2019年 2月 No.159

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

2月ももう終わりになります。
寒さの中にも少しずつ春の兆しが感じられるようになっています。日も少し長くなりました。
猛威をふるっていたインフルエンザですが、2月末になって、少し峠を越えたようです。

しかし、油断大敵。うがい、手洗い、マスクの着用、できれば人込みの中に行かないなど注意して、感染しないようにしてください。

 花粉が飛び始めています。 

花粉症の方は花粉のブロックを。鼻水、目のかゆみなど症状があるようでしたら、受診してください。
当院ではスギ・ダニの舌下免疫療法ができます。
根治が望める治療法ですので、ご希望の方はご相談ください。

 大阪で麻疹が流行しています。 

あべのハルカス近鉄本店の客2名、茨木市の大阪府済生会茨木病院では医師を含む10人の院内感染が確認されました。
府内の患者数は今年に入り 77人となり、過去10年で最多のペースです。
保健所などは早期の受診・抗体検査、ワクチン接種を呼びかけています。

平成 28年 8月にも麻疹の流行が関西でありました。
このときは兵庫県在住の男性がインドネシアのバリ島で麻疹に感染し、関西国際空港、幕張メッセに行ったため、結果、関西空港での職員の麻疹の集団感染がおこり、千葉県内でも麻疹の感染が広がりました。

麻疹は空気感染・飛沫感染・接触感染で感染伝播し、感染力は極めて強く、免疫が無いと 90%は近くにいるだけで発症します。
感染から約 10 ~ 12日の潜伏期を経て、発熱、カタル症状(咳嗽、鼻汁、咽頭痛など)、結膜炎症状、下痢などが出現します。
発症前日から周りの人への感染力がありますが、カタル期の感染力が最も強いようです。
カタル期が 2 ~ 4日続いたあと、頬粘膜に麻疹に特徴的とされる白い粘膜疹(コプリック斑)が出現します。その後一旦解熱しますが、1-2日後に全身の発疹が出現します。

麻疹は感染力が強く、空気感染のため、同じ部屋にいるだけで感染します。麻疹に対する免疫を獲得しておくことが大事です。
予防接種を受けていない人、受けていても抗体価が下がっている人は麻疹の予防接種が必要です。

 iPS細胞で脊髄損傷治療 

人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って脊髄損傷を治療する慶応大の研究チームの臨床研究計画が、厚生労働省の再生医療等評価部会で了承されました。世界初の試みで、研究チームは今年の秋にも最初の移植を行う計画です。
リハビリ以外に有効な治療法が確立していない脊髄損傷で、新たな治療法につながる可能性があります。

臨床研究は、脊髄を損傷してから2~4週間が経過し、運動や感覚の機能が完全にまひした18歳以上の重症患者を対象に行うとのこと。
京都大が作製・備蓄する他人のiPS細胞から、神経のもとになる細胞(神経前駆細胞)を作り、患部に移植する。
傷ついた神経が再生し、麻痺した機能が改善すると期待されます。

移植は患者4人に行う計画で、早ければ今秋に慶応大病院(東京都新宿区)で1例目を実施予定です。他人のiPS細胞を利用するため、移植後は免疫抑制剤を使う。
リハビリ治療も行いながら、1年かけて安全性や有効性を調べます。

脊髄損傷は、背骨の中を通る神経の束(脊髄)が傷つき、手足などにまひが起こります。
交通事故や転倒、スポーツ中のけがなどで新たに脊髄損傷となる患者は年間約5000人に上り、損傷してから半年以上たった慢性期の患者は10万人以上とされています。

今回の臨床研究は慢性期に入る前の患者が対象ですが、研究チームは2~3年以内に、より治療が難しく患者の多い慢性期を対象にした臨床研究も行う予定です。
その上で、保険適用を目指した臨床試験(治験)に進みます小型のサルの実験では、移植した細胞が神経細胞などに変化して傷ついた神経が再生しました。
4~8週間で手足が徐々に動くようになり、跳びはねたり、物をつかんだりできるようになりました。
国内でiPS細胞を使った再生医療の臨床試験・研究が国などの了承を受けたのは、目の難病「加齢黄斑変性」や神経難病「パーキンソン病」などに続き5例目です。
日本主導の研究となっていただきたいです。

