2021年10月 No.191

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

10月もほぼ終わりです。
10月前半は30度以上の真夏日が6日もありました。10月中に6回の真夏日観測は、計測を始めた1883年以来初めてのことだそうです。
10月なのにまだ暑いなという印象はありました。
10月16日までは朝夕の冷え込みを感じることはありましたが、まだ日中は暑かったです。

しかし、10月17日(日)より急に寒くなりました。私はこの日、忠岡町のコロナワクチン集団接種に出務していました。
17時に終了し、庁舎を出て車に移動しようとしたとき、冷たい風がものすごく強く、びっくりしました。冬の到来を思わせました。
以後、寒い日が続きます。

コロナは下火になり、緊急事態宣言解除。
大阪では25日より飲食店などへの営業時間短縮要請が解除されました。
ワクチンの普及などで府内の感染状況が改善して病床使用率が低下したことを踏まえ、31日の期限を前倒ししたものです。
10月25日以降、営業時間や酒類提供の制限はなくなりました。
認証店では5人以上のグループでの来店も認める一方、大人数で固まらないように「1テーブル4人まで」との制限は残しました。
非認証店も酒類提供を認めますが、来店は1グループ4人までとしています。
いずれの店舗に対しても、会食の時間は2時間程度以内とすることになっています。
大阪府は、会食に際して認証店の利用やマスク着用の徹底を求めるほか、ハロウィーンなどの主催者のいない集まりへの参加の自粛も求めています。
営業時間や酒類提供の制限解除、やっとかという印象ですが、このまま気の緩みが第6波の到来を招かなければいいですが。寒波も来ます。昨年は全然見なかったですが、インフルエンザの流行も危惧されるところです。

忠岡町のコロナワクチン集団接種は10月末に一旦終了します。11月は2回目接種の方だけ、集団接種で行うとのことです。忠岡町からの要請を受けて、当院は11月以降、月曜・火曜のワクチン接種を担当します。町の保健センターが人数コントロールをしてくれるものと思っていたので受けたのですが、なんと希望者が当院に直接電話するシステムとのこと。かなり戸惑っています。ワクチンロスがたくさんでそうです。でも、広報にも載ったらしく時すでに遅くどうしようもありません。まあ、何とか開始してみます。3回目のワクチン接種も高齢者は1月頃から開始になります。
また、クーポンなどが送られてくるかと思います。

先月コロナ治療で抗体カクテル療法、ロナプリーブが有効とお伝えしました。
当院でも在宅で使用できるように準備しようかなと思っているところです。
これは点滴する必要があります。現在数種類の飲み薬が開発中で、治験では効果があるとのことです。
効果があるならやはり飲み薬が楽でいいですね。

新しい認知症治療薬

認知症の大部分を占めるアルツハイマー病については、現在4種類の薬が臨床で使われています。
これらの薬剤は神経細胞の変性により減少した脳内のセチルコリンの分解酵素であるコリンエステラーゼを阻害することにより、脳内のアセチルコリン濃度を高めるなどして進行を遅らせることが期待されています。
しかし効果は限定的でありいわゆる根治薬ではありません。
根治的な治療薬の開発が待たれていました。
これまで世界各国で積極的に治療薬の開発が行われてきたものの、効果・副作用の面から、多くの候補薬が治験段階で開発中止となっていました。

このような中、FDA(米食品医薬品局)は新たなアルツハイマー病治療薬として、米製薬会社大手バイオジェンと日本のエーザイが開発したアデュカヌマブの製造販売を条件付きで承認しました。
これまでのアルツハイマー病治療薬は、前述したようにコリンエステラーゼ阻害薬が中心であり、神経細胞が変性・死滅していくプロセスに直接関与するものではありませんでした。
今回のアデュカヌマブはアルツハイマー病の主たる病態とされるアミロイドベータ蛋白の沈着を低下させるというこれまでにない薬理作用から、病態に直接作用することでより効果の高い治療薬として期待されています。

この薬は点滴薬です。
少量から開始し4週に1度増量していき7回目以降維持量に到達します。

また非常に高価で1人1年間600万円以上が必要です。
FDAで承認されましたがこの承認に不服と言う審査員が辞任するという事態まで起こっています(3人・11人)。
使用後効果がなければ承認が取り消されることもあるそうです。
日本においても昨年12月に承認申請が出され現在審査中であり、年内には結論が出される見込みです。日本で本当に認可されるのか?高価な薬なので、日本の国民皆保険制度の中での取り扱いはどうなるのか?が注目されます。

帯状疱疹の予防

今回は帯状疱疹と、帯状疱疹を予防するためのシングリックスワクチンについて解説しています。
帯状疱疹については、平成30年3月の院内報に記載しています。
今回は予防にフォーカスをあてますが、簡単に帯状疱疹の説明をします。

帯状疱疹は、体の一部にピリピリした痛みが出現して、その部分に赤い水疱ができます。
痛みは徐々に悪化する場合もあり、睡眠にも影響がでることもあります。

帯状疱疹の原因は多くの人が子供の時に感染する「みずぼうそう(水痘)」のウィルスです。
みずぼうそうが治ったあとも、ウィルスは体内の神経に潜伏しています。
加齢、過労やストレス、疾病等で免疫力が低下するとウィルスが再び活性化して、神経を伝って、皮膚に到達し、帯状疱疹を発症します。
日本人成人の10人に9人が水ぼうそうのウィルスをもっているとされています。
特に50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。

発症すると皮膚の症状だけでなく神経に炎症を起こすことで痛みが現れることがあります。
特に顔や目、耳の近くに出来ると、顔面神経麻痺、視力低下、めまい・耳鳴りにつながることもあり、注意が必要です。
とにかく痛いです。
私の先輩は、痛みのある湿疹、水疱をみたら帯状疱疹であると教えてくれました。

