2018年4月 No.149

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

今冬が過ぎ、過ごしやすい季節になってきました。
猛威をふるっていたインフルエンザも下火になったみたいです。
まだ注意は必要ですね、手洗い、うがい、マスク、咳エチケットです。
3月に一回だけ内服するインフルエンザの薬が新発売になりましたが、一度も処方することなく、終わってしまったようです。
医療ニュースでは、結構効きがいいように記載されていたので、期待してはいたのですが。

今年は桜の開花が早く、入学式までは桜はもちませんでした。
3月後半の入学式前に、子供に制服を着せて、桜の花の下で記念写真を撮る、という画像が結構流れてました。春を感じました。

だんだん暑くなってきますので、熱中症には注意が必要になってきます。
環境省は4月20日より、熱中症の起きやすさを示す「暑さ指数」の公表をインターネットで始めました。
暑さ指数は気温や湿度、日差しの強さから算出する国際指標です。
全国約840地点について、「ほぼ安全」から「危険」の5段階で色分けして表示している。
このあたりでは堺と熊取が計測地域になっています。

「熱中症予防情報サイト」(http://www.wbgt.env.go.jp/)で9月28日まで公開される予定です。

また、虫の季節もやってきます。
昨年は虫除けスプレーでかなり効果がありました。
今年度も虫除けスプレーを使って虫刺されから逃れたいと思います。
今年度はイカリジンを配合した天使のスキンベープ虫よけスプレーを使用予定です。
ダニにも効くそうで、肌にやさしく子供にも使いやすいとのこと。また使用経験はお知らせします。

 iPS細胞 

iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心臓の筋肉(心筋)の細胞を作って移植し、重い心臓病を治療する臨床研究の計画を、慶応大チームが進めています。

心筋細胞の小さな塊を心臓の壁に注射針で注入する手法で、学内の委員会に審査を申請ししました。
学内での審査の後、国の審査を受けます。
年内の治療開始を目指しているそうです。

対象患者は、心臓のポンプ機能が低下する拡張型心筋症の方です。
京都大が備蓄するiPS細胞を提供してもらい、心筋細胞に変化させます。
これを培養して約1000個ずつ球状の塊(直径約0.2ミリ)にし、患者の心臓の壁に注入します。
弱った心臓の筋肉を再生させ、機能の改善を図れます。

細胞を塊にするのは移植後の定着を良くするためで、1人あたり約5000万個の細胞を移植する。
心筋細胞に変化しきれない細胞が混じると、がんができる恐れもあるため、移植後、1年間かけて安全性や治療効果を観察する。

iPS細胞を使う心臓病治療は、大阪大も心筋細胞のシートを作って心臓に貼り付ける臨床研究を国に申請している。
心筋シートは開胸手術が必要ですが、慶応の治療法は心嚢内視鏡を使って直視下に注入する方法を考えているそうです。
心嚢内視鏡は、今やポピュラーになった腹部や胸部の内視鏡手術と同じような方法で、心臓を取り囲む膜の中に内視鏡を入れて、心外膜側の操作をする方法です。
慶応大学は平成23年度にこの方法を発表しています。
かなり期待できそうな方法かと思います。
期待したいです。

当院のアンケートでの評価で、声が小さい、聞き取りにくい、大きな声を出されると怒られているような気がする、というご意見がいつも出ます。
ボイストレーニングに行きたいとはおもうのですが、なかなか時間が。
今回、もしもしフォンという介護用の製品を購入しました。
まだ使っていませんが、また使用経験などご報告します。

5月26日土曜日、6月9日の土曜日はそれぞれりんくう総合医療センター、岸和田徳洲会病院の緩和ケア研修会のため、11時に診療を終了させていただきます。
また、当院のISO9001の審査が6月11日・12日に行われます。
少し外来を制限させていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

肩関節周囲炎(五十肩・凍結肩)

