2018年 2月 No.147

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

2月ももう終わりになります。
この間新しい年が始まったところだと思っていましたが、もう2ヶ月過ぎました。
1月行く、2月逃げる、3月去る という表現があります。
1月は正月があり、2月は元々28日で普通の月より短く、3月は年度末なのですることが多い。
こうしたことから、1・2・3月は日が早く過ぎると昔の人も思っていたのでしょう。
本当に日がたつのが早く感じます。
今年の冬は例年に比べ、寒波の回数が多く、寒い日が多かったようです。
関東での大雪のニュースも連日報道されていました。
猛威をふるっているインフルエンザですが、2月末になって、少し峠を越えたと報道されていました。
まだ、ちらほらとインフルエンザの方がおられます。
油断大敵。学級閉鎖の報告もみられます。
うがい、手洗い、マスクの着用、できれば人込みの中に行かないなど注意して、感染しないようにしてください。
今シーズンは間に合いませんが、5月に一回だけ服用する抗インフルエンザ薬、ゾフルーザが発売されます。
効果も従来薬より期待できそうで、来シーズンは使えるようになると思います。

花粉が飛び始めています。
花粉症の方は花粉のブロックを。
鼻水、目のかゆみなど症状があるようでしたら、受診してください。

これを書いているのが2月25日です。
平昌冬季五輪も閉会式を迎えようとしています。
フィギュアスケート男子の羽生・宇野選手の金銀、女子カーリング(そだねー、もぐもぐタイムは流行語大賞候補だそうです)、スピードスケートの小平選手、高木姉妹などの活躍で、冬季オリンピック史上最多のメダル数だそうです。
小平選手をサポートしたのが、長野県の病院でした。
名前を見ると相澤病院。新しい創傷治療の夏井先生、褥創のラップ療法の鳥谷部先生がおられた病院でした。
15年前、お二人は相澤病院に所属していました。
とても斬新なアイデアが同じ病院から出され、すごく自由な雰囲気の病院なんだろうな、と思っていました。
羽生・宇野選手のフリーの演技は、土曜日の午後高速道路運転中にカーナビ画面で流していました。
運転中なので、じっくり見ることができず、ハラハラしながら、チラチラと見ていました。
金銀メダルが決定したときはホッとしました。
再放送はゆったりと見ました。

 血液でアルツハイマー判別 

認知症で最も多いアルツハイマー病の原因物質の脳内への蓄積を、わずかな血液で調べることができる検査法を開発したと、国立長寿医療研究センターと島津製作所の研究チームが発表しました。
調べるのは「アミロイドベータ(Aβ)」というたんぱく質で、発症の20年ほど前から脳に徐々に蓄積するとされます。 
Aβの検査は現在、十数万~数十万円かかる特殊な脳画像検査や、背骨の間に針を入れて脳脊髄液を採取する検査法が用いられています。
費用や体への負担が大きく、大規模な研究が出来ませんでした。
Aβは血中にわずかな量しか含まれておらず、血液検査で調べるのは困難でした。
研究チームは、Aβの蓄積によって変動する複数の関連物質の比率から脳内の蓄積の度合いを推定する技術を開発し、わずか0.5ccの血液で測定できる方法を確立しました。
島津製作所の研究チームのリーダーは2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さん。
相変わらずいい研究をされています。
アルツハイマー型認知症の治療につながる研究になればいいですね。

 iPS関連 

今回は、先天性難聴に対する治療と角膜移植の話題が出ていました。
難聴は熊本大学と慶応大学の研究チーム。
出生時約1000人に1人は、内耳の音の認知に関わる蛋白質・コネキシシン30が遺伝子変異でうまく作られず、難聴で生まれます。
iPS細胞を注射することによりコネキシン30が作られるようになりました。
以前、順天堂大学もコネキシン26・内耳ギャップ結合形成細胞をiPS細胞から作成する研究をしておられました。合わせて遺伝性難聴の治療に向けて進んでいっていただきたいです。
角膜のほうは、大阪大学眼科学教室が発表されました。
iPS細胞から作成した目の角膜の細胞シートを、角膜が傷ついた患者に移植する臨床研究を、今年6~7月に学内の審査委員会に申請する予定。
具体的には「スティーブンス・ジョンソン症候群」など角膜上皮が損傷する病気が対象となります。
網膜に続いて角膜も。iPS細胞のポテンシャルに期待です。

