2018年8月 No.153

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

残暑お見舞い申し上げます。まだ暑い日が続いています。今年の夏は「災害」と言われるほど記録的な酷暑に見舞われました。熱中症の搬送者数も増えました。
気象庁によると、九州北部・山口地方は9月も厳しい残暑となる可能性が高く、引き続き熱中症への警戒を呼びかけています。近畿地方も暑い日が続きそうです。
熱中症は、職場や学校、スポーツ現場での発生だけではなく、夜間や屋内も含め、子供から高齢者まで幅広い年代層で発生しています。
熱中症は、一人ひとりが正しい知識を持つことで、防ぐことができます。水分、塩分補給をお忘れなく。

8月後半、病院のエアコンが故障して、4人の高齢者患者が熱中症で亡くなったというニュースがありました。エアコン故障して修理の目処が立たないんだったら、入院継続は無理でしょと思うのですが。
医療の信頼性にかかわるとんでもないニュースでした。

今年は酷暑の影響でしょうか、蚊が飛んでいるのをみるのが少なかったです。
Twitterでは「最近見かけないと思っていたけど、35度以上だと蚊は活動できないらしい」という投稿が話題になりました。
私は毎日虫除けスプレーをしていますが虫除けをしていない人も今年は刺されているのは少ないようです。
長崎大学熱帯医学研究所では、ネッタイシマカという蚊を使った実験で、いろいろな温度と湿度の条件で蚊の飛翔活動を調べてみたところ、飛翔が見られたのは10度から35度までだったという論文があります。
また、これまで最適と言われてきた27度よりも15度の方が長く飛んだとあります。
日本に多く、昼間野外でよくヒトから吸血するヒトスジシマカはネッタイシマカと近縁なので、高温に対する耐性もそれほど違わないと思われます。
ですから35度を超えると蚊が活動しなくなって刺されにくくなるというのは妥当のようです。
ただ、蚊に刺される心配がなくなると喜ぶのはまだ早いです。
大日本除虫菊株式会社によると「日中、蚊を見ないからといって安心しないこと」が大事だと言ってます。
日中、蚊はあくまで潜んでいるだけであって、比較的涼しい朝や夕方に動きが活発になるため、暑さのピークの中で蚊を見かけなかったからといって防虫ケアを怠らないようにとされています。
9月に入ったら、蚊が暴れだすかもしれません。
9月の暴れ蚊いうてね~、は昔母からよく聞かされたフレーズでした。
今年は殺虫剤の売り上げも減少したというニュースもありました。
長崎大学熱帯医学研究所病害動物学分野のサイトによると、蚊の吸血行動に関する様々な実験により、男性が女性よりも刺されやすいこと、体温の高い女性が低い女性より刺されやすいこと、成人>青年>子供>新生児の順に刺されやすいこと(ただし60才以上の老人は刺されにくい)、不汗症の人や皮膚が乾燥する乾癬患者は刺されにくいこと等が確認されています。
血液型に関しても、一般的にO型がA型よりも刺されやすいこと、インド人の血液ではA型が白人の血液ではO型がそれぞれ刺されやすいということが確認されているそうです。
また、着衣の色と蚊の誘引に関する実験では、黒、青、赤、褐、緑、黄、白の順に刺されやすく、黒と白の差は3-4倍であったといいます。
人の皮膚の色でも同様に、黒いメラニン含量の多い人は刺されやすくなっています。
ただし、これらの様々な実験結果には、それぞれ異論が寄せられているのも事実であり、詳細な調査研究が行われているところだそうです。
長崎大学熱帯医学研究所病害動物学分野のサイトは面白かったです。
長崎大学熱帯医学研究所病害動物学分野 蚊、で検索できます。
その中の情報サイトに色々私の興味のあることが書かれていました。来年の夏にまた紹介します。

