2023年10月 No.215

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

10月も終わりに近づいてきました。
朝冷え込み、昼まあまあ暑く、夜はまた冷え込み、寒暖差の大きい日が多いです。
体調には充分ご留意ください。
ここにきて急に冬の様相を呈してきました。
秋が短かいのかなと感じます。今年もあと2か月。
本当に時の経つのは早いです。

令和5年度インフルエンザ予防接種しています。
新型コロナワクチンの接種もしています。
ワクチンの種類は、オミクロン株の派生型「BB1.5」に対応するものです。現在接種費用は無料です。
無料期間は2024年3月末までの予定です。
※新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種可能です。

米モデルナは10月4日、新型コロナウイルスとインフルエンザの混合ワクチンの臨床試験で、安全性と効果が確認できたとする中間報告を発表しました。
年内にも最終段階の治験を始め、2025年の承認取得を目指します。

今年のノーベル賞を獲得したメッセンジャーRNA(mRNA)技術を使ったモデルナのコロナ・インフル混合ワクチン候補「mRNA-1083」と既存のインフルワクチンをそれぞれ接種し、免疫反応などを比べた試験です。
その結果、混合ワクチンを接種したグループで、インフルエンザに対し既存のインフルワクチンと同等か、それ以上の予防効果が期待できる免疫反応が確認されました。
副作用の発生率や症例は、これまでに実用化したモデルナ製のコロナワクチンと変わりませんでした。
コロナとインフルの混合ワクチンは、冬季に流行しやすい2種類の呼吸器系感染症の予防が1度の接種で済む利点があります。
患者や医療関係者の負担軽減に加え、インフルとコロナ両方の接種率の引き上げにつながるとの期待もあり、製薬会社の間で開発競争が激しくなっています。
mRNA技術を使った混合ワクチンはモデルナの他に米ファイザーと独ビオンテックも開発を手掛けています。

ノーベル生理学・医学賞:2023年のノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした、ハンガリー出身でアメリカのペンシルベニア大学の研究者、カタリン・カリコ氏と、同じくペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏の2人を選ばれました。
カリコ氏らは人工的に合成した遺伝物質のメッセンジャーRNA=mRNAを医薬品として使うための基礎となる方法を開発しました。

ノーベル賞の選考委員会は授賞理由について「2人の発見は、2020年初頭に始まったパンデミックで新型コロナウイルスに対して効果的なmRNAワクチンの開発に不可欠だった」としています。

mRNAにはたんぱく質を作るための設計図にあたる情報が含まれています。
これを人工的に設計し、狙ったたんぱく質が作られるようにして体内で機能するようにすれば医薬品として使うことができると期待されていました。
しかし、mRNAは、ヒトに投与すると異物として認識されて炎症反応が起きときには細胞が死んでしまうこともありました。
医薬品に使うのは難しいのが課題でした。
mRNAを治療に使いたいと考えていたカリコ氏は、1990年代後半、当時同じペンシルベニア大学で免疫学が専門のドリュー・ワイスマン教授と出会い、共同で研究を始めます。
2人は、細胞の中にある「tRNA」と呼ばれる別のRNAは炎症反応を起こさないことに注目。
mRNAを構成する物質の1つ「ウリジン」を、tRNAでは一般的な「シュードウリジン」に置き換えると炎症反応が抑えられることを突き止め、2005年に論文を発表しました。
シュードは偽の、という意味です。さらに2008年には、特定のシュードウリジンに置き換えることで、目的とするたんぱく質が作られる効率が劇的に上がることも明らかにしました。
カリコ氏は当時の発見について、「シュードウリジンにすれば免疫反応を抑えられるとわかり、次の疑問はたんぱく質を作れるかどうかでした。
そして、10倍のたんぱく質が作れることがわかり、『すごい!なぜこんなに優れているの?』と自分でも感じました。幸せな瞬間でした」と語っています。

mRNAワクチンはウイルスの遺伝情報があれば製造できるため素早い対応が可能で、新型コロナのパンデミックでは1年足らずで開発に成功し、変異ウイルスに対応したワクチンも開発され、パンデミック対策の最も重要な要素の1つとなりました。
ファイザーやモデルナのワクチンで採用されています。

新型コロナウイルスの表面には「スパイク」と呼ばれる突起があり、ウイルスはここを足がかりとして細胞に感染します。
ワクチン接種によってヒトに投与されるmRNAにより私たちの体の中でウイルスのスパイクの部分だけが作られます。
するとスパイクに対する「抗体」と呼ばれる攻撃物質が大量に作られ、新型コロナウイルスが入ってきても、「抗体」がウイルスを攻撃し、感染そのものや発症、それに重症化を防ぐ効果があるのです。

