2024年 3月 No.220

ホームドクター通信

当院からのお知らせ

3月も後半になってきました。
ここのところTシャツで過ごせるような暖かい日があるかと思えば、真冬のような寒い日があります。
皆さま、体調管理には充分ご留意ください。
3月20日に開花が予想されていた桜も寒さのせいで遅れ、大阪では3月27日開花予想、4月2日満開予想、見ごろが4月1日から4月8日頃とされています。今年は入学式の桜は大丈夫そうです。

麻疹(はしか)の流行

今月1日にはアラブ首長国連邦から帰国した大阪府の男性がはしかに感染していることが分かり、これまでにこの男性を含め、同じ飛行機に乗っていた男女合わせて8人で感染が確認されています。
東京都は、麻疹に罹患した人が利用した新幹線や飲食店の具体的な情報を公開し、同じ場所にいた人に対し、体調に異変があった場合は事前に連絡したうえで公共交通機関を使わずに医療機関を受診するよう呼びかけています。
麻疹は感染力が強く、飛沫や接触に加え同じ場所にいるだけでも感染してしまう空気感染もあります。
1972年(昭和47年)9月30日生まれまでの人は、定期接種が始まっておらず、ワクチンを一度も接種していない可能性があります。
ただ、定期接種が始まる前の世代では幼少期に感染していることが多く、ワクチンを接種していなくても抗体が十分あるケースも多いと言われています。
麻疹に免疫があるかどうか、抗体検査をしておくのもいいと思います。
自費検査となり当院では4500円です。
しかし、現在麻疹のワクチンが品薄になっており、小児に優先して接種するよう厚生労働省が呼びかけている為、当院で麻疹の予防接種はちょっと難しいかもしれません。早く量産体制を期待したいです。

コロナ診療、公費負担なしに。

新型コロナ公費支援3月末で終了し、4月からは通常の医療体制へ移行します新型コロナへの対応をめぐっては、感染症法上の位置づけが「5類」となった去年5月以降も、厚生労働省は、治療薬や入院医療費など患者や医療機関への公費支援を一部継続していましたが、4月からは通常の医療体制に移行するとしてきました。、これによって、COVID-19に対し抗ウイルス薬が処方された場合は薬局での窓口負担も2万~3万円以上になる可能性があります。
公費負担では内服の抗ウィルス薬は3割負担で9000円でした。これでも、無料の頃と比べると、処方回数はぐっと減っていました。

食欲を抑制する肥満症新薬「ウゴービ」販売開始

約30年ぶりとなる肥満症患者への新薬が2月22日に販売開始されました。
デンマークの製薬会社ノボノルディスクファーマの『ウゴービ』で、GLP1作動薬と呼ばれる薬です。
GLP-1は、もともと私たちの体にあるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。
食事をして、消化管の中に食べ物が入ってくると、小腸からGLP-1が分泌され、膵臓に働きかけインスリン分泌促進させます。インスリンにより血糖が下がります。インスリンには糖分を脂肪として変換し、体に蓄積する作用があります。
インスリンの出すぎが肥満の原因と思っていました。しかし、GLP1作動薬には、脳や胃腸に作用し、食欲を抑制し、体重減少がもたらされる作用があります。このため、肥満症の薬として厚労省から承認され、保険適用されたのです。
日本ではBMI25以上を肥満としています。
一方、「肥満症」とは肥満に起因、関連する健康障害を有し、減量治療を必要とする状態のことです。
肥満は疾患ではありませんが、肥満症は疾患であり、医学的に治療が必要となります。
この薬は肥満症の方が適応です。
・BMIが35kg/m2以上・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する11の肥満関連疾患が肥満症診療ガイドラインに挙げられています。
1耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)2脂質異常症3高血圧4高尿酸血症・痛風5冠動脈疾患6脳梗塞・一過性脳虚血発作7非アルコール性脂肪性肝疾患8女性の肥満9閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群10変形性膝関節症11肥満関連腎臓病また、「ウゴービ」の使用には専門医の指導に基づく処方が必要です。
副作用には「吐き気」「下痢」「低血糖」「急性すい炎」などがあります。
当院の近隣の医療機関だと、市立岸和田市民病院、府中病院、和泉市立総合医療センターなどに専門医がおられますが、ウゴービを処方しているのかどうか、確認していないので不明です。上記に該当する患者さんが希望されたら、医療機関を探してみようと思います。