白血病

リオ五輪にも出場し、東京オリンピックでの活躍が期待されていた水泳・池江璃花子選手(18歳)が白血病であることを自身の SNSで公表され、日本中に衝撃が走りました。
白血病は、昔は不治の病として扱われていました。
しかし、近年の医学の進歩は目覚ましく、有効な治療法が開発されています。
決して甘く見ることはできませんが、治療可能な疾患になってきています。
10歳代後半の白血病は抗がん剤を組み合わせた治療などで 7割が完治するとも言われています。
今回は白血病について書いてみます。

白血病は血液のがんです。
血液は骨の中、骨髄で形成されます。
造血幹細胞という元になる細胞から、骨髄性幹細胞、リンパ性幹細胞に分化します。
骨髄性幹細胞は更に分化して、顆粒球、単球、血小板、赤血球がつくられます。
リンパ性幹細胞からはリンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)が作られます。リンパ球も白血球に分類されています。
つまり、顆粒球、単球、リンパ球を合わせて白血球と呼びます。

骨髄では未分化・幼弱な細胞が分化していき、分化・成熟した血球が末梢血に出て行きます。
白血球は病原体やガン細胞を直接、あるいは抗体を作って間接的に攻撃し、体を守る働き殺菌、免疫作用を持ちます。
白血病は白血球をつくる細胞に何らかの遺伝子異常が起きて癌化する疾患です。
結果、未分化・幼弱な白血球(白血病細胞)が無制限に増殖して、末梢血に出て行きます。

がん化した白血病細胞は成熟した白血球の機能がないので、白血病細胞が増えると、白血球本来の仕事ができなくなり、免疫機能が低下して、感染症などにかかりやすくなり、悪化しやすくもなります。
また、がん化した白血球をつくる細胞だけが際限なく作られることで、赤血球や血小板など、正常の血液成分の生産が滞るようにもなります。
赤血球が減ると貧血に、血小板が減ると僅かなことで出血を招き、止血されにくくなります。
白血病の症状は、どの段階の血液の細胞ががんになったかにより異なります。

上記のように、貧血、出血傾向、感染症などが初発症状になることもあり、だるさ、疲れやすさ、抑うつなどの症状が現れることもあります。
白血病経過中にお亡くなりになる場合でも、必ずしも白血病そのものが死因となるわけではなく、実際に死因となるのはその先にある肺炎や敗血症、脳出血などが多いです。

白血病は大きく「骨髄性」と「リンパ性」の 2つに分類され、それぞれに「急性」と「慢性」の 2種類があります。
つまり、4つのグループがあります。
多い順に書くと、もっとも多い急性骨髄性白血病が 10万人当たり 5 ~ 6人。
次いで急性リンパ性白血病が 10万人あたり 1~ 2人。
慢性骨髄性白血病はさらに少なく 10 ~ 20万人に 1人程度とされ、
慢性リンパ性白血病は、日本ではきわめて少ないとされます。

池江選手の病気がこの中のどのタイプなのかは発表されていません。
過去に白血病になった著名人では、女優の夏目雅子さんや歌手の本田美奈子さんが急性骨髄性白血病に、歌舞伎役者の市川團十郎さんが急性前骨髄球性白血病という急性骨髄性白血病の一種に分類される病気にかかっています。
この3人は残念ながらお亡くなりになりましたが、2000年に急性骨髄性白血病を発症した女優の吉井怜さんは、治療が成功して現在は仕事に復帰しています。
俳優の渡辺謙さんも 1989年、映画「天と地と」の撮影中に急性骨髄性白血病を発症しましたが、現在克服し、ハリウッドで活躍されています。
今年の5月にはポケモンの実写映画が配信されるとのことです。

白血病が進行すると、血液中の白血病細胞が多くなり過ぎて、本当に血が白っぽく濁ってくるので白血病と呼ばれるようになったそうです。
もちろん、現代ではそこまで悪化する前に治療が行われるので、白い血液を見ることはほとんどなくなりました。