今後この技術により様々なウィルスに対するmRNAワクチンが作成されることが期待できます。

腹水

最近腹水の管理をすることが多くなりました(主に在宅ですが)ので、調べてみました。
腹水貯留はお腹に水がたまった状態です。
もともとお腹の中には腸がスムーズに動くために50ml程度の腹水が存在しています。
しかしこの腹水が多くなり、外からわかるようになると腹水貯留といいます。
通常、腹水は腹膜などで産生され、同じく腹膜や血管で吸収されてバランスを取っています。

腹水の原因

腹水貯留は、腹水が過剰に産生される、腹水の吸収が妨げられる、いずれかあるいは両方の原因で発生します。
特に腹水が増加するときに関係しているのは血管内圧の上昇とアルブミンです。
ここでいう血管内圧とは普段腕で測定する血圧ではなく、特にお腹の中の血管の圧を意味します。
不要になった腹水は血管に引き込んで排出されていますが、お腹の中の血管の内圧が高いとそれ以上の液体を引き込めなくなり腹水の吸収ができなくなります。
さらに圧が高いことで逆に血管から水がしみ出て腹水が増える原因にもなります。

腹水の排出がうまくできないもう1つの原因がアルブミンの減少です。
アルブミンは蛋白質の1つです。
アルブミンは血管の中の水分量を保ったり、余分な水分を血管に取り込む役割をしています。
このアルブミンが不足すると腹水を血管内に取り込めなくなり、場合によっては血管内の水分が血管の外に滲み出して腹水になるのです。

この両方の原因がおきる代表の疾患が肝硬変です。
肝臓は全身の血液を集めて栄養を蓄えたり解毒したりしていますが、肝臓が硬く変化してしまうと血液が肝臓に入りにくくなり、滞った血液がしみ出る形で腹水になります。
さらに肝硬変の場合は肝臓で作られるアルブミンの量が減るため血管内に水分がとどまりにくくなり、水分が血管からお腹にしみ出やすくなります。
腹水の原因で一番多いのは肝硬変です。

腹水の症状

腹水は少量であれば自覚症状はあまりみられません。
大量になるとお腹が膨らんで蛙腹になったり、おへそが飛び出ることもあります。
胃が圧迫されて食事がとれなくなったり吐き気が出ることもあります。
肺との境界である横隔膜を押し上げて肺が膨らみにくくなり息切れを感じることもあります。
足に行った血液が心臓に戻りにくくなるため足がむくむこともあります。

腹部膨満

腹部膨満の人を診た場合、これが腹水貯留によるものか、腸管のガスが原因でおきているものか、あるいは腫瘍、膀胱の緊満によりおこっているのか、または肥満による腹部の脂肪、妊娠などを鑑別する必要があります。

以前はいろんな身体所見の取り方で腹水、ガスを鑑別していましたが、今はまず腹部超音波検査です。
当院は大きなエコーの装置はありませんが、ポータブルエコーで腹水なのか腸管のガスなのか、腹部腫瘍なのか、膀胱が緊満しているのかある程度の区別ができます。
妊娠、脂肪についてもわかります。

腸管のガス貯留の場合は、立位腹部単純レントゲンを撮って腸閉塞になっていないかどうかを観察します。
腸閉塞の場合、特有のガス所見・ニボー(鏡面像)が見られます。
これが観察された場合は一度は浣腸でガスが出ないかどうかを確認して、出なければ食べるわけにはいかないので、絶食・点滴のために病院に紹介します。
痛がる腸閉塞は危険な場合があるので、救急車で病院受診します。
腸閉塞の所見のない腹部膨満は、便秘薬、腸蠕動改善剤などの薬剤を処方します。

腹部腫瘍の場合はCT検査が有用なので、病院に行って検査してもらいます。
尿閉で膀胱が緊満している場合、尿道バルーンカテーテルで膀胱の中の尿を体外に排出。
当院の場合はバルーンカテーテルを留置したまま、病院の泌尿器科を受診していただきます。

腹部膨満の原因が腹水貯留であったことが初めて分かった場合

まず、胸腹部レントゲン、心電図検査、検尿、アルブミン、肝機能腎機能を含む血液検査、心不全マーカー、腫瘍マーカーなど一般診療所でできる検査をします。
下肢の浮腫もチェックします。
肝機能が悪くなった場合の腹水が一番多いと書きましたが、他に心疾患・心不全、腎疾患・ネフローゼ、低アルブミン血症、腹膜炎などの原因疾患があります。
急がない場合は、この検査をみて原因を推定します。