特集:急性硬膜下血腫

ドラゴンボール、Drスランプなどで一世を風靡した漫画家の鳥山明さんが逝去されました。

鳥山さんの死因となった急性硬膜下血腫は、主に頭に強い衝撃を受けることにより脳の血管が傷ついて出血し、脳を覆っている硬膜と脳の間に血だまりができた状態をいいます。

急性硬膜下血種では脳を圧迫するため意識障害、半身まひなどの症状を伴うことが多いと言われています。
脳の血管がもろくなっている高齢者に多く転倒、交通事故、格闘系スポーツ、けんかなどが契機となります。

2011年1月には俳優の細川俊之さんが自宅で転倒して頭を強打、22年10月にはザ・ドリフターズの仲本工事さんが交通事故で頭を強く打ち、ともに急性硬膜下血腫で亡くなっておられます。

元プロボクサーで俳優の赤井英和さんはボクシングの試合でKO負けを喫した際、立ち上がれなくなりました。
その後病院に搬送され、急性硬膜下血種で手術され、今尚お元気で活躍中です。
今回は硬膜下血種を取り上げます。

鳥山明さんを襲った急性硬膜下血種、高齢者診察で重要となる慢性硬膜下血種について記載します。
硬膜外血種もありますが、今回は触れません。

脳の実質はとても柔らかい組織です。
脳にはその人の重要な情報がぎっしりと詰まっていますが、破壊されると再生しませんので、頭蓋骨や髄膜により保護されています。
最も外側にあるのが頭蓋骨です。
その下に脳・脊髄を完全に包み込む3層の髄膜(硬膜、くも膜、軟膜)があります髄膜のうち、くも膜と軟膜の間(くも膜下腔)は、脳脊髄液(髄液)で満たされており、大脳はこの中に浮かんでいます。
脳脊髄液がクッションの役割を果たしており、外部から衝撃を受けてもショックが吸収され、脳が守られるシステムが作られているのです。

急性硬膜下血腫は
頭蓋骨の下にある硬膜(脳と脊髄を覆う膜の一つ)とくも膜の間に出血が起こり、そこに出血した血液が急速にたまることで、脳を強く圧迫する状態です。
あらゆる年齢層に起こりえますが、高齢者に多いのが特徴です。

急性硬膜下血腫の原因

ほとんどが頭部外傷によるものです。
脳の損傷が強くなくても頭部に大きな力がかかって脳の表面の血管が傷つき出血することで、急性硬膜下血腫をきたすものもあります。
架橋静脈や脳表動脈の破綻により硬膜下に血腫を作ります。
若い人の場合、スポーツ中の外傷によって起こることも多いです。
小児の場合は転倒や落下では滅多に起こらず、虐待などでこの急性硬膜下血腫になることが多くあります。
その場合虐待を隠すことから、処置が遅れることが多く、虐待による死因の1位となっています。
中には何も殴られたなどの衝撃がなくても、「揺さぶられっこ症候群」といって、2歳以下の小児を過度に揺すぶったことによって架橋静脈が破綻したり脳組織の損傷が生じ急性硬膜下血腫となる場合もあります。

症状

急性硬膜下血腫は、ほとんどの場合大脳の表面に起こります。
頭部外傷後から意識障害が50-60%に見られます。
急性硬膜下血腫の場合は、治療をしなければ意識障害は進行性です。
脳浮腫や腫脹の程度が強く、血腫の増大速度も急速です。
結果、脳ヘルニアを起こす頻度も多い疾患です。
脳ヘルニアを起こせば、瞳孔不同、除脳硬直、呼吸異常などの脳ヘルニア症状が出現します。
ただし、脳血管のみが傷つき、脳自体の損傷がない場合には、発症初期は意識障害がみられずに徐々に意識障害が出現してくることがあるので注意が必要です。

診断

頭部打撲、意識障害など症状があれば、単純CT検査をすぐします。
硬膜下血種は脳CT において、三日月型の血腫を形成することで知られています。
また硬膜下血腫は受傷部側だけでなく受傷部の反対側にも認めることがあります。

