2016年 1月 No.122

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

新しい年になりました。
皆様健やかに良い年をお迎えのことと思います。
本年もよろしくお願いします。

今年は暖冬と言われていました。正月なども随分と暖かく、過ごしやすかったです。
しかし、1月の中旬以降かなり寒い日が続きました。これを書いているのが24日ですが、最大の寒波が訪れています。
関東方面では雪で交通が乱れているとのこと。
奄美大島でも115年ぶりに降雪があった・沖縄でも雪が降ったとのニュースがありました。
暖冬の影響で、季節性インフルエンザの全国的な流行が遅れていました。
例年12月には流行入りが発表されますが、今年は9年ぶりに年を越しても発表されず、厚生労働省が1月7日に公表した最新の患者数も流行入りの目安に達していませんでした。
ただ過去には流行が遅れてもその後急増したシーズンもあります。寒さの到来とともに、インフルエンザの流行が始まったようです。
忠岡中学校で学級閉鎖の報告もありました。皆様、手洗い、うがいを励行してください。
忠岡町在住の65歳以上の方のインフルエンザの予防接種は1月30日までです。
自費での予防接種はワクチンがある間は続けます。

そのインフルエンザの診断方法です。
迅速キットが有効で、陽性に出ればインフルエンザ確定なのですが。
悩ましいのは、インフルエンザが疑われるけど、迅速検査で陽性に出なかった、という人。
発症早期での検査では陰性にでることがあります。
医師の判断で迅速検査で陰性であっても、インフルエンザと診断はできることになっています。
今までは臨床経過だけをみていましたが、咽頭の所見でインフルエンザと診断できる、という報告があります。
咽頭後壁のリンパ濾胞を確認できれば、インフルエンザと。
確かにそういう目で見てみますと、インフルエンザ陽性の方の咽頭の後壁に「イクラ」のような2㎜ほどの大きさの透明感のあるブツブツが散在しています。
このような所見、昔からあったなと思い返しています。
これからは、インフルエンザの検査は重視しますが、陰性であったら、臨床経過と咽頭後壁の濾胞でインフルエンザと診断していこうと思っています。
開業したての頃はしんどくて座っていられないほどの人はインフルエンザ、と教えられていました。
抗インフルエンザウィルス薬、迅速キットが出てからはインフルエンザ診療が一変しました。これはインフルエンザではないだろうと思っていた方に迅速検査をしてみるとインフルエンザだった、という例が予想外に多くありました。
これからは咽頭の所見も重視します。
咽頭の所見を写真にして残そうかな、と考えているところです。

今回、がんセンターなどから、各種がんの10年生存率の発表がありました。
全部位全臨床病期の10年相対生存率は58.2%でした(同じデータベースの5年相対生存率は63.1%)10年生存率算出結果を列挙します。

  1. 甲状腺(90.9%)
  2. 前立腺(84.4%)
  3. 子宮体(83.1%)
  4. 乳(80.4%)
  5. 子宮頸(73.6%)
  6. 大腸(69.8%)
  7. 胃(69.0%)
  8. 腎(62.8%)
  9. 卵巣(51.7%)
  10. 肺(33.2%)
  11. 食道(29.7%)
  12. 胆のう胆道(19.7%)
  13. 肝(15.3%)
  14. 膵(4.9%)

50%を切ると、やや悪い感じがしますね。
一番予後のいいのが、甲状腺がん。一番悪いのが膵がん。納得できます。

スギ花粉症の舌下免疫治療薬(SLIT)が2014年10月に発売され,ダニをアレルゲンとするアレルギー性鼻炎に対しても昨年(2015年)冬に販売が開始されています。
SLITは,海外では既に複数が実用化されていますが,国内では新規の治療法であり、長期寛解や治癒を導くことができると期待されています。
舌下免疫療法の効果を検討した発表がありました。
舌下免疫療法では1年目から効果を実感している患者が約8割とのことです。
さらに連日の舌下投与の負担については「それほど負担ではなかった」(54%)が最も多く、「全く負担ではなかった」(33%)と続きます。
来年も続けたいかとの質問に対しては,99%が「継続したい」と答えており、「継続しない」は0%であった。
舌下投与を毎日行うことができたかについては、「毎日できた」(84%)が最も多く、次いで「週1回くらい忘れた」(14%)でした。
かなり期待できるデータかと思います。
当院でも舌下免疫療法は導入できますので、スギ花粉に悩まれている方は相談ください。