腹部CTは是非しておきたい検査です。

腹水を採取して、腹水の性状による原因の鑑別をする場合もあります。
一般診療所外来ではちょっとしにくいので、病院でしてもらうことが多いですが。
腹水の蛋白質がどれくらい含まれているかによって滲出(しんしゅつ)液と漏出(ろうしゅつ)液に分類されます。

滲出液蛋白質の多い液体です。

漏出液蛋白質の少ない液体です。

滲出液は主に炎症が原因です。
細菌性腹膜炎、癌性腹膜炎、急性膵炎などが原因となります。

漏出液は主に血管内圧の上昇やアルブミン不足が原因で、肝硬変、門脈圧亢進、うっ血性心不全、ネフローゼなどがあります。

蛋白以外にも、腹水を採取したら、色や濁り、血液・細菌・結核菌・癌細胞の有無などを調べます。

原因別腹水の治療

肝硬変の腹水治療

1.安静にして横になっている時間を増やすことで、肝硬変の人の場合は肝臓に血液が入り込みやすくなり腹水の産生が減ります。
また腎臓に血液が届きやすくなり余分な水分を尿として排出しやすくなります。

2.塩分制限:塩分は体に水分をためやすくなり、利尿剤を使用していても効きにくくなってしまうため制限が必要です。
低ナトリウムう血症があれば、摂取する水分量も制限されることがあります。

3.利尿剤・スピロノラクトンの投与カリウムが上昇することがあるので、注意が必要

3.ループ利尿剤,サイアザイド系利尿剤を加える

4.腹水穿刺を行う1日2-3L程度抜くことが可能。
アルブミン投与の併用が安全です。
しかし、アルブミンの点滴は保険上使用日数に制限があります。
腹腔穿刺は利尿剤よりも副作用(低Na血症などの電解質異常,脳症,腎機能低下)が少ないとされています。

5.腹水濾過濃縮再静注法(CART)
腹水を濾過濃縮して有用なタンパク成分を回収する治療法です。
たまった腹水をバッグに取り出し、その後、濾過器を用いて細菌や癌細胞等を除去した後、濃縮器で除水を行い、アルブミン等の有用な物質を濃縮して再び体内に戻す治療法です。

6.腹腔静脈シャント シャントとは「短絡」のことで、腹腔内と静脈を直接つなぐ短絡をつくる治療です。
その短絡により腹水を血管内に流入させます。
内科的な治療で改善しない腹水を、静脈系血管に誘導するためのカテーテルを留置する手術治療です。
腹水がたまっている腹腔内と、鎖骨下静脈という鎖骨付近の静脈をカテーテルでつなぎます。

腹膜炎の腹水治療

原因疾患の治療が優先されます。
細菌性腹膜炎では抗生剤投与、感染の病巣がある場合は外科的切除結核性腹膜炎の場合、抗結核薬での治療。
膵炎の場合も病態に応じた治療(詳細は略します)が必要です。

腎不全、ネフローゼの場合
塩分制限、病態に応じたステロイド、免疫抑制剤治療がされます。

心不全
塩分制限、利尿剤、強心剤などが使用されます。

癌性腹膜炎・悪性腹水

前腹水患者の10%が悪性腹水と報告されています。
原因病態の頻度は腹膜播種53%、肝転移13%、腹膜播種+肝転移13%、リンパ管閉塞による乳び腹水が6.7%と報告されています。

利尿剤、塩分制限は肝硬変の方よりは有効性が低い印象です。

過剰な輸液により腹水が増悪する場合があり、逆に輸液量を減量することにより腹水が減少する場合もあります。
個々の症例に合わせた適切な輸液療法をする必要があります。

腹水穿刺は、腹部膨満を訴える場合することが多いです。
一回あたりの排液時間と排液量に関しては標準的な方法はありません。
一回5リットルまでは血圧低下はおこらなかったという報告もありましたが、ちょっと怖いなという印象です。
頻回の穿刺に伴う苦痛、合併症を避ける目的でカテーテル留置をすることもあります。
患者さんの病態に応じたフレキシブルな対応が必要ということですね。

今回は腹水について書きました。
腹水、腹部膨満を見たら病院との連携が必要な場合が多いです。
その上でご希望があれば、当院でも腹水管理はさせていただきます。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

★年末・年始休暇のお知らせ★

年末は12月28日(木)まで診療します。
12月29日(金)~1月3日(水)まで休診させていただきます。
1月4日(水)から通常診療となります。 
また、1月6日(土)は府中病院の緩和ケア研修会にファシリテーターとして参加するため休診となります。
ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。

★診療受付時間について★

予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。
発熱・咳・風邪症状などがある方は上記受付時間内に先にお電話ください。