平成12年・旧病院の時代から続けてきた岸和田徳洲会病院の肛門外来の担当をはずれることになりました。
後任は本年4月より徳洲会に着任された庄野嘉治先生(元泉大津市立病院外科部長)です。
以後、私が手術室に入ることは無くなりそうです。
当院では、切除を伴わない痔核硬化療法・ジオン(ALTA)四段階注射は続けようと思っていますが、外痔核のある脱出する内痔核は、岸和田徳洲会をはじめとする近隣の病院に紹介しようと思ってます。

  休診のお知らせ
 9月4日(火)夜診 19:30終了

 10月6日(土)、10月10日(水)は院長学会出席のため、休診致します。
 ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。

人生最終段階の医療・ケア

人生の最終段階の医療―特に看取りのあり方私事ですが、9月22日の土曜日に表記の題で医師(かなりアクティブに医師会活動に従事されている先生方)を対象にお話することになりました。
在宅医療をしているからということで頼まれました。
現在準備中です。
平成26年12月の院内報に、人生最期のとき、あなたはどこで過ごしたいですか?という記事を書きました。
これは平成26年11月29日に泉大津市民会館で行われた泉大津市医師会主催の市民公開講座で私がお話した内容(演題名同じ)を記事にしたものです。
今回の9月22日の発表も中盤から後半はこれに緩和ケア研修会の情報(療養場所の選択と地域連携)を加えた内容にしようと思ってます。
2週間前にスライドの提出が求められていますので、締め切りは9月8日。
今イントロのスライド作成中で、いろんなサイトを見ているところです。
一番参考にしているのが平成30年3月に改定された、厚生労働省の人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインです。
今回はこのガイドラインの概要と特にアドバンス・ケア・プランニングにつき解説します。

現在日本の人口は1億2700万人ですが、減少局面を迎えており、2060年には9000万人を割り込むと予想されています。
また、65歳以上の人口の割合(高齢化率)は現在27%、2060年には40%近くになります。
また年間死亡者数は現在約130万人ですが、一番多くなる2040年には約170万人になると予想されています。
少子高齢”多死”社会が到来します。
死亡場所を見てみると、戦後の昭和26年では自宅で亡くなる方が82.5%、病院で亡くなる方が9.1%でしたが、昭和51年に逆転し、今では病院で亡くなる方75%、自宅で亡くなる方は12.7%です。
内閣府が発表した平成24年度高齢者の健康に関する意識調査では、最後を迎えたい場所について、自宅が54.6%と最も多く、病院などの医療施設が27.7%、特別養護老人ホームなどの福祉施設は4.5%となっています。

人生の最終段階における治療の開始・不開始及び中止等の医療のあり方の問題は、従来から医療現場で重要な課題となってきました。
厚生労働省では、人生の最終段階における医療のあり方については、昭和62年以来検討会を開催し、継続的に検討を重ねてきました。
一回目の名称は、末期医療に関するケアの在り方の検討会でした。
平成18年3月の富山県射水市民病院における人工呼吸取り外し事件が報道され、尊厳死のルール化の議論が活発化しました。
それを受けて、厚生労働省では、平成19年5月に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」をとりまとめました。
平成27年3月には、「終末期医療に関する意識調査等検討会」において、最期まで本人の生き方(=人生)を尊重し、医療・ケアの提供について検討することが重要であることから、「終末期医療」から「人生の最終段階における医療」へ名称の変更が行なわれました。
平成30年3月の今回の改訂は、医療介護の連携の重要性からケアという文字が盛り込まれています。

さて、今回の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の内容です。
人生の最終段階における医療・ケアの在り方 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も重要な原則であるとされています。
また、本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要です。
さらに、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要です。
この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも重要とされています。
医療・ケアチームは医療ケア行為(治療)の開始・不開始、内容の変更、中止につき医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断します。
緩和医療は十分に提供すべきであることが示されています。
大事なのは、本人の意思です。今回のガイドラインの改訂では、近年、諸外国で普及しつつあるACP(アドバンス・ケア・プランニング)の概念が盛り込まれています。以下アドバンス・ケア・プランニングにつき、説明します。