2月27日土曜日、研究会出席のため、休診します。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

院内報、次号は2月15日に発行します。

骨粗鬆症

骨粗鬆症とは骨量が減少し、骨組織の微小構造が変化し、骨がもろくなり骨折をおこしやすくなった状態です。
2013年にこの院内報でも取り上げましたが、予防と治療のガイドライン2015年版がでたので、新たな情報として、提供します。
骨粗鬆症は現在、人口の高速な高齢化に伴い、年々増加しており、その数は現時点で1300万人と推定されています。女性の方が多いです。
骨粗鬆症の方で、治療を受けている患者は17%前後、83%前後が受診していないか、他の疾患で受診していても骨粗鬆症と診断されていない、と推定されています。

骨粗鬆症では、椎体、前腕骨、大腿骨の骨折が起こりやすく、その対策が医療のみならず、社会的にも重要な課題となっています。
桃井かおりさんを起用した、いつのまにか骨折、というCMがありました。
骨粗鬆症による骨折はい つのまにか骨折が多いといわれています。いつのまにか骨折というのはいいネーミングですね。
外傷などでボキッと折れるだけが骨折ではありません。
本人が気付かないうちに骨折しているのは、脆弱性[ぜいじゃくせい]骨折といって、骨の強度が低下し、本人が気付かないうちに骨がつぶれてしまう骨折です。
つまり、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折のことです。
軽微な外力とは立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力をさします。
骨粗しょう症ではこういう脆弱性骨折の方が多くなっています。
加齢とともに急増してくるのが背骨の骨がつぶれる椎体骨折。
つぶれたときに痛みで気付く人もいますが、気付かないまま、背中が丸くなってしまう人も多いようです。
さらに80代になると転倒による大腿骨上部の股関節に近い部分の骨折が増えます。
人工関節の手術が必要になることが多く、この骨折後、20%前後が「寝たきり」になるといわれています
早くこの骨粗鬆症の状態になっていないかを判定し、予防に努める必要があります。

診断
骨密度が若い人と比べて、70%未満を骨粗鬆症、70%以上-80%未満を骨量低下と診断、80%以上が正常です。
病院でのDXA法(レントゲン)による腰椎・大腿骨の骨密度で判断します。
骨密度が70%未満の場合、(腰椎、大腿骨の測定値のうち低い方で判定)、腰椎の圧迫骨折がある場合、骨粗鬆症と診断して、治療を開始します。骨密度70%以上-80%未満の場合、FRAXというWHOの骨折リスク評価ツールを使って、10年間の主要骨粗鬆症性骨折確率15%以上と判定されたら、治療を開始します。
FRAXはネット上で判定できるURLがありますので、診察室で判定します。

予防&治療
原因としてはカルシウムの摂取不足やカルシウム吸収力の低下(摂取したカルシウムを腸管から体内に取り込めない方)、女性ホルモンの減少(閉経後のホルモン分泌低下のよるもの、婦人科疾患によるホルモン分泌異常)および遺伝的因子などが考えられます。
女性ホルモンは骨吸収にかかわる破骨細胞の抑制をします。
閉経後女性ホルモンが少なくなると、その抑制が取れ、破骨細胞が骨を溶かす作用が強くなってしまいます。

予防は食事と運動、日光にあたること、です。
食事はカルシウム、ビタミンD、ビタミンK
主な食材としては、
カルシウムの多い食材は桜エビ、プロセスチーズ、しらす干し、大根の葉、ほっけ、わかさぎ など