神経の損傷がひどいと皮膚の症状が治った後も痛みが続くことがあります。
これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。
年齢や、患者さんの免疫状態によって、経過は異なりますが一般的に発症しても1ヵ月以内に90%の方が治癒しますが、残り10%の方が帯状疱疹後神経痛といって、皮膚がズキズキしたり、チクチクした慢性的な痛みに悩まされるのが問題です。
リリカ、タリージェなど神経痛に効く薬が処方されます。服用が長期にわたることもあります。
特に高齢者ではリスクが高く、帯状疱疹後神経痛を防ぐためにも帯状疱疹の予防が大切です。
発症したら、抗ウィルス薬による治療行います。
発症早期に治療を開始するほど、効果が期待できます。チクチクした痛みについては痛み止めの処方します。

 帯状疱疹の予防 

日ごろからストレスや疲れを溜め込まないようにして、免疫力が低下しないようにすることが大切です。
そのためには、良質な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動、趣味や楽しむ生活が大切だと考えます。

帯状疱疹ワクチン

ビケン製の水痘生ワクチンとシングリックスの2種類があります。

ビケン製の水痘生ワクチンは、弱毒化された生きたウイルスが含まれています(生ワクチン)。

小児に使用する水痘ワクチンですが、2016年から帯状疱疹予防として認可されています。

一方、シングリックスは帯状疱疹を予防するために独自に新しく開発されたワクチンで、サブユニットワクチンという種類のものです。
ウイルス表面タンパクの一部を抗原とした組換えワクチンで、生ワクチンではありません。
実は平成30年3月の院内報に記載しています。
また、2015年には97%という高い発症予防を可能とした新たなVZV(水痘・帯状疱疹)成分ワクチンが開発されています。
帯状疱疹予防ワクチンShingrixで、まだ一般使用はできませんが、今後このワクチン導入が帯状疱疹の診療を大きく変える可能性があります。
かなり期待ができそうなワクチンですが、普及するまではまだ時間がかかりそうです。
「疲れないようにして免疫力を落とさないようにする必要がありますね。」と書いていました。
ワクチンがあるのは知っていたのですが、昨年1月から日本でも販売されていたことは知りませんでした。
輸入本数が安定しなかったため、積極的に広報しなかったそうです。

しかし、帯状疱疹ワクチンのテレビCMが出ました。
私はあまりテレビを見ないので、CMが流れていることを知らず、患者さん数人から教えて頂きました。早速、グラクソ・スミスクラインに連絡して、接種できるようにしました。

ビケン製の水痘生ワクチンとシングリックスの違いを書きます。

・シングリックスのほうが独自に開発されたこともあり、高価。
当院では、ビケン製水痘生ワクチンは一回接種で7700円。
シングリックスは一回21500円で、2か月おいて2回接種となっています。

・予防効果はシングリックスのほうが高い
シングリックスは免疫がさがった人にも接種できる(慎重に接種する必要はあります)

帯状疱疹ワクチンの効果

従来のビケン水痘生ワクチンの場合
ある調査では、同ワクチンにより帯状疱疹の発生率が51.3%減少、帯状疱疹後神経痛の発生率も66.5%減りました。帯状疱疹の重症度も61.1%低下したと報告されています。
しかし、帯状疱疹予防効果は接種後3~11年で予防効果が減弱すると報告している論文もあり、ずっと効果が続くわけでない点に注意が必要です。

シングリックスの効果
シングリックスは従来のビケン水痘ワクチンに比べて帯状疱疹を予防する効果が高く、50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%の発症予防効果が認められています。
また、発症予防効果が少なくとも9年間たっても認められています。
帯状疱疹を絶対に予防したいと考えるなら、高価ではありますがシングリックス「少し心配だけど、そこまでお金はかけたくない」と考えるなら「従来の帯状疱疹ワクチン」になります。

帯状疱疹ワクチンの対象者は?

・従来の帯状疱疹ワクチンの場合
50歳以上の方が原則対象になります。
(任意接種であり、1回接種です)
過去に帯状疱疹にかかっていても接種できます。
免疫機能が落ちていると判断されれば、接種できません。
妊娠中もダメです。

・シングリックスの場合
接種対象年齢は、従来の帯状疱疹ワクチンと同じく50歳以上となります。
過去に帯状疱疹にかかっていても接種できます。
発熱のある方、急性疾患にかかっている方は接種できません。

帯状疱疹ワクチンの副反応

・従来のビケン水痘生ワクチンの場合
ワクチン接種による疼痛や腫れなどの一般的な副反応以外に、水痘ワクチンに特異的な副反応としては、接種後1-3週間後に発熱や、2-3%に全身性の水痘様発疹がみられることがあります。

・シングリックスの場合
シングリックス接種後7日間に起こった主な副反応としては、注射部位の痛み78% 、赤み38% 腫れ26%という結果になっています。
全身性の副反応では筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%、胃腸症状13%です。
注射部位の痛みが多いようです。

帯状疱疹が予防できる時代になってきました。
皆様もご検討ください。
帯状疱疹になったら、痛いです。

 

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★インフルエンザの予防接種しています★
昨年は無料でしたが、今年は忠岡町在住の65歳以上の方は1000円の費用負担で接種します。
一般の方は11月より接種開始。費用は3500円です。一回接種でお願いします。

★年末・年始休暇のお知らせ★
年末は12月29日(水)まで診療します。
12月30日(木)~1月3日(月)まで休診させていただきます。
1月4日(火曜日)から通常診療となります。

ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします