2019年12月 No.169

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

早いものでもう12月後半です。
体調には十分注意して年末年始を迎えるようにしてください。
今年も終わります。
2019年はどんな年だったのか日本の10大ニュース(読売新聞記事)で振り返ります。

【1位】皇太子徳仁親王殿下が5月1日、第126代天皇に即位され令和に改元されました。
万葉集からとられた令和。
今年の漢字一字は令和の令でした。

【2位】ラグビー・ワールドカップ日本大会が9月20日に開幕。
日本代表は、一次リーグを4戦全勝の1位で突破し、初の8強入りを果たしました。
準々決勝で今回優勝の南アフリカ代表に敗れましたが「桜の戦士」のチームスローガン「ONE TEAM」は、年末の新語・流行語大賞に選ばれています。

【3位】7月18日、京都アニメーションで男がガソリンをまいて火をつけ建物はほぼ全焼しました。
死者は36人、負傷者は33人に上る大惨事となりました。
多くの才能が失われた今回の事件は世界中で報道され、海外の著名人やファンからも追悼の声が相次ぎました。

【4位】消費税率が10月1日、8%から10%に引き上げられました。
軽減税率制度が導入され、食品などの生活必需品は8%に据え置きされています。

【5位】10月12日に上陸した台風19号は、関東地方や福島県を通過し、大きな被害をもたらしました。死者は90人を超えました。
昨年の関西を襲った台風を彷彿とさせました。

【6位】今年のノーベル化学賞が、リチウムイオン電池を開発した旭化成の吉野彰・名誉フェローに贈られました。
リチウムイオン電池の発明はモバイルIT機器や電気自動車の普及などにつながっています。

【7位】10月31日、那覇市の首里城から出火し、焼損しました。
今年1月に全体の工事が終わったばかりでした。
政府は「沖縄のシンボル」の再建に全力を挙げる方針です。

【8位】ゴルフの全英女子オープンで8月4日、渋野日向子が初優勝を果たしました。
ラウンド中もお菓子を食べながら笑顔を絶やさずにプレーする姿から、海外メディアは「スマイリング・シンデレラ」と呼んで称賛していました。
シブ子とも呼ばれていますね。
今年の紅白歌合戦の審査員にも選ばれています。

【9位】米大リーグ・マリナーズのイチローが3月21日、現役引退を表明しました。
記者会見での後悔などあろうはずもありません、は印象に残りました。

【10位】韓国人元徴用工の問題を発端に、日韓関係が「戦後最悪」と評されるほど悪化しました。観光客も激減したようです。
他にも、中曽根元首相逝去、アフガニスタンで中村医師 銃撃され死亡などがありました。
令和2年はオリンピックイヤー。
どんな年になるでしょうか。

 心臓拍動下で僧帽弁手術 

大阪大学 の心臓血管外科学・澤 芳樹 教授らのグループは、これまでは人工心肺を用いて心臓を一時的に停止させて行っていた僧帽弁形成術を、左胸部の約4㎝程度の創部から心尖部から挿入したデバイスを用いて腱索を再建することにより、人工心肺を用いずに心臓拍動下に僧帽弁形成術を行い成功しました。

重度の僧帽弁閉鎖不全症は放置すると心臓拡大、不整脈、心不全、肺うっ血などを来たすため、心臓手術(僧帽弁置換術、僧帽弁形成術)が必要とされています。

従来の心臓弁に対する手術は心臓を停止させてから、心臓や大動脈を切開して手術を行っていました。
本治療法は人工心肺を使用しないため、人工心肺の合併症(脳梗塞など)を回避することが可能であり、術後の回復も通常の心臓手術よりも早く、手術のさらなる低侵襲化や安全性向上が期待されます。

また、持病や既存の合併症により人工心肺を用いた心臓手術が困難な患者さんに対する治療法としても期待されます。
私の在籍した教室での臨床研究です。

澤先生は心臓の低侵襲治療に取り組んでおり、今までもカテーテルでの大動脈弁置換、心不全に対する心筋シートなどを開発されています。

 インフルエンザ 

流行期に入っています。
手洗い、マスク、うがいを励行してください。
ワクチン接種もまだ行っています。
まだの方は是非ご検討ください。

悪性リンパ腫

元フジテレビで現在フリーの笠井信輔アナウンサー(56)が休業され、治療に専念されると発表されました。
その後、令和元年12月19日、今年9月までレギュラーを務めた情報番組「とくダネ!」に生出演し、自身の病気について言及しました。
病名は「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」悪性リンパ腫の一つの病型です。
現在静脈注射用の皮下ポートを挿入して治療中だそうです。
笠井さんを襲った悪性リンパ腫、どんな病気なのでしょうか。
今回は悪性リンパ腫につき、解説します。

 1.悪性リンパ腫とは 

血液中には免疫をつかさどる白血球やリンパ球、酸素を運搬する赤血球、出血を止める働きがある血小板などの血液細胞があります。
これらは、骨の内部にある骨髄で血液細胞のもととなる造血幹細胞から増殖しながら分化(未熟な細胞が成熟した細胞になること)してつくられます。
造血幹細胞は、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれ、前者から赤血球、血小板、白血球の成分のうち顆粒球(かりゅうきゅう)や単球が産生され、後者から白血球中のB細胞、T細胞、NK細胞などのリンパ球が産生されます。
悪性リンパ腫は、血液細胞に由来するがんの1つで、白血球の1種であるリンパ球ががん化した病気です。
悪性リンパ腫は、日本全国で1年間に約29,400人が診断されます。
悪性リンパ腫と診断される人は60歳ごろから増加して、70歳代でピークを迎えます。
リンパ球系のがんにリンパ性白血病がありますが、こちらは病巣の主座が骨髄・血管内で、リンパ節が腫れることはありません。

 2.リンパ系、リンパ節について 

人間には動静脈・毛細血管のような血管系とは別に、リンパ系と呼ばれる経路があります。
リンパ系とは、リンパ液と呼ばれる清明な組織液を運搬する導管ネットワークです。
リンパ液は元は組織液で、ほぼ透明でリンパ管という管を通ります。
ただし消化管を流れるリンパ液は脂肪を含むため白濁しており、乳糜液といわれます。
リンパ系の中にリンパ節があります。
全身からリンパ液を回収して静脈に戻すリンパ管系の途中の要所要所に位置する器官です。
リンパ節には、損傷した細胞、がん細胞、感染性微生物、異物などを飲み込んで破壊する特殊な白血球・リンパ球やマクロファージなどが詰まっています。
リンパ節は組織内に進入した微生物・異物が血管系に入り込んで全身に循環してしまう前にチェックし、免疫応答を発動して食い止める関所のような機能を持っています。
リンパ節は感染やがんの拡大を阻止するという重要な機能を果たしてるのです。
リンパ節は豆の様な形の0.2-3cmの大きさの小体で、一つの場所に2~10数個集まっています。
リンパ節は個人差がありますがおよそ300から1200個、平均して全身に600個程度あると言われています。
頸部、腋窩、鼠径部に多く配置されています。

 3.症状 

悪性リンパ腫の初発症状としては、癌化したリンパ球がリンパ節に集まって増殖するため、頸部、腋窩、鼠径部などリンパ節の多いところに、通常は痛みのないしこりとしてあらわれます。
風邪など炎症でリンパ節が腫れることがありますが、痛みがある場合が多いです。
悪性リンパ種のほかに、がんのリンパ節転移によるリンパ節腫脹も痛みのないことが多いです。
痛みのないリンパ節腫脹は要注意といわれています。
また大きさ1.5㎝を超えると悪性の可能性が高いともいわれています。
炎症によるリンパ節腫脹の場合、炎症がおさまるとリンパ節は小さくなりますが、悪性リンパ腫の場合は数週から数カ月かけ持続的に縮小せずに増大します。
病状が進むと、このしこりや腫れは全身に広がり進行するに従って全身的な症状がみられるようになります。
全身的な症状としては発熱、体重の減少、寝汗などがおこります。
更に進むと体のかゆみや皮膚の発疹、腫瘤による気道や血管、脊髄などの臓器の圧迫がおこります。
気道閉塞、血流障害、麻痺などの症状があらわれ、緊急で治療が必要な場合もあります。
リンパ節に初発るすことが多いのですが、胃、脾臓、脳などに腫瘤を形成することもあります。