ビタミンD
いわし、いくら、鮭、ひらめ、さんま など

ビタミンK
ひきわり納豆、パセリ、しそ、しゅんぎく、バジル など

運動はウォーキング、ジョギング、エアロビクスなどといった体重をかける運動が骨密度増加の為に有効です。

治療方針
骨粗しょう症と診断された場合には薬が治療の中心となります。
骨粗しょう症の治療薬は、作用によって次の3種類に分けられます。

腸管からのカルシウムの吸収を促進し、体内のカルシウム量を増やす・骨吸収と骨形成のバランスをとる薬=活性型ビタミンD3製剤
骨の形成を促進する薬=活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
骨吸収を抑制する薬=女性ホルモン製剤(エストロゲン)、ビスフォスフォネート製剤、
SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)、カルシトニン製剤
RANKLに対する抗体であるデノスマブ(プラリア)
治療開始前にに骨代謝マーカーを測ります。
いくつか種類がありますが、当院では骨形成マーカーとしてtotal PINPを、骨吸収マーカーとしてTRACP-5b、を採用しています。
骨形成マーカーと骨吸収マーカーの測定により、骨の密度が低くなっている理由が主に骨吸収の亢進によるのか、骨形成の低下によるものかを推定します。
以上の検査をした上で、治療薬を考慮します。

一般的に下記の方針で薬を考えています。
椎体骨折のない閉経後骨粗鬆症(65歳以下)
椎体骨折の予防が治療の主目的となり、長期投与に有利なSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)が選択され、活性型ビタミンD製剤を併用します。

65歳以上や椎体骨折のある閉経後骨粗鬆症、大腿骨近位部骨折例
椎体骨折や大腿骨近位部骨折のリスクが高く、SERMよりも骨吸収抑制効果が強いビスホスホネート製剤が選択されます。
高齢者や多発性椎体骨折例には活性型ビタミンD製剤を併用します。

骨密度で大腿骨の骨折の危険性が高いと思われるときは、ビスフォス製剤の中のアレンドロネート、リセドロネート、デノスマブ(プラリア)を選択します。
イバンドロネート(ボンビバ)も抑制効果はあるという報告はありますが、まだきっちりとしたデータはないようです。

ビスホスホネート製剤が使用できない場合や、毎月注射に来院できない場合には、プラリア 注(60mg/シリンジ) 1回1シリンジ 6か月に1回 皮下注

多発性椎体骨折や高度の椎体圧潰を有する骨粗鬆症
強力な椎体骨折抑制効果のあるテリパラチドが適応となります。
当院ではテリボン 注(56。5μg/バイアル) 1回1バイアル 週1回 皮下注
72週までの投与制限あり、投与終了後はプラリア の投与を考えます。

痛みのある場合、カルシトニン製剤を使用します。

薬物治療をいつまで行うのか?治療により骨密度が増加した場合、薬物中止が可能なのか?のはっきりした答えはでていません。
中止した場合、急に骨密度が低下することがあるので、慎重な経過観察が必要とされています。

まとめになりますが、当院での治療方針です。
まず、踵の超音波検査でスクリーニング。
これは当院でしています。
骨粗鬆症検診で役場などでも行われます。
この検査で骨量低下が疑われた方は、腰椎のレントゲン検査・病院での腰椎・大腿骨の骨密度検査を受けていただきます。
腰椎・大腿骨で骨量低下(若い人に比べて70%以上80%未満)と診断されたら、FRAXを使って治療を開始するかどうか検討します。
腰椎レントゲンでいつの間にか骨折がある、若い人に比べて骨密度が70%未満であれば、治療開始します。
どの薬を使うかは、血液検査、年齢、骨密度の結果を参照して決定します。
治療開始後は6か月程度で病院の骨密度検査・血液検査を受けていただきます。
治療継続・変更・中止はその結果をみて考えます。
骨粗鬆症と診断されたら、骨折予防のため長期の治療・経過観察が必要となります。
いずれの場合にも食事療法、運動は必要です。
骨折のあった人以外は自覚症状が無いことが多いので、治療継続に懐疑的になるかたもおられますが、脆弱性骨折予防のため、健康寿命を延ばすためにも骨粗鬆症による骨折は予防しましょう。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

インフルエンザ予防接種

インフルエンザ予防接種を行っています。
1回目は3000円
2回目は2500円、

インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。

その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないこと、です。
ワクチン接種により死亡者や重症者を減らすことが期待されています。
ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。