ホームドクター通信
2010年8月 No.57

◆お知らせ


残暑お見舞い申し上げます。

8月後半ですが、まだまだ暑い日が続きます。今年は特に暑いようで、東太平洋の赤道付近で海水の温度が低下するラニーニャ現象が原因だそうです。大阪でも連日の真夏日・猛暑日、熱帯夜が続いています。


消防庁の8月17日の発表によりますと、熱中症による救急搬送者数が、5月31日から8月15日までの間で3万1579人になったことが判明。病院へ搬送直後に死亡した人は132人に達したそうです。
7月は統計を取り始めた2008年以降、救急搬送者や死亡者が最悪となり、8月も増え続けています(2007年の死亡者は923件でした)。

同庁は「残暑が厳しく、搬送人数は多い。引き続き十分に水分を補給するなどして注意してほしい」と呼び掛けています。
熱中症による死亡者数がこの15年間で最も多かったのは2007年でした。

全国の死者923人の4分の3を65歳以上の高齢者が占めていました。発症した場所は屋外と屋内がほぼ半々だったとのこと。女性の高齢者に限ってみると、50%以上が自宅の居室で倒れており、室内だからといっても決して安心はできないということです。水分補給は水よりも電解質の入っているスポーツ飲料が適しています。

自作も可能。一番簡単なのは水1リットルに食塩を1〜2g入れるもの。更に部屋の温度をこまめに測定して、暑ければエアコンを使用しましょう。この暑さは9月10月も続くそうです。引き続き熱中症にはご注意を。


8月16日から18日まで夏季休暇を頂いて、3年連続で生まれ故郷の三重県熊野市での花火を見に行ってきました。天候にも恵まれ(暑かったですが)、海上や世界遺産の鬼が城から打ち上げられる花火ショーを楽しんできました。また来年も17日だそうで、その前後に夏季休暇を頂くことになると思います。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。


当院の裏にある療養通所介護アネトスでの機能訓練室で、25人から30人の方の席を用意することが可能です。
このスペースを利用して、当院患者さん向けの教室や、一般の住民向けに医療情報の提供をしようか、と考えています。日時としては土曜日の午後2時位を予定しています。

参加ご希望の方、もしこのような話が聞きたいなどのご要望がありましたら、スタッフまでお伝えください。また決まりましたらこの院内報でもお知らせします。






◆アネトス通信


まだまだ残暑が厳しいです。体調管理に気をつけたいですね。

7月28日に利用者4人と外食(回転寿司)に行ってきました!
施設での昼食はその日の体調に合わせたメニューや持ち込み弁当の方、
胃ろうからの注入食などですが、看護師が同行することで一般の人の中で
自然と楽しい会食となりました。

その日の様子は3台の車いすを移送しつつ、何らかの医療処置(血糖測定やインスリン注射、酸素療法、胃ろうからの注入)の必要な4人の利用者の方で個別に担当者を決めての対応でした。食欲がなかった利用者が、寿司を8皿も召し上がられ、長期間外食に出かけることがなかった利用者が社会に触れることで、活き活きとされている姿がみられました。

高齢者を対象としているディサービスでの外食は珍しくないように思いますが、療養通所介護では当施設が初めてではないでしょうか。企画にあたり利用者からの『行こうよ』の声に背中を押され、実現することができたように思います。
これからも、利用者の声に耳を傾け良い看護・介護に繋げたいと思います。






◆特集:食道がんについて


サザンオールスターズの桑田佳祐さんが食道がんになったことを発表されました。
8月後半の現在、既に手術も終了して退院されているようでなりよりです。
同年代なので、衝撃のベストテンデビュー以来(http://bit.ly/aBpU4t)ずっとフォローしていました。思い出はサザンとともに。復帰を心から祈っています。

1月に食道がんを公表し、治療に専念していた指揮者の小澤征爾さんが音楽活動を再開したというニュースもありました。それで食道がんを取り上げることにしました。



食道は口・のどから、食物が胃に送り込まれるときに通過する管状の器官のことです。物の消化は行われません。成人では長さは約25〜30cmです。

わが国で1年間に食道がんにかかる人はおよそ1万人程度と言われています。
これは胃がんの10分の1の発生頻度です。男性に多く、女性の6倍となっています。60歳代の方が最も多く、患者さんの平均年令は約64歳です。


原因は明らかではありません。しかし、飲酒と喫煙の両方の嗜好を持っておられる方に高頻度に認められます。酒、タバコは食道がんの危険因子といえます。
昔は和歌山や奈良など熱い茶粥を食べる地域に食道がんが多いといわれていましたが、最近はあまり言われなくなっています。
また咽頭、喉頭、舌などの口からのどまでのがん(頭頸部がんといいます)と重複しやすいことが分ってきました。