治療

外科的手術

手術適応は血腫の厚さや圧迫の程度、神経症状、その他の全身状態などから総合的に判断されます。
危険な切迫脳ヘルニアの状態ならば緊急で外科的手術が行われます。
そうでない場合は、数時間後に頭部CT検査で再検査され、そこで増大傾向にある場合は外科的手術になります。
外科的手術では、大きな開頭による血腫除去術が一般に行われ、血腫がゼリー状に凝固して脳の表面を覆った状態になるため、それを開頭術にて血腫を除去し、出血点の止血を行います。
頭蓋骨を全て元に戻さずに閉じ、脳の圧迫を防ぐ外減圧術を行うこともあります。
手術は術後は脳圧コントロールをはじめとした神経集中治療が継続されます。
手術例での死亡率は40~60%と高く、たとえ救命できたとしても、重篤な神経後遺症を残すことが多くみられます。

保存的治療

意識があり、手術で血腫を取り除かなくても回復が見込める場合には保存療法が行われます。
意識がはっきりしていて血腫が少量の場合には血腫が自然に吸収されることを見込み、経過をみることもあります。
慢性硬膜下血腫に移行する場合もあるので、定期的なCT検査が必要です。

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫は、比較的軽微な頭部外傷、2週間から3ヶ月程度の時期に、急性硬膜下血腫と同じ部位に緩徐にじわじわと血液が貯留する疾患です。
治る認知症の代表でもあります。
高齢男性に多く見られるとされていますが(男女比7:3)、若年女性や頭部外傷歴がない人にも発症する場合もあります。

症状について

血腫が大きくなり脳を圧迫することで、なんとなくぼーっとしている、意欲の低下、物忘れ、性格の変化、反応の低下など認知症によく似た症状が現れることがあり、頭痛、歩きにくさ、片方の手足に力が入らない(麻痺)などさまざまな症状をきたします。
慢性硬膜下血腫の診断について年齢、生活歴、病歴、症状などから慢性硬膜下血腫が疑われた場合、まずは頭部CT画像検査を行うことが大事です。
頭部CT画像では急性硬膜下血腫同様、血種は三日月状に描出されます。
両側発症もめずらしくありません。

慢性硬膜下血腫の治療について

症状が出現している例については手術が行われます。
外科的治療の基本は穿頭ドレナージ術です。
これは比較的短時間で終了する手術法で、まず局所麻酔下に頭の皮膚を3cmくらい切開して頭蓋骨に1cmほどの穴を開け、その穴からチューブを血腫腔内に挿入し、血腫を除去します。
血種があらかた排出されたら、生理食塩水で洗浄します。
その後、管を入れたまま傷を閉じ、およそ1日、そのままの状態で残った血腫を流出させた後に、CT撮影にて血腫が排除されているのを確認し、チューブは抜去します。
この手術を行なうことで症状が改善し、術後約1週間で抜糸を行い退院可能となることが多いです。
経過の良い人は、術後2-3日で退院し、抜糸は外来で行うことも可能です。
ただし、10%程度に術後の再発がみられ血腫が再び増大した場合には再度手術を行なう必要があります。
血液をさらさらにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を飲んでいる人は一般的に再発しやすいとされています。
再手術を要する場合もあります。

急性・慢性の硬膜下血腫につき、概説しました。
いずれも頭部外傷が原因のことが多く、その中でも一番多いのは転倒によるものです。
特に高齢者の方は家の中を見回し、電線コードや座布団など、転倒しそうなものがないか気を付けてみてください。

かかりつけ患者さん募集中

最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。

そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。

当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。

以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。

編集後記

全額公費負担の新型コロナワクチン接種は、令和6年3月31日をもって終了いたします。

今年の秋くらいからインフルエンザと同じ様に、コロナワクチン接種の案内があると思いますが、
まだ今のところ何も決まっていないようです。

★診療受付時間について★

予約なしの方の受付は午前診11:30 午後診19:30までとさせていただきます。
必ず受付時間までに受付をお済ませください。

発熱・咳・風邪症状などがある方は、 市販のキットでコロナ抗原検査しておいてください。

できる方だけで結構です。できない方は当院で検査します。