2023年 6月 No.211

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

梅雨の時期です。
ジメジメ、ムシムシしています。
今年の近畿地方は5月29日 に梅雨入りしました。
平年より8日早く、昨年より 16日早い発表でした。
近畿地方で5月中に梅雨入り となるのは、2013年の5月 27日以来、10年ぶりのこと です。

梅雨入りから4日後の6月2日金曜日は、大雨。
川が氾濫し、洪水被害が出たところもありました。
泉州地域においても、大和川の水域が危険域まであ がり、南海電車は運行できなくなりました。
かなりの帰宅難民が出た模様。大津川も危ないとこ ろまで水位は上がっていました。
当院は昼からの訪問診療を早く切り上げ、予約の方 に連絡して、夜の診察を休診としました。

しかし、大雨・洪水の対策は考えておかなければい けませんね。

梅雨の中休みの日は、真夏日になることも少なくな いです。
熱中症対策を十分にしておかないといけません。
毎年書いていますが、家の中では室温の目安は28 度以内。
エアコンを使用して快適に過ごすようにしてくださ い。

直射日光が当たる屋外にいないといけない人は、日陰ができる休憩場所を整備して、氷や水などで身体 を適度に冷やすことのできるように。
服装は風通しのよいものを。
軽い運動などして暑さに慣れる「暑熱順化」をしま しょう。
汗をかいたら水分・塩分補給もお忘れなく。

食中毒に対する注意も必要。
6月は一年のうちで一番食中毒が起こりやすくなる 時期です。
湿度や気温が高くなる梅雨時期は、細菌が増殖しや すいため、細菌性の食中毒の発生件数が増える傾向 にあります。
「付けない」 「増やさない」 「やっつける」が食中 毒の予防三原則とされています。
付けない、では手と調理器具をいつも清潔にしてお くことが大事。
増やさない、では食品は素早く調理、早めに食べる ことがポイントになります。
やっつける、では中までしっかり加熱殺菌すること が必要です。
湿気と気温が高い梅雨どきの6月。
食中毒予防の三原則を徹底し、健康に留意して過ごしていきましょう。

虫刺され対策も必要です。
人類一番の外敵、蚊。
刺されないように対処してください。
もう一つ、紫外線対策もお忘れなく。

鼻でコロナ感染、脳炎に・後遺症との関連を研究

コロナ感染症の方、現在も散見します。
新型コロナでは感染後に症状が長引く後遺症として 頭痛や疲労感のほか、集中力や記憶力が低下する「 ブレインフォグ」などの脳神経症状が報告されてい ます。発症の仕組みは分かっていません。

慈恵会医大チームはウイルス表面にある突起状のス パイクタンパク質をマウスの鼻に入れて感染させる と、脳でウイルスが増殖していないのにもかかわら ず、脳で炎症が起き、マウスに倦怠感やうつなどの 症状が出ました。
症状が出たマウスの脳を詳しく調べると、炎症を抑 える働きがある神経伝達物質のアセチルコリンが通常より少ないことがわかりました。
アセチルコリンを増やす働きがある認知症薬「アリ セプト」を投与すると、症状が改善したとのことで す。
現在コロナ後遺症患者を対象に、アリセプトの効果 を調べる治験を実施中。
結果が楽しみです。

脳動脈瘤発生に重要な体細胞遺伝子変異を発見

理化学研究所神経動態医科学連携研究チームの国際 共同研究グループは、ヒトの脳動脈瘤検体から脳動 脈瘤の発生に重要な体細胞遺伝子変異を同定し、遺 伝子導入によるマウス脳動脈瘤新生・抑制モデルを 初めて樹立しました。

今回このグループは、外科手術時に摘出された脳動脈瘤の遺伝子を解析し、最も頻度の高かった「血小板由来成長因子受容体β(PDGFRβ)」の遺伝子変異をマウスに導入し、実際に脳動脈瘤が確認しま した。

その動脈瘤化をチロシンキナーゼ阻害剤(腎がんの 治療薬・スニチニブ)の全身投与で抑制できることも証明しました。
遺伝子変異のある人にこの薬を処方すると、脳動脈瘤形成が予防できるかもしれません。
素晴らしい研究結果です。

本研究成果は、開頭手術か血管内カテーテル治療し かない脳動脈瘤治療の現状に、薬物療法という第三の選択肢の可能性を開くと期待できます。

興味は、一度出来た脳動脈瘤がスニチニブを服用す ることより、無くなるのかどうか?形は変わらなく ても、動脈瘤破裂の頻度が少なくなるのか?です。
現在研究中と思います。
いい結果を期待したいです。

亜鉛について

ミネラル・電解質シリーズ。
今回は亜鉛についてです。元素記号Zn。
ミネラルとは生体を構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称で、無機質ともいいます。ミネラルは体内で合成できないため食物として摂る必要があります。
亜鉛もミネラルのひとつです。