皮膚外用薬について

日今回は外用剤についての情報提供です。
外用剤とは、皮膚に塗布する、いわゆる塗り薬です。

塗り薬は効果のもとになる主成分、ベースとなる成分(基剤)が混合されてできています。
みかんゼリーに例えると、主成分はみかん、基剤は寒天です。
基剤・主成分による分類をお示しします。

 Ⅰ・基剤の種類による皮膚外用薬の分類 

 1.軟膏 

透明-半透明で、粘稠半固形状の油脂性の外用薬です。
外用薬として最もよく用いられています。
油脂性のワセリンが主に使用されます。
皮膚亀裂部、痂皮、びらん、紅斑、丘疹、潰瘍などほとんどの皮膚疾患に使用出来ます。
刺激は少ないのですが、べとつき感があります。

 2.クリーム 

白色乳脂状の半固形物質で、水と油を混ぜて乳化した基剤です。
クリームは軟膏に比較してべとつき感が少なく、塗りごこちがよく、水で洗い落としやすいです。
時に刺激感を伴いますので、傷がある部位や、湿潤部(ジュクジュクしたところ)には適していません。

 3・ローション 

液体の中に粉末を懸濁させたものと乳化剤を用いて水中油型としたもの、水・アルコールを基剤とする。

 4.テープ剤 

主成分と粘着剤を混ぜ、テープに延ばしたもの。

 5.粉末剤 

吸湿して乾燥させ皮膚表面をなめらかにする、亜鉛華、タルク(主として珪酸マグネシウム)、デンプンなどが主なものである。

 6.泥膏 

油脂に微粒子の粉末を練り合わせたもの。

 7.糊膏 

主成分にアラビアゴムなどを混ぜる・カチリ。

 8.硬膏 

薬剤と粘着剤を混ぜ、布地に延ばしたもの・スピール膏。

 9.ゲル剤 

水、アルコール、プロピレングリコールなどでゲル化したものなどがあります。

 Ⅱ主成分の種類による皮膚外用薬の分類 

列挙しますと、

  1. 副腎皮質ステロイド外用薬
  2. ステロイド以外の抗炎症外用薬(アズノール、オイラックス等の抗ヒスタミン外用薬)
  3. 免疫調整外用薬(アトピーに使用・刺激感強い)
  4. 活性型ビタミンD3外用薬(ドボネックス・乾癬に使用)
  5. 活性型ビタミンD3・副腎皮質ステロイド配合薬(ドボペット・乾癬に使用)
  6. レチノイド類似化合物外用薬(ディフェリンゲル・座瘡)
  7. 過酸化ベンゾイル外用薬およびその配合薬(ベピオ)
  8. 抗菌薬(ダラシン、ゲンタシン・ニキビ、黄色ブドウ球菌用)
  9. 抗真菌薬(マイコスポール・水虫)
  10. 抗ウィルス薬(ゾビラックス、アラセナ・ヘルペス)
  11. 駆虫薬(スミスリン・シラミ、疥癬)
  12. 皮膚軟化剤(スピール膏)
  13. 褥瘡・皮膚潰瘍治療薬(イソジンゲル、フィブラストスプレー)
  14. 抗悪性腫瘍外用薬(ブレオマイシン)
  15. 光線療法外用薬(メトキサレン)
  16. 毛髪用薬(フロジン)
  17. 保湿剤

などがあります。
今回は、副腎皮質ステロイド外用薬について解説します。

1.副腎皮質ステロイド外用薬

副腎皮質ステロイド外用薬はその強い抗炎症作用のため,炎症性皮膚疾患に広く用いられています。
薬効は血管収縮指数、吸収性、および臨床効果をあわせて評価され、ストロンゲスト、ベリーストロング、ストロング、ミディアム、ウィークの5段階に分類されています。

