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ホームドクター通信
2005年10月 No.4
◆開院5年目

 平成12年10月1日に開院しましたので、この10月で5年が経過したことになります。
最初は何をしていいのかわかりませんでしたが、電子カルテを導入してISO9001の取得を始めるころから次第に当院の方向性が見えてきました。今後、地域のかかりつけ医として、信頼される診療所を目指しますのでよろしくお願いします。
 
 インフルエンザ予防接種の予約を10月17日より受け付けします。
昨年はインフルエンザが流行しました。ワクチンを2回も受けたのに、2回別の型のインフルエンザにかかってしまったという方もおられましたが、やはりワクチンはしておいたほうがいいと思います(院長もしています)。下記に詳細を記載しました。詳しくはスタッフにお問い合わせください。
 
 朝夕少し肌寒い季節になってきました。季節の変わり目で体調を崩しやすい方も多いと思われます。次号ではかぜとインフルエンザについて解説します。今月号にのせようかと思いましたが、ヘリコバクターピロリの研究がノーベル賞を取りましたので、今回はその話題を取り上げました。


◆インフルエンザ予防接種予約受付中

10月17日よりインフルエンザ予防接種の予約を受け付けいたします。
午前はお昼12時から、午後は夕方5時30分からとなっています。
料金は大人1回2500円、小学生以下は2000円。
忠岡町在住で65歳以上の方は1000円で1回接種できます。





◆特集:ヘリコバクターピロリ


常識を覆す大発見!

 今年のノーベル医学・生理学賞はヘリコバクターピロリを発見したオーストラリアのウォレン博士とマーシャル教授に授与されました。

 医師の間では、胃の中には細菌は住めないというのが常識でした。細菌が住みつこうとしても、胃酸があるので住めるわけはないと思っていたのです。しかし、オーストラリア王立パース病院の病理医だったウォレン博士は、胃の中に生息する小さな細菌を発見、同病院の研修医だったマーシャル氏と共同して1982年に菌の培養に成功しました。さらにマーシャル氏は1984年に自らを実験台としてピロリ菌を飲み込み、数日後に胃の組織を取ったところ、急性胃炎が証明され、ピロリ菌の病原性が確認されたのです。まさに常識を覆す大発見でした。
 

 ヘリコバクターピロリは、べん毛を持つらせん状の菌で、ヘリコプターに似ていることから、このようなかわいい名前がつけられました。日本人に多い胃腸の病気(胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃ガン)などの原因のひとつとされています。今まで胃潰瘍を繰り返す方は、ストレスを受けやすい人、胃の弱い人と思われていましたが、ピロリ菌が原因であることが多かったのです。

 ヘリコバクターピロリの感染率は先進国と発展途上国でかなり違っています。
日本の場合その中間であり、年齢と共に感染率が高くなっています。ヘリコバクターピロリは日本人の10代で18.6%、20代で25%、30代で42%40歳以上では約60〜80% の胃の中に住んでいると言われています。日本人に胃がんが多いのも関係しているのかもしれません。



どうやって胃に入ってくるの?

 ピロリは、胃の中にいる時はらせん状ですが、生育条件が悪くなると球状に変化して、一種の冬眠状態となって生き延びます。熱にも弱く、酸素があると死んでしまうので、食べ物ではなくおそらく水などに潜み人の口から入り、胃にたどり着いたとき元の形に戻り活動するのであろう、と考えられています。

 日本人は年齢が高い人の場合、半数以上に胃の中に住んでいることがわかっております。しかし、菌の種類もいろいろあるらしく、菌を持っている人すべてが潰瘍などの病気にはなりません。



どうやって調べるの?

 ヘリコバクターピロリに感染している全ての人に、胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの病気が 起こるわけではありません。ほとんどの人にはなんの症状もなく、ヘリコバクターピロリが胃にいるのに気づかず過ごしています。
一方、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者さんで特に再発を繰り返す人や、直りにくい人は医療機関で ヘリコバクターピロリの存在を疑われ検査を受けることとなります。医療保険の適応となっており、当院でも検査できます。



内視鏡を使う検査

 内視鏡検査(いわゆる胃カメラ)は、潰瘍や胃炎などの病気があるかどうかを直接観察して調べる と同時に、胃粘膜を少し採取し組織を調べる検査です。経験のある人も多いでしょうが、最近の内視鏡検査は以前に比べファイバースコープも細くなり、かなり負担なく行える検査になっています。この時採取した組織でヘリコバクターピロリを調べます。



内視鏡を用いない検査

 内視鏡を用いない検査ではまだまだ欠点も多いのですが、やはり内視鏡を飲まずに済むというメリットが大きく開発が進んでいます。

1.血液検査

 血液をとってヘリコバクターピロリに対する血清抗体を測定する方法です。最も簡単で手軽に検査ができます。残念ながら除菌の判定ができないことがネックのようです。

2.尿素呼気試験
  
 この方法は、特殊な試薬を服用し、吐く息(呼気)を採取して二酸化炭素を調べる方法です。 かなり手軽な方法で、今後検討が進めば検査の主流になる可能性も持っています。除菌判定に最もすぐれた方法で、除菌後の検査のスタンダードとなっています。


3.尿中抗体検査、便中抗原検査

 その名のとおり尿や便を調べるだけでヘリコバクターピロリの存在がわかるキットが色々開発されてきています。



どうやって治療するの?

 現在のところ医療保険適応になっているのは胃潰瘍・十二指腸潰瘍のある場合だけです。治療の前には内視鏡検査が必要、ということになっています。ヘリコバクターピロリ菌による胃疾患と診断された場合、このピロリ菌をやっつける(除菌する)内服薬をつかい治療していきます。 一般的に3種類の内服薬を1週間患者さんに飲んでもらい、除菌につとめております。
 今後研究がすすむにつれ、ヘリコバクターと胃がんとの関係が明らかにされていくものと思われます。胃の痛みが頻繁に起こる方は一度胃の内視鏡をして、潰瘍とヘリコバクターについて調べてみてはいかがでしょうか。




◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの? かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

だんじりも終わり、随分と涼しくなってまいりました。

体調を崩しやすい時期なのでみなさんもご注意ください。

皆様の励ましもあり、順調に10月号を発行することができました。この調子で“月刊”をめざして頑張ります。