亜鉛は成人の体内に約2g含まれます。
成人ではそのほとんどは筋肉と骨中に含まれますが、皮膚、肝臓、膵臓、前立腺などの多くの臓器に存在し、さまざまな酵素の構成要素となっています。

健康維持を担う重要な存在でありながら、体内で作り出す事が出来ない「必須微量ミネラル」です。
亜鉛を貯蔵しておくところも無いので、日々の食事やサプリメントで摂取していく必要があります。
亜鉛は数百におよぶ酵素たんぱく質の構成要素としてさまざまな生体内の反応に関与しています。
アミノ酸からのたんぱく質の再合成、DNAの合成にも必要なので、胎児や乳児の発育や生命維持に非常に重要な役割を果たしているほか、骨の成長や肝臓、腎臓、インスリンを作るすい臓、精子を作っている睾丸など、新しい細胞が作られる組織や器官では必須のミネラルです。

また、体の細胞にダメージを与える活性酸素を除去する酵素の構成成分であるほか、味覚を感じる味蕾細胞や免疫反応にも関与しています。

食物から摂取した亜鉛は、十二指腸や空腸(小腸)で吸収され、アルブミンと結合し、門脈を経て肝臓に運ばれます。
その吸収量は30%前後とされています。
同時に摂取した、銅、鉄の影響を受けます。
銅、鉄を多量に摂取した場合、亜鉛の吸収は阻害されます。
逆にサプリメントなどで多量の亜鉛を継続的に摂取した場合、鉄欠乏症、銅欠乏症の原因にもなりますので、注意が必要です。

亜鉛の吸収量は、摂取量や一緒に存在する他の成分により変動しますが、一般的には約30%と推定されています。
植物性食品に多く含まれる食物繊維やフィチン酸(穀類、豆類に多い)、コーヒーやアルコールなどは、亜鉛の吸収を妨げます。
逆に吸収を促進するのが肉類やビタミンCです。

摂取した亜鉛の大半は糞便中(亜鉛単体として5~10mg/日)に排泄されます。
それらは未吸収の亜鉛と、胆汁、膵液、腸粘膜細胞由来の内因性の亜鉛から成ります。
腸管に分泌された亜鉛の一部は、腸管から再吸収されます。
尿への排泄は少なく、尿中排泄量は健常人で0.5mg/日程度です。
アルコールの摂取により亜鉛の排出量が増加します。

亜鉛を多く含む食品・食べ物

亜鉛を多く含む食品には魚介類、肉類、藻類、野菜類、豆類、種実類があります。
何といっても牡蠣が有名で、100gあたり14.5㎎と亜鉛が多く含まれます。
うなぎの蒲焼100g(1串)には2.7㎎、豚・肝臓生100gあたり6.9㎎と魚介類や肉類に亜鉛が多く含まれています。
多く含まれる食品をイラストであげています。

亜鉛が多い食べ物

亜鉛の1日の摂取基準

日本人の食事摂取基準(2020年版)では1日の摂取の推奨量は18~74歳の男性で11㎎、75歳以上の男性で10㎎、18歳以上の女性で8㎎となっています。

また、通常の食事による亜鉛の過剰摂取の可能性は低いですが、亜鉛の過剰摂取は銅欠乏、貧血、胃の不調など様々な健康被害が生じることが知られているため、耐容上限量は18~29歳の男性で40㎎、30~64歳の男性で45㎎、65歳以上の男性で40㎎、18~74歳の女性で35㎎、75歳以上の女性で30㎎と設定されています。
令和元年国民健康・栄養調査における食品群別摂取量は8.4㎎で、食品群別に摂取量の内訳をみると、穀類からの摂取量が最も多く、次いで肉類、魚介類でした。

低亜鉛血症

血清亜鉛濃度は当院の基準では80-130μg/mlです。
血清亜鉛値は早朝空腹時に測定することが望ましいとされています。日内変動があるからです。
血中アルカリホスファターゼ値は亜鉛値と相関して低値を示し、亜鉛欠乏の指標として有用であることが知られています。
亜鉛が不足すると、たんぱく質やDNAの合成がうまく行えなくなり、成長障害が起こります。
また、亜鉛は味を感じる味蕾細胞の産生に必須であるため、亜鉛不足になると味を感じにくくなる味覚障害になる可能性があります。

亜鉛不足により、貧血、食欲不振、皮膚炎、生殖機能の低下、慢性下痢、脱毛、免疫力低下、低アルブミン血症、神経感覚障害、認知機能障害などのさまざまな症状が現れます。

亜鉛不足の原因

  1. 摂取不足
    摂取する亜鉛の量が絶対的に足りない。
    近年若い世代での食生活の乱れによる亜鉛欠乏により、味覚障害を訴える人が増えてきています。
     
  2. 吸収不全
    食事等により摂取した亜鉛がきちんと吸収されない。
    吸収を阻害する食品と一緒に食べている。
    腸の障害による亜鉛吸収障害の場合があります。
     