 4.原因 

発症の原因はまだ明らかではありませんが、細胞内の遺伝子に変異が加わり、がん遺伝子が活性化することで発症すると考えられています。
また、一部にはバーキットリンパ腫などウイルス感染症が関係することや、免疫不全者に多いことが知られています。
また、胃のMALTリンパ腫はヘリコバクターピロリ菌の感染が原因とされています。

 5.悪性リンパ腫の分類 

悪性リンパ腫はがん細胞の形態や性質によって70種類以上に細かく分類されていますが、大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分類されます。
顕微鏡でリンパ節を見てリード・スタンバーグ細胞、ホジキン細胞が観察されるのがホジキンリンパ腫、それ以外が非ホジキンリンパ腫です。
発症頻度は欧米と異なりわが国ではホジキンリンパ腫は少なく、多くは非ホジキンリンパ腫です。
どのタイプに分類されるかによって治療方針が異なるため、病変部から組織を採取する「生検」を行い、顕微鏡による病理学的検査により正確に診断を行うことが重要です。
つまりは次第に大きくなる痛くないリンパ節腫脹はリンパ節を取って、顕微鏡で調べる必要があります。
非ホジキンリンパ腫は、がんになっている細胞の特徴(B細胞性・T細胞性・NK細胞性のどれかとその成熟度)や染色体検査や遺伝子検査などの結果を基にさらに細かく分類されます。

非ホジキンリンパ腫の臨床分類

(1) 低悪性度リンパ腫年単位で緩やかに進行します。
腫瘍量が少ない場合は、経過観察も可能です。
代表的な病型として、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫などがあります。

(2) 中悪性度リンパ腫週~月単位で進行します。
したがって、診断された時点で、腫瘍に対する治療が必要となります。
代表的な病型として、笠井さんの罹患したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫があります。
国内の非ホジキンリンパ腫の30~40%を占め、最も発生頻度の高い病型です。

(3) 高悪性度リンパ腫日~週単位で急速に進行します。
病状によっては、この診断を疑われた時点で緊急入院をすることもあります。
高悪性度リンパ腫では、ほかのリンパ腫と異なり、入院を必要とする強力な化学療法を行います。
代表的な病型として、バーキットリンパ腫やリンパ芽球性リンパ腫があります。

 6.悪性リンパ腫の検査 

悪性リンパ腫と診断されたら、全身検索が必要です。
血液検査、レントゲン、消化管内視鏡検査。
中でも一番大事なのがCT検査です。
最近ではPET検査が組み合わされます。
この検査で悪性リンパ腫の全身の広がりを評価します。

 7.悪性リンパ腫の治療 

基本は化学療法・抗がん剤です。
胃などの臓器に出来た悪性リンパ腫は手術療法が選択されます。
扁桃腺など咽頭部分にできた悪性リンパ腫は放射線治療が有効なこともあります。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては「CHOP療法」という治療が選択されます。
B細胞リンパ腫であればBリンパ球の表面にあるCD20という物質に対する抗体薬(分子標的薬)であるリツキシマブを併用した「R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)」6-8コースが標準治療です。
おそらく笠井さんもこの治療が選択されていると思います。
比較的化学療法によく反応する例が多いそうです。
そのほか、組織、発生部位、進行状況、全身状態などにより、治療が選択されます。
特殊な病型として「MALTリンパ腫」と呼ばれる胃に発生する低悪性度リンパ腫があり、高率にヘリコバクタ-・ピロリという細菌の感染が関係していることが分かりました。
この「胃のMALTリンパ腫」では、ヘリコバクタ-・ピロリの除菌療法が有効であることが確認されつつあります。
統計的に、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の半年後の寛解率は70-80%。
再発した場合も含めて治る確率は60%くらい。
寛解しなければ違う薬を試すなど治療の強度を上げる必要があります。
笠井さんの治療が奏功して、復帰されるのを期待しています。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★年末・年始休暇のお知らせ★

年末は12月28日土曜日まで診療します。
12月29日(日曜日)~1月5日(日曜日)まで休診させていただきます。
1月6日月曜日から通常診療となります。
受診中の方の薬が切れないようこちらも十分注意しますが、皆様もお気をつけ頂きますようお願いします。

12月・1月の月曜の夜診、当院の都合で休診とさせていただいています。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。