2016年 2月 No.123

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

2月になりました。
今年の冬は暖冬、と言われていましたが、暖かい日があるかと思えば極寒の日があったりして、ジェットコースターのよう、とたとえられています。
1月中旬くらいから寒い日が多くなってきました。
暦の上では節分の翌日の立春以降は春とのことです。
寒暖の差が激しいので、体調管理にはご留意ください。
今年1月初旬にはほとんど見なかったのですが、現在インフルエンザが猛威をふるっており、岸和田の休日診療所ではインフルエンザの方でごった返しているそうです。
学級閉鎖の報告も連日でています。
ご注意を。何より手洗い。次にマスク、うがいです。
インフルエンザ予防接種は高齢者・忠岡町公費は終了してますが、自費では3月くらいまで受け付けています。
一回目2500円、2回目2000円です。

ジカ熱

ジカ熱という聞き慣れない感染症が中南米で流行しています。
ジカウイルス感染症はこれまでに日本国内で3例しか診断されたことのない感染症ですが、今世界で注目を集めている感染症です。
ブラジル国内で昨年5月の感染から半年足らずで130万人以上が感染したそうです。
2015年11月、ブラジルの保健省が「ジカウイルス感染症のせいで小頭症が増えているかもしれない」という驚愕の発表をしました。
ブラジルで生まれてくる子どものうち、小頭症の子どもが例年の8倍も増えているといいます。
世界保健機関(WHO)も事態を重く見て2月1日に緊急事態宣言をしました。
世界に広まりそうだから何とかしないと、ということですね。
この小頭症患者の増加を受けて、ついにブラジル保健省は「ジカウイルス感染症の流行地域の女性は妊娠を控えてほしい」という声明を発表するに至ります。
まさに異常事態宣言です。
ジカ熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介します。ヒトスジシマカはあのデング熱を流行らせた蚊です。
日本に旅行に来た感染者が蚊に刺されて一気に広がるかもしれないことが危惧されます。
高熱をだす人は珍しく、ほとんどの人が発疹や関節痛、結膜炎などの症状が出て1週間ほどで自然に治るそうです。
次に多いのが、筋肉痛と頭痛、稀にでるのが下痢や腹痛、嘔吐、食欲不振の症状です。

潜伏期間は3~10日間で発症して症状が現われます。症状は軽い場合が多く命の危険もほぼないそうです。
結局は特徴的な症状は無く、一般診療所で診断するのは不可能と思います。
中南米から帰国してきた人が発熱、発疹などの症状があれば、保健所で検査して頂くことになるのだろうな、と思っています。
今のところジカ熱のワクチンや治療薬は開発されていないので、治療は、症状を和らげる対症療法になります。
ブラジルに行く予定がある人は、長袖長ズボンで虫除けスプレーやクリームを携帯しましょう。
ブラジルでは、虫除けスプレーなどがあり得ないほど高騰してるそうです。

流行性耳下腺炎

日本では、流行性耳下腺炎が流行している、とのニュースがありました。
ムンプスウイルスは感染力が比較的強いです。
抗体のない大人も感染し、思春期以降で感染すると、睾丸(こうがん)炎や卵巣炎になる可能性もあります。
ムンプスウィルスは腺組織が好きなようで。

大人も自分がおたふくかぜの抗体があるかどうか調べて、無ければワクチンを打つ、という対処法もいいかもしれません。
ちなみに、流行性耳下腺炎の抗体検査は自費になりますが、当院でもできます。
費用は4320円です。
気になる方は受付にお問い合わせください。

2月27日土曜日、3月26日土曜日、勉強会参加のため、休診します。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。


睡眠薬

夜眠れない、不眠症は罹患頻度の高い代表的な睡眠障害の1つです。
不眠症は定義上は『眠るための時間が充分にあるにも関わらず、満足のいく睡眠を得られない状態』のことです。
毎日忙しくて睡眠時間が確保できない!というのは不眠症ではありません。
具体的には、不眠症は次の4種類に分けられます。