食道がんの大きな特徴は、「転移」の早さです。
食道は、内壁が薄くリンパ管までの距離が近いため、がんがまだ小さいうちに他の器官に転移しやすいのです。


食道がんの症状は局所の進行状態によって異なってきます。表在がんのような比較的浅いがんでも、60%に軽いながらも食道に関連した症状があります。代表的なものは、軽度のつかえる感じ、食道に何かある感じ、食べたり飲んだりする時のしみる感じで、これらが初期症状といえます。がんが進行してきますと、食道が狭くなり、肉などの固形物がつかえるようになります。ものを食べた時に胸の痛みを覚える人もいます。やがてつかえる回数もふえ、柔らかなもの、流動物まで通りが悪くなってきます。最後には水もだ液も通らなくなり、もどすようになります。
このような食道特有な症状のほかに、声のかすれ、体重減少、頸部リンパ節の腫れがでてくる場合もあります。


食道がんの診断にはX線検査と内視鏡検査が行なわれます。X線検査は進行状況と病変の位置を見るのには適していますが、早期の食道がんは凹凸が少ないため、造影剤がひっかかりにくく、非常に見つけにくいです。
内視鏡検査が表面的で小さながんの診断に適しています。


治療法はがんが出来る場所と進行度により変わります。早期で見つかれば、内視鏡のみで切除することが可能です。
一番できることが多い胸部中部食道の場合は頸部と胸部と腹部の3部位に渡る手術が必要で、なかなか大きな長時間にわたる手術で、術後管理も肺炎との戦いで大変でした。今は胸腔鏡による胸部の手術も行われていますし、麻酔も大分進歩したので、侵襲という意味では軽くなってきました。

30年くらい前までは治療成績がわるかったのですが、今では早期発見と手術・放射線・抗がん剤治療が発達してきましたので、よくなってきました。



登場!早期発見の切り札

怖い食道がんも、早期発見できれば治療の際の負担も軽くすみます。

最新の内視鏡では特殊な青い光を使って、がん細胞の中の血管をはっきりと見て取り、早期がんを見つけることができます。

しかし、これはまだ大きな病院でしか検査ができません。我々の施設を含む多くの施設で行われているのが内視鏡検査のときにヨード液を使う方法。ヨード液を食道に吹き付けると、食道のグリコーゲンと反応して茶色に染まりますが、がん細胞はグリコーゲンをすでに消費してしまっているため、色がつかずピンク色になります。
見つけにくい早期がんでもくっきりと浮かび上がります。
最終的には疑わしいところから小片をつまんで、がん細胞の有無を顕微鏡で調べます(これを生検といいます)。



また、最近のトピックスとして酒を飲むと顔が赤くなる人、あるいは初めて飲んだ頃に赤くなった人は注意が必要ということが言われてきています。

このいわゆる「アルコール紅潮反応」は、アルデヒド・デヒドロゲナーゼ2(ALDH2)と呼ばれるアルコール分解酵素の遺伝的な欠乏が原因です。日本人の約4割が、このALDH2の活性を欠損しているといいます。

飲酒すると、アルコールは最初にアセトアルデヒドに分解されます。アセトアルデヒドは DNAにダメージを引き起こして、ガン促進効果を持っている化学物質です。ALDH2はアセトアルデヒドを無毒な酢酸塩に分解する主な酵素なのです。

口から入ったアルコールは、まず、胃内でアセトアルデヒドに分解されます。
ALDH活性が十分にあれば、アセトアルデヒドも胃で分解されますが、ALDH活性が不十分な場合には、このアセトアルデヒドが小腸を経由して体内に吸収されます。そして、肺で気化した後、呼気として出てきます。

呼気中のアセトアルデヒドは、口腔内の唾液などに取り込まれ、再度、体内に入り、食道などに付着します。アセトアルデヒドは、気化しやすいが粘着性が高いという性質を持つため、肺、口腔内、食道に蓄積しやすく、それらの部位のがん発生原因になると考えられています。

変異をもつ人々が、もし1週間あたりビール大瓶11本または日本酒11合に相当するアルコールを摂取した場合は、飲酒をしない人々と比べて、食道ガンのリスクが約80倍に増加するといいます。
ALDH2欠乏の患者は適度の量のアルコールを飲んでも食道ガンのリスクが増加すること、「アルコール紅潮反応」はALDH2欠乏の生体標識であることを知ってもらうことは重要です。

酒をのんで顔が赤くなる人(更にタバコを吸う人)は食道がん検診を早めに受けられることをお勧めします。
当院は鼻から入れる内視鏡で検査しています。
ご希望の方は診察時にお申し出いただくか、待合室でスタッフにお問い合わせください。











◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

ツィッター始めました。

医療情報などを中心に日頃の行動、思いついたことなどつぶやいています。

とはいってもまだ初心者で、フォローしている人はいませんし、フォロワーを募集する活動もしていません。

利用されている方はお気軽にフォローしてください。

IDは@tmajimaです。