~自らが望む、人生の最終段階における医療・ケアについて話し合ってみませんか~もしものときのために・パンフレット厚労省

誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気やケガをする可能性があります。
命の危険が迫った状態になると、約70%の方が医療・ケアなどを自分で決めたり、望みを人に伝えたりすることが出来なくなると言われています。
自らが希望する医療・ケアを受けるために、大切にしていることや望んでいること、どこで、どのような医療・ケアを望むかを自分自身で前もって考え、周囲の信頼する人たちと話し合い、共有することが重要です。
もしものときのために、自らが望む人生の最終段階における医療・ケアについて、前もって考え、家族、医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い共有する取組を「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼びます。

2014年の厚生労働省人生の最終段階における医療に関する意識調査では、70%の人があらかじめ自分の治療やケアについての希望を書面に記載しておくことについて賛成と答えましたが、人生の最終段階の治療やケアについて家族と詳しく話し合ったことがある人は3%で、実際に自分の治療やケアについての希望を書面に記載していた人も約3%でした。
巷では「エンディングノート」や「終活」という言葉をよく耳にするようになりましたが、実践している人はまだ少数です。

アドバンス・ケア・プランニングについて、まず、考えてみましょう。

1.もし生きることができる時間が限られているとしたら、あなたにとって大切なことはどんなことですか?以下の中から選んでみて下さい。(複数回答可)

  1. 家族や友人のそばにいること
     
  2. 仕事や社会的な役割が続けられること
     
  3. 身の周りのことが自分でできること
     
  4. できる限りの治療が受けられること
     
  5. 家族の負担にならないこと
     
  6. 少しでも長く生きること
     
  7. 好きなことができること
     
  8. ひとりの時間が保てること
     
  9. 自分が経済的に困らないこと
     
  10. 家族が経済的に困らないこと
     
  11. 痛みや苦しみがないこと
     
  12. その他

またその理由も考えてみましょう。

あなたご自身や親しい方が重体や危篤になった経験や、親しい方を亡くしたご経験はあるでしょうか?ご自身、ご家族や友人のご経験、またはテレビや映画の場面を通じてお感じになったことについてお伺いします。

  1. 「こんな最期だったらいいな、こんな治療やケアを受けたいな」と感じたことはどんなことですか?
     
  2. 「こんな最期は嫌だな、こんな治療やケアは嫌だな」と感じたことはどんなことですか?
     
  3. 今後もしあなたが同じような状況(治らない病気・重体や危篤)になったとしたらどのような治療やケアを受けたいですか?

平成30年度在宅医療フォーラム考えて、書いてみて、結果を書面に残しておくことが大切です。
また、このような意思は、時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて変化します。
医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援が行われることが必要です。
また、自分の意思が伝えられなくなったとき、上記のことを知っておいて人は誰ですか?伝えたい相手にお願いしておきましょう。
今回は人生最終段階の医療・ケア、アドバンス・ケア・プランニングについて解説しました。
また、わからないことがあれば、お聞きください。
人生最終段階を考える講演会が、9月2日(かなり直近になってますけど)、テクスピア大阪(泉大津駅山手・アルザ通り徒歩3分)で行われます。お時間のある方は是非聞きに来てください。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

今年は酷暑の影響でしょうか、蚊が飛んでいるのをみるのが少なかったです。
Twitterでは「最近見かけないと思っていたけど、35度以上だと蚊は活動できないらしい」という投稿が話題になりました。
私は毎日虫除けスプレーをしていますが(今年は新成分イカリジン配合の虫除け)、虫除けをしていない人も今年は刺されているのは少ないようです。
長崎大学熱帯医学研究所では、ネッタイシマカという蚊を使った実験で、いろいろな温度と湿度の条件で蚊の飛翔活動を調べてみたところ、飛翔が見られたのは10度から35度までだったという論文があります。
ただ、蚊に刺される心配がなくなると喜ぶのはまだ早いです。
大日本除虫菊株式会社によると「日中、蚊を見ないからといって安心しないこと」が大事だと言ってます。