副腎皮質ステロイド外用薬 5段階分類

Ⅰ 群ストロンゲスト(最も強力)

デルモベート・ダイアコート

作用が強いため原則として子供には処方されない。

Ⅱ 群ベリーストロング(かなり強力)

フルメタ・アンテベート・トプシム・リンデロン-DP・マイザー・ネリゾナ

大人では体幹部、子供では腕や足など四肢に処方されることが多い。

Ⅲ群ストロング(強力)

ボアラ・メサデルム・ベトネベート・リンデロンV・フルコート・リドメックス

大人への処方は全身~体幹部限定、子供の場合は顔や陰部を除く体幹部。

Ⅳ 群 ミディアム(中程度)

アルメタ・キンダベート・ロコイド・レダコート

大人・子供ともに、顔を含めた全身に処方される。

Ⅴ群ウィーク(弱い)

プレドニン

薬を最も吸収しやすいお尻や陰部にも処方される。

副腎皮質ステロイド外用薬は市販薬にもあり、安易に使用されがちですが、薬効の強い製剤を長期に使用した場合、局所皮膚に対する種々の副作用をきたす可能性があります(皮膚萎縮、皮膚線条、毛細血管拡張、ニキビ、多毛など)。
さらに広範囲に長期間使用した場合、ステロイドの内服薬と同様に全身的副作用も起こりえます(糖尿、胃潰瘍、骨粗しょう症、など)。
しかし、副腎皮質ステロイド外用薬が、現時点で最も優れた抗炎症効果を有する薬剤であることは紛れもない事実なので、薬効・副作用に注意して長期間漫然と使用しないようにする必要があります。

ステロイド外用薬の使用:年齢による選択

一般に高齢者では表皮も真皮も萎縮しているのでベリーストロング以上の薬効のものは使用を控えます。
乳幼児はできるだけミディアム以下のものを選択します.

ステロイドの使用:病変部位,範囲による選択。

図のように外用剤の吸収には部位による差があります。
顔面は経皮吸収がよく、しかも局所的副作用として血管拡張、皮膚萎縮が起こりやすいため、アトピー性皮膚炎など長期間の外用が予想される患者では、できるだけミディアム以下のものを使用し、十分な改善が得られたら中止して、保湿剤を中心としたスキンケア製剤に変更します。
頸部、陰部も皮膚が薄いためやはりミディアム以下のものを選択する、これらの部位では習慣的に塗り続けないように1回の処方量は少なく抑えます。
逆に手掌、足底など角質の厚い部位では、経皮吸収が悪く局所の副作用も出にくいのでストロング以上のものを選ぶことが多いです。
頭部は毛包からの吸収がよいためストロング以下のものを主体とします。
頭部の場合、ローション、ゲル剤が使用感に優れています。
病変部が広範囲に及ぶ場合は使用量が増え、全身的副作用も増加する可能性があるので、ベリーストロング以上の外用薬の長期使用は避けます。

ステロイド使用:疾患の持続時間による選択

接触皮膚炎のように急性に経過する疾患では症状の程度により短期間ベリーストロング以上のものを使用します。
アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬など慢性に経過する疾患では使用期間が長くなるので、ベリーストロング以上のものの長期使用はできるだけ避けるようにします。

ステロイド外用剤・治療効果の判定

いずれの場合も副腎皮質ステロイド外用薬で十分な治療効果が得られたあとは、保湿剤その他スキンケア製剤に切り替えます。疾患により反応が違うので一律には判定できませんが、急性疾患では1週間以内に臨床症状の改善がみられない場合は,1ランク薬効の強い薬剤に変更します。
慢性疾患では2週間程度の観察期間をおき、改善がみられない場合は1ランク上の薬効のものに変更するか,テープ剤(ドレニゾン テープなど)に変更します。今回は外用薬について書いてみました。保湿剤や抗真菌薬、塗り薬の塗り方も書きたかったのですが、紙面の都合で、次回以降に記載します。

 

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

現在レントゲンができなくなっています。
レントゲンは撮れるので、レントゲン室のモニターでは見られるのですが、診察室に画像が転送されてこない状態です。
修理完了まで、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。