明らかな誘因(外傷など)が無く、50歳前後以降に発症する著しい拘縮を伴う方、肩関節痛を肩関節周囲炎(凍結肩)と呼びます。
我が国では、五十肩という名称で知られています。
五十肩は、江戸時代から使われている俗語で「ぎっくり腰」「肩凝り」などと同じような言葉です。
学術的に定義された病名ではありません。
WHOの作成した病名リスト・ICD-10には癒着性関節包炎と肩関節周囲炎が登録されています。
しかし、世界各国で一般的に使用される病名はfrozen shoulder ・凍結肩だそうです。
私は凍結肩という病名を今まで使用したことはなく、皆様にお渡しする診療手帳にも保険病名も肩関節周囲炎で統一してきました。
これからも、特別な指示が無い限り肩関節周囲炎で病名記載しようと思います。
肩関節周囲炎の好発年齢は50歳を中心とした40-60歳代です。
女性にやや多く約65%です。
発症頻度は2-5%との報告があります。
糖尿病を合併すると、13%に増加するそうです。
診断基準は、米国の整形外科学会の診断基準に準じて

  1. 明らかな誘因がない
  2. 肩関節の著しい自動・他動可動域制限
  3. 腱板断裂などの肩関節内病変がない

この3条件を満たすものを肩関節周囲炎としています。
肩関節周囲炎の明快な病因は示されていません。
胸椎や肩甲骨の運動が低下し始める50歳前後に発症することが多いため、加齢に伴う胸郭、肩甲骨運動、腱板機能障を誘因となることが考えられています。肩関節周囲炎の経過から、炎症期、拘縮期、回復期に分類されています。
肩関節周囲炎の炎症期誘発には、加齢、コンピューター業務、精神的ストレスなどにより、不良姿勢、胸椎・肋骨・鎖骨の運動制限、肩甲骨・肩関節内の機能障害、大胸筋の短縮が起こり、肩関節内の上腕骨・肩甲骨下組織の運動軸の不良が関係するのではないかと考えられています。難しいですね。
結局はまだわかっていないのです。
五十肩が起こる仕組み炎症期の経過で、肩関節内の血流が増加し、関節包の肥厚が進行し、拘縮期に以降すると考えられています。炎症期の症状は肩関節痛です。
痛みのため、関節の可動域が低下します。
安静時痛、夜間痛が目立つ場合もあります。
2-9ヶ月の炎症期を経て、拘縮期に移行します。
炎症期の状態から自然に治ったというケースも見かけますが、データによると、7年の経過観察で何らかの疼痛や可動域制限が残るの50%だそうです。
一度肩が痛んだ人は要注意ということですね。
拘縮期に移行すると、反対の脇の下を洗う(水平内転)、ブラジャーをつける(内旋)、頭の後ろを洗う(外転・外旋)、洗濯物を干す(挙上)などの動作時の動きにくさ、痛みを訴えるようになります。
多くの方は肩関節痛を生じる姿勢を自覚して、その姿勢をとらないように注意します。
無意識に何かものを取ろうとしたときなどに痛みが生じます。
そのような経過を経て、最後に、肩の動きは改善し、痛みも気にならなくなる時期がきます。
ほとんどの場合が、半年から二年くらいで自然治癒することが多いようです。
しかし、先ほども書きましたように運動制限・痛みが残る人がおられます。
診断には、年齢、利き手、手術、外傷を確認した上で、いつからどのような症状があるか、日常生活に困る動作をお聞きします。
診察では、肩関節の発赤、腫脹、熱感などをみて、押さえて痛いころはどこかを診ます。
肩関節の運動制限、前からの腕の挙上、横からの腕の挙上、後ろに手を回す、前で腕を組む動作などをしてもらい、どの程度動くのか、どこで痛みが出るのかを確認します。 
一応レントゲンは撮ります。
主な目的は骨の萎縮がないか、関節内に石灰化(カルシウムの沈着)がないかを確認するためです。
あれば、石灰沈着性腱板炎と診断され、肩関節周囲炎とは診断されません。
また頚椎が肩関節痛の原因になっていることもあるので、注意が必要です。
その他にも、「五十肩」になりやすい内科の病気として先に述べた糖尿病以外に甲状腺疾患などが挙げられます。症状が続く場合は、腱板断裂がないか、肩関節内に他の異常がないか、MRIで確認します。
一部の整形外科医は超音波を使って肩関節の診療をしています。
資料をみるとかなり有用そうですが、残念ながら私はしたことがありません。
病院の技師さんに頼むことになるのでしょうが、どの病院が対応してくれるのか、まだ調べていないの。
状腺疾患、関節リウマチは除外しておく必要があるので、これも血液検査でみます。
血液検査では、炎症反応の有無もみます。
で、今は肩関節MRI検査を主にしています。
糖尿の有無はみておく必要があると強調されていました。
また、一応甲状腺疾患、関節リウマチは除外しておく必要があるので、これも血液検査でみます。
血液検査では、炎症反応の有無もみます。

