです。
健常者から要介護に至る前の段階といえます。
もうひとつ、ロコモティブ症候群とは運動器の障害による移動機能の低下した状態です。腰痛、膝関節痛などによる移動機能低下も含まれます。
サルコペニアは筋肉の委縮に着目した概念で、フレイルとロコモティブ症候群の大きな原因となります。

サルコペニアの定義は、〈1〉筋肉量の減少〈2〉筋力の低下〈3〉身体能力の低下 ― のうち、
〈1〉と、〈2〉か〈3〉のどちらかがある状態です。

サルコペニアの診断基準

アジア人の診断基準が出されています。
AWGS基準値
最大握力 男性 26kg未満、女性18kg未満
歩行速度 0.8m/s未満
筋量(補正四肢筋量)
生体電気インピーダンス法(BIA法) 男性7.0kg/m 2未満、女性5.7kg/m2未満
二重エネルギーX線吸収度法(DXA法) 男性7.0kg/m 2未満、女性5.4kg/m2未満
診断のアルゴリズムによって診断します。

このうち、握力は簡単に調べることができます。ペットボトルのキャップが開けられなくなったら要注意、と言われています。

歩行速度0.8m/秒は、48m/分、時速に換算すると2.88km/hrです。まあゆっくりですね。
青信号のうちに横断歩道を渡れるかどうか?渡れなくなったら、歩行速度低下の危険性があります。
これは、5mほど歩いてもらって調べましょうか。
6.25秒以内に歩けないと、歩行速度低下ということですね。
筋肉量検査はまだ一般的ではありません。
市販の組成計でも筋肉量は出ます。しかし、この診断基準で採用されている補正四肢筋量はちょっと違います。
筋肉量低下が簡単にわかる方法として、指輪っかテストがあります。
これは、両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの一番太いところを輪で囲みます。
輪のほうがふくらはぎよりも大きければサルコペニアを疑うというテストです。


ふくらはぎの周囲のサイズと握力、性別の3項目を組み合わせ、計算式を使う診断方法も考案されています。
合計値が一定以下ならサルコペニアと判断できるといいます。
今後、サルコペニア診断にはこんな方法や市販の体組成計でもわかるような基準になっていくものと思います。

また、痩せ細ったサルコペニアだけではなく、サルコペニア肥満という状態もあります。
筋肉量が落ちて、脂肪が増えた状態です。
単なる肥満より、生活習慣病になる確率は13倍にもなり、特に糖尿病と、高血圧になりやすいとの報告がありますので注意が必要です。
新しい研究段階なので、未だ公的に認められた数値はありませんが、下記の数値を提起しています。

二つの条件に当てはまれば、サルコペニア肥満と判定されます。

筋肉率とは、体重に占める筋肉の割合のことです。
これは市販の体組成計でもある程度は推測できます。

サルコペニア肥満は、筋肉が衰えたところに脂肪が蓄積するために、体重があまり変わらず、気がつきにくいので、30代、40代の方でも要注意です。
基本的に、運動不足で食べ過ぎの人は、何歳でもサルコペニア肥満になる可能性があります。

 では、サルコペニアに当たる人は、どうしたらよいのか?
改善のため、たんぱく質をしっかり取り、適度に運動する必要があります。
軟骨などと違い筋肉は年を取っても鍛えられます。

中高年になると、生活習慣病予防のために肥満を気にする人が増えますが、75歳以上になると、むしろ低栄養状態が問題になるケースが多いです。
もちろん食べ過ぎはよくありませんが、肉や魚、卵、乳製品など、たんぱく質を多く含む食品を毎日食べた方がいいようです。

運動ですが、開始にあたり、まず体の痛みがある部分があるかどうかを確認します。
特に膝関節と腰椎のチェックは重要です。
運動ができると診断されれば、運動指導となります。
運動の前後にケガを防ぐためのストレッチをするのは忘れてはいけません。
サルコペニア外来のある病院では、4種類の運動を繰り返しているそうです。

まずは、椅子に座ったままおもりをすねで押し上げる「レッグエクステンション」。
太ももの大腿四頭筋と呼ぶ筋肉を鍛えられる。膝の悪い人に勧められる運動でもあります。

次は、両手で取っ手を後ろへ引っ張る「ローイング」。
背筋を鍛える効果がある。

このほか、尻の大殿筋などを鍛える「レッグプレス」や大胸筋を鍛える「チェストプレス」を実践しているとのこと。

いずれも10回で1セット。合計で3セットが基本です。
所要時間は約40分で、大きな筋肉を優先して鍛え、全身の筋肉量を増やすことを目指しています。
これはスポーツジムでできます。
家でできるサルコペニア予防運動では、スクワット、もも上げ、爪先立ちがあります。
スクワットは筋肉の多い下半身を効果的に刺激できますので、サルコペニア予防にはもっとも適切な運動です。
高齢者は椅子を使ったスクワットなどを勧められます。

これらは筋トレで、レジスタント運動ですが、やはり外を歩くなどの有酸素運動もお勧めです。

サルコペニアを知って、予防することにより、筋肉量を増やし転倒を防ぐことができます。
寝たきり予防にもなり、生活の質の維持につながります。

皆様も有酸素運動だけでなく、筋トレも適宜行うようにしてみてください。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

インフルエンザ予防接種実施中です!

忠岡町在住の65歳以上の方は、
平成27年10月1日から平成28年1月31日まで1回1,000円で接種可能です。

一般の方は、
1回目3,000円
2回目2,500円(当医院で1回目接種された方のみ)

ご希望の方は、受付までお電話で予約をお願いします。