骨髄の図

診断はまず血液検査です。
白血球が異常に多くなります。
また、貧血や血小板が少なくなったりします。
未分化・幼弱な白血球が末梢血に出てきます。
私が注意しないといけないのは、当院での自動血球計測器では幼弱な血球がでていても診断できません。
白血病細胞と普通の白血球の区別ができないのです。
検査会社に出すと白血病細胞が出ていることがわかります。
注意を要するケースは院内検査だけでなく、白血球分類検査ををしていただくようにしています。
当院でできる検査は実はここまでで、成熟していない、本来なら骨髄から末梢血に出てこないような幼弱・未分化な白血病細胞が検出されたら、病院の血液内科に紹介します。

血液内科では骨髄検査(骨の中に針を刺して、骨髄液を採取して顕微鏡で検査)をします。
ここで、どの段階の白血病が癌化しているのか、どのような染色体異常・遺伝子異常が起きているのかを診断します。

治療は抗がん剤が中心となります。
特殊なところでは慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病には、いわゆる分子標的薬が使われます。
急性前骨髄性白血病にはオールトランス型レチノイン酸(all-transretinoic acid:ATRA)が使われます。
この二つにより白血病の治療は大きく進歩したと言われています。

他の病型の白血病の治療も更に進歩していますが、基本は抗がん剤でできるだけ白血病細胞を死滅させることです。
抗がん剤使用中は正常細胞も少なくなりますので、赤血球が少なくなれば輸血、感染症予防のため、抗生剤使用や、無菌室に入って治療することもあります。
最後の切り札として用意されているのが造血幹細胞移植です。

あらかじめ大量の抗がん剤で白血病細胞を完全に撲滅し、そこに正常な造血幹細胞を蒔くというイメージです。
ドナー(提供者)の体内から造血幹細胞の入った骨髄液を採取し、患者に点滴で投与する治療法です。
患者の体に入った骨髄液が骨髄に届いて定着すると、そこで造血幹細胞が正常な血液を作り出すようになります。
移植技術の進歩によって、成功率は上がっていますが、一番のネックはドナー不足です。
造血幹細胞は誰からでも移植できるわけでもなく、HLAという白血球の型の組み合わせが合わなければなりません。
この組み合わせは非常に多くて、よくて数百人に1人、珍しいタイプだと数万人に1人しか適合しないこともあります。
一番適合しやすいのは両親が同じ兄弟なのですが、少子化の影響がでているそうです。
なので、多くが骨髄バンクに登録している人から提供してもらうことになります。
ドナーから骨髄液を採取するにも2 ~ 3日の入院を必要とします。
せっかくHLAが適合しても、仕事などの関係で見送らざるを得ないケースもあるそうです。
移植技術は進歩して、大きく分けて骨髄移植、臍帯血移植、末梢血幹細胞移植の3つあり、症例によって選びます。

造血幹細胞移植の種類骨髄移植:腸骨(腰の骨)から注射器で骨髄液を吸引(採取)

末梢血幹細胞移植:注射によって末梢血中の造血幹細胞を増やし、採血。血液成分を分離する機器で造血幹細胞を採取します。

臍帯血移植:出産後、切り離した胎盤側の臍帯から残っている血液を採取し、-196℃の液体窒素の中で保存(移植時に解凍)

ドナー登録できる条件として、骨髄・末梢血幹細胞の提供の内容を十分に理解している方・年齢が18歳以上、54歳以下で健康な方・体重が男性45kg以上/女性40kg以上の方が挙げられています。
池江選手の白血病公表以来、ドナー登録が増えているそうです。

残念ながら私はもうドナー登録できませんが、できるだけ多くの人に骨髄バンクに登録してほしいです。
池江選手の朗報を待っています。

日本骨髄バンク

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

5月の10連休。
当院は4月30日、5月2日は診療を予定しています。
カレンダーの赤い日(4月28日・29日、5月3日~6日)と即位の日の5月1日は休診します。

また、少し早いですが、6月10日・11日はISO9001の審査日です。
診療予約を制限させていただく予定ですので、よろしくお願いします。

忠岡町の健康診断、今年度は3月31日までです。