    1. 寝つきが悪くて、眠る時刻になっても入眠できない(入眠障害 )
    2. 眠っている間にひんぱんに目が覚めてしまう(中途覚醒)
    3. 朝早くに目が覚めて、そのあと再入眠できない(早朝覚醒)
    4. 充分な時間寝たはずなのに、熟睡した感じがしない(熟眠障害)

上記のような不眠の症状が、ある程度の期間と頻度で生じる場合に、不眠症と判断されることになります。
(目安は、週に2~3回以上が1カ月以上)

不眠症は、そのタイプによって原因が異なる場合が少なくありません 。
また、いろいろな要因が複雑に絡みあっていることもあります。
さらに、異なるタイプの不眠症が同時に発生したりもします(入眠障害+早朝覚醒など)
不眠症という言葉は簡単でも、その中身は人によってだいぶ開きがあります。
個人差があるということです。
成人の30%以上が入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難などいずれかの不眠症状を有し、6~10%が不眠症に罹患していると考えられています。

不眠(特に慢性不眠)は、眠気、倦怠、集中困難、精神運動機能低下、抑うつや不安など多様な精神・身体症状を伴うことが多いとされています。
その結果、不眠症は、長期欠勤や医療費の増加、生産性の低下、産業事故・交通事故の増加など、さまざまな人的及び社会経済的損失をもたらすことが明らかとなっています。
また、睡眠不足が長期に続くと、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの疾患を発症しやすくなったり、認知症をの発症に影響するという報告もあります。

不眠症を改善するためには、生活を朝型に切り替えることが有効です。
体内時計を調整する、ということです。
具体的には起きる時間を決める、起きたら太陽の光を浴びる、早く寝る、休日も寝だめをしないように習慣づけることが大事です。
昼間眠くなったら15分程度の短い昼寝をするのがよいでしょう。
このように、不眠症の治療ではまず眠りにくい生活環境を改善し、睡眠習慣の指導を行います。
それでも治らない場合は必要に応じて睡眠薬が使われます。
厚生労働省研究班の調査によれば、睡眠薬の処方率は近年一貫して増加を続け、2009年の日本の一般成人における3か月処方率(少なくとも3ヶ月に1回処方を受ける成人の割合)は4.8%に至っています。
すなわち、睡眠薬は日本の成人の20人に一人服用している汎用薬と言えます。
現在、大きく分けて4種類の薬が使われています。
古くから使われてきたのはベンゾジアゼピン系です。
しかし、この系統の薬は副作用が出やすく、やめにくい、という問題点がありました。
それも踏まえて、厚生労働省科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループが、睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン ~出口を見据えた不眠医療マニュアル~ が2013年6月に発行され、現在それに沿って睡眠薬の処方を行っています。
不眠症治療薬剤ですが、上記ベンゾジアゼピン系の問題点を改善した薬がでています。
非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬です。
順に説明します。

種類 特徴 主な薬剤名
ベンゾジアゼピン系 副作用が出やすい・
やめにくい
・古くからある
・脳の神経活動を抑える
・不安・筋肉の緊張にも効く
・高齢者は要注意
ハルシオン
レンドルミン
ベンザリン
リスミー など
非ベンゾジアゼピン系 副作用が出にくい・
やめやすい
・脳の神経活動を抑える
・不眠改善作用に特化
・作用時間は短め
マイスリー
アモバン
ルネスタ
メラトニン受容体作動薬 ・睡眠のタイミングを調整
・夜型や睡眠時間のずれが
治らない人に
・持続時間:短い
ロゼレム
オレキシン受容体拮抗薬 ・覚醒のスイッチを切る
・最も新しい薬
・持続時間長め
ベルソムラ

まず、古くからあるベンゾジアゼピン系ですが、脳の神経活動を全般的に抑えることで眠りやすくする薬です。
超短時間型、短時間型、中時間型、長時間型に分類され、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難などの病態に応じて処方してきました。
不安を和らげる、筋肉の緊張を解く、肩こりを緩和するなどの効果がありますが、反面ふらつきが出て転倒を起こしやすいなどの副作用があります。
翌日に起こる副作用として、健忘(薬をのんでから眠るまでの行動が思い出せない)、眠気の持越し、作業能率の低下などがあります。作用時間の長い薬に多くみられます。