  3. 需要増大
    必要とされる亜鉛量が多くなっているのに、摂取量が足りない。妊娠、授乳など。
     
  4. 排泄増加
    便、汗等から過剰に排泄される。
    スポーツをする人にもみられます。

医療現場でよく見るのが、口から食べられない人に対する、経腸栄養・高カロリー輸液施行中の方の低亜鉛血症です。
肝疾患、腎不全、褥瘡、炎症性腸疾患などに合併して、低亜鉛状態が引き起こされることもあります。
当院では血清亜鉛は一般検査項目の中に入っておらず、主に味覚障害を訴える方に亜鉛の検査を追加しています。

低亜鉛血症が判明した場合、基礎疾患がある場合はその治療。
食生活が原因と思われる場合はまず食事療法。
上述した亜鉛含有量の多い食品を積極的に摂取するように指導します。
重症の場合、食事療法が奏功しない場合、薬剤で亜鉛を補充します。

従来から亜鉛製剤としては、ポラプレジンク(プロマック)と酢酸亜鉛(ノベルジン)が販売されていたものの、プロマックは胃潰瘍、ノベルジンはWilson病のみが保険適用で、低亜鉛血症には保険適応がありませんでした。
2017年3月にノベルジンの適用拡大が承認され、「低亜鉛血症」の疾患名で保険での処方が可能になりました。
胃潰瘍治療剤であるプロマックRD錠75mgは、1日量である2錠150mgに、亜鉛が34mg含まれています。
ノベルジンは亜鉛製剤ですので25㎎錠、50㎎錠に、それぞれ亜鉛25㎎、50㎎含まれています。

亜鉛投与中は定期的に血清中の亜鉛、銅、鉄濃度を測定し、血清亜鉛値が高くなれば減量・中止します。
亜鉛の長期経口投与は銅や鉄の腸管での吸収を阻害する可能性があり、銅欠乏や鉄欠乏がみられた場合は、亜鉛製剤の減量や中止、または銅や鉄の補充を行います。

亜鉛製剤投与後、味覚障害の効果を問診します。食欲が出てきた、味覚が戻ったとあればいいのですが、亜鉛濃度が正常に復帰したにも関わらず、味覚障害を訴える方には他の検査が必要になる場合があります。
亜鉛欠乏以外の味覚障害の原因で多いのは薬剤性です。
原因となる薬剤には抗腫瘍薬、利尿薬、降圧薬、抗うつ薬などさまざまな薬剤が含まれます。

薬剤により亜鉛の吸収が阻害されることもあります。
特に高齢者は全身的な合併症が多く多剤を併用しているため、薬剤性の味覚障害をきたしえます。
そのほかには心因性(ストレス含む)、全身疾患性(鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏、シェーグレン症候群、糖尿病、腎疾患、消化管疾患、肝疾患など)、舌口腔疾患、感冒後・コロナ感染症後、頭部外傷・手術後、放射線照射後、医原性(中耳手術後)などの原因が挙げられます。
耳鼻科受診をお勧めしたケースもあります。
精査した後も味覚障害の原因の不明な場合は特発性(原因不明)として、柴朴湯、小柴胡湯、黄連解毒湯、補中益気湯などの漢方薬を処方することがあります。

亜鉛過剰症

亜鉛の過剰摂取および長期的な摂取は健康に悪い影響があります。
亜鉛サプリメントの不適切な利用や、日常的に高濃度の亜鉛を摂取により、銅の吸収阻害がおこります。
亜鉛、銅は同じ吸収経路をたどり、拮抗(互いに効果を打ち消しあうようにはたらく事)する性質があります。

つまり、血液中に亜鉛が多くある環境では、銅の吸収が抑制され、銅が多くある環境では亜鉛の吸収が抑制されます。
アンチエイジングクリニックなどでは、亜鉛、銅の摂取比率は10:1が好ましいと言われています。
銅欠乏症の症状は、貧血、骨異常、毛髪異常、白血球減少、好中球減少、心血管系や神経系の異常、成長障害などのおそれがあります。
また、亜鉛過剰により鉄の吸収阻害がおこることもあり、貧血の原因にもなります。

以上、亜鉛について書いてみました。
実は亜鉛は最近髪や肌の健康維持、男性機能障害、ストレス軽減やうつ予防、糖尿病に対するサプリメントとして、人知れず飲んでいる方が多いと聞きます。
私は今回亜鉛を調べてみて、亜鉛製剤服用中の方に血性銅・血性鉄の同時測定をしていませんでした。
今後は気をつけて診ていきたいと思います。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★診療受付時間について★

予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。
発熱・咳・風邪症状などがある方も上記受付時間内に電話ください。

★休診について★

8月15日から8月19日まで
夏季休暇とさせていただきます。8月21日・月曜日より通常診療になります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。