 治療 

まずは保存的治療・出血させることのない治療から始めます。
局所安静(三角巾、アームスリングなどを使用)、患部を冷やす、消炎鎮痛剤の内服、湿布、理学療法(リハビリ)、ステロイドの関節内注射などです。
ステロイドの関節内注射は、患者により劇的に効いて、再発無く経過する症例があります。でも、解析データでは、短期には疼痛軽減効果があるものの、長期的効果は不明であるという結果が出ています。
リハビリは私はいいと思うのですが、何も治療した群と比べてあまり変わりは無かったというデータがでたそうです。
なので、ガイドラインで勧めている治療はマニュピュレーション、鏡視下手術です。
マニュピュレーションは拘縮した肩関節を徒手的に動かす手技です。
肩関節周囲炎で拘縮があるような人が対象なので、当然他動的に動かすのはとても痛みを伴います。
実際、痛みを伴う場合は骨折、骨挫傷などの合併症を起こしやすくなるので、無痛の状態でのマニュピュレーションが必須です。
全身麻酔または神経ブロックで痛みを無い状態にしておくことが大事です。
その上で、肩関節を動かして肥厚した関節包を断裂させます。
バリバリと肥厚した関節包が破壊されていく印象ですね。
施術後、数日で疼痛と関節可動域が改善し、長期成績も良好だそうです。
ただ、推奨されているこのマニュピュレーション治療、私の知っている患者さんでも受けた人は知りませんし、当院近隣の病院整形外科でこの治療をしているというところは聞いたことがありません。
私の勉強不足かもしれませんが。
鏡視下手術は一般的かと思います。
全身麻酔をかけて、肩関節に関節鏡を入れて、肥厚した関節包、靭帯を切離する手術です。
マニュピュレーションより有効という結果がでています。
だったら、鏡視下手術だけでいいような気がしますが、鏡視下手術は全身麻酔が必要なので、入院加療になります。
マニュピュレーションで日帰り手術というのもやってみる価値はあるのかなとも感じます。
あと、ガイドラインには載っていなかったのですが、最近気になる筋膜リリース法についてご紹介します。
超音波で肩関節周囲・関節内をみて圧痛のある部分、肥厚している部分に着目。
その肥厚している部位に生理食塩水またはヒアルロン酸・局所麻酔剤を注射して、膜をはがしていくという治療です。
結構いい回復率が発表されています。
今後の進展が期待できる治療法だと思います。
残念ながら、私はできませんが。
近隣でこの治療のできる病院は探しておきます。
肩関節周囲炎予防のためには、

  1. デスクワークや家事など同じ姿勢の作業を長時間続けない
  2. ハイヒールや肩掛けバックなどで姿勢が崩れないようにする
  3. 肩の適度なストレッチを心掛ける
  4. 栄養バランスの良い食事と質の良い睡眠を取る(動物性の食品や甘い物、お酒を摂りすぎると肩関節周囲炎をを起こしやすいと言われているそうです・根拠不詳です、すみません)。
  5. 肩を冷やさないようにする(血流が悪くなりますので)などを心がけてください。

私は肩こり予防もかねて、腕を挙上する、回すなどの運動が一番かな、と思っています。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

2018年度の特定健診(住民検診)は5月より開始致します。
4月は健診の実施がありません。
ご希望の方は、受診券が届いてからご予約をお取り下さい。