非ベンゾジアゼピン系:ベンゾジアゼピン系と同様に脳の神経活動を抑える薬です。
不眠の改善作用に特化した薬のため、筋肉を緩めるような作用は少ないので、ふらつきは転倒の危険性は緩和されています。
作用の時間は短めです。現在不眠の方に主に最初に使用されるのはこの系統の薬で、マイスリー(ゾルピデム)、アモバン(ゾピクロン)、ルネスタ(エスゾピクロン)があります。

メラトニン受容体作動薬:メラトニンはもともと体内にあるホルモンで、睡眠のタイミングを決める体内時計の調整作用があります。
この薬はそれと同じような作用があり、夜型や睡眠時間のずれが治らない場合には効果が期待されています。作用の時間は短時間です。薬剤名はロゼレムです。

オレキシン受容体拮抗薬:オレキシンはもともと脳の中にあるホルモンで、目覚めを促す作用を持っています。
この薬によって、夜間のオレキシンの作用を遮断し、眠れるという効果があります。
世界に先駆けて日本で2014年から使われ始めた最も新しい睡眠薬です。
先のガイドラインにはまだ掲載されていませんでした。
持続時間は少し長めで、高齢者で朝の目覚めが早すぎる場合には効果が期待できます。薬剤名はベルソムラです。

薬剤の使い方:軽症の不眠症では、翌日に備えてよく眠りたいときにのみ、睡眠薬を使用する場合もあります。
しかし、一週間に3,4日も眠れない日があるのでしたら、薬剤を毎日のんで、不眠を改善して(よい睡眠習慣をつけるようにして)睡眠薬を減らすのが薬離れの近道といわれています。

薬を飲んでも眠れないとき、追加をするのはあまり勧められませんが、起きるまでの時間が6時間以上あるのでしたら、半分くらいの追加はいいかもしれません。
あまり明け方に飲んでしまうと、眠気の持越しがおきます。
薬を飲むタイミングは寝る直前が勧められます。

眠れないときアルコールを飲むのは、寝つきはよくなりますが、反動で明け方に眠りが浅くなります。
また、同じ量では徐々に効かなくなり、酒量を増やしてますます眠りが浅くなるという悪循環が起きるので、眠るための飲酒は勧められません。
晩酌も寝る4時間前までには飲み終えるようにします。

睡眠薬が効かない場合、量を増やすか、別の薬を使用します。
他の原因が潜んでいないか調べる必要もあります。
痛みやかゆみ、頻尿、うつ病や睡眠時無呼吸症候群などの場合は、それぞれの疾患の治療を行ったうえで不眠に対処します。
また、持病の薬の副作用が原因の場合もありますので、服用薬の見直しが必要となる場合もあります。
睡眠薬の常用量を超えた増量、多剤併用はあまり勧められていません。

睡眠薬の減薬や休薬
不眠症はきちんと眠ったという体験を積み重ねて、安心感が増すことで改善されていきます。
睡眠薬はそのための一助として使用され、決して一生飲み続けるものではありません。ガイドラインでも、きちんと睡眠薬を使って、減薬を心がけると明示されています。
ある調査では、睡眠薬を使用している人の約4割が自分の判断で薬を中止して、失敗したという結果がみられました。
減薬・休薬できる条件は、睡眠の習慣がついて、不眠の症状がある程度改善していることです。
日中の眠気や倦怠感、うつ気分などの不調が改善され、夜・昼ともにある程度の満足感が得られた場合に、減薬・休薬を考えます。
急にやめると、不眠の再発、動悸、吐き気などの禁断症状が出る場合があるので、徐々に減らしていくのが原則です。
また、糖尿や高血圧、心臓病、てんかんなどがある場合は睡眠薬を使用している場合、無理にやめる必要はないと言われています。
睡眠薬をのんで、不眠をコントロールするほうが、持病のコントロールも容易になり、日中の生活の質も改善することが期待されます。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

先月の院内報で、今回は2月15日に発行します、と書きましたが、院内報を書こう、と気が付いたのが2月16日でした。

締切りを自分でつくっていても忘れる、というのはちょっと問題ですね。