ホームドクター通信
2010年9月 No.58

◆お知らせ


朝夕・めっきり涼しくなってきました。日の落ちるのも早いです。

今年の夏はとても暑い夏でした。記録的な暑さで7月16日〜9月7日までの54日連続、日本各地で猛暑日を観測したそうです。
また、気象庁は同年9月1日、この猛暑を30年に1度の異常気象と認定しました。総務省消防庁の調べによると今期(5月から9月)熱中症で救急搬送されたのは5万5474人で、うち初診時の死亡者が171人・熱中症による死亡者は推定ですが、500人を超えたようです。これを書いているのが9月25日で、もう大丈夫かな、とは思いますが、引き続き脱水症にはご注意ください。


昨年の今頃は新型インフルエンザ騒動に振り回されていました。

ワクチン接種も優先順位があって大変でしたね。自分の孫を先に接種した開業医が非難されたり。しかし、御多分にもれずワクチンが余ってしまいました。国の指導でひきとってもらいましたが、あの騒ぎは一体何だったのか。今でも疑問に思っています。

今年の配布ワクチンは新型インフルエンザを含んでいます。1回3500円、2回目は2500円、忠岡町在住の65歳以上の方は1000円、10月1日から接種を開始します。
詳しくは受付にお問い合わせください。


タバコが10月1日から値上げされます。
これを機に禁煙を決意される方も多いように感じます。当院ではニコチンパッチと飲み薬が保険適用です。喫煙はニコチン依存症という病気です。ニコチンパッチや飲み薬は治療薬で、楽に禁煙することができます。
是非この機会に禁煙をご検討ください。


10月23日土曜日職員研修のため休診します。御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。


おかげさまで当院も開院して10年を迎えることができました。
これからも皆様のご意見をお聞きしつつ、ご利用していただける方の健康管理・満足度の向上に努めていきたいと思います。






◆アネトス通信

最近、町のあちこちで近づく秋祭りを感じています。

8月21日(土)にアネトスで熱中症対策の勉強会が地域のケアマネジャーを
対象に行われました。OS-1という大塚製薬の飲む点滴(飲料水とゼリー)の
紹介と院長による【高齢者脱水の基礎知識と熱中症予防】という講演がありました。

暑い中たくさんの方が参加され、熱中症に対する関心の高さを痛感しました。
アネトスの利用者や介護をしているご家族によい情報と思ったのは、

@部屋の環境を手軽に測定できるグッズ(携帯型熱中症計)
A白湯1リットルに食塩1〜2gとはちみつを少し混ぜて作る補水液を
  約1時間おきに100ミリリットル体内に取り入れることが望ましい

など、介護者が迷うことなく具体的(数値)に判断できることが紹介された事でした。


これからも地域の関連関係者と連携を図り、ケアに生かせる情報を提供していきますね。

 詳しくは、環境省の熱中症環境保健マニュアル2009
    http://www.env.go.jp/chemi/heat_stroke/manual/0hyoushi.pdf  ご参照下さい。






◆特集:認知症について


9月21日は「世界アルツハイマーデー」に指定されています。
1994年のこの日、国際アルツハイマー病協会(ADI)の国際会議で、患者やその家族への支援を進めること等を謳った宣言が採択されました。

当院にもポスターを掲示しました。ちびまる子ちゃんのおじいさんが認知症のキャラクターなのかな、と。
「単なるもの忘れと、認知症は違います」という大きな活字が目に入ります。ちょっとハッとするコピーです。その下にもう少し小さな活字で「食べたメニューを思い出せないのは、もの忘れ。食べたこと自体を覚えていないのは、認知症の疑いがあります」と説明されています。ご丁寧に「気になったら相談だね」という言葉が添えられていました。朝刊と一緒に折り込まれた広告を見た人も多いのでは。ということで今回は認知症について少し説明します。


認知症とは

認知機能とは脳のさまざまな働きのうち、記憶する、判断する、計画するなど、人の知的な機能全体を示す言葉です。普段私たちが何らかの行動をとるときは、これらのさまざまな機能が協調して働き遂行されます。

このような認知機能が何らかの原因により障害され、次の3つの条件が満たされた場合に認知症と診断されます。

1.明らかな記憶障害がある
2.記憶障害以外の認知機能の障害がある
3.日常生活に支障がある

認知症を早期に発見するには認知症のもの忘れに気づくこと、もの忘れ以外の症状に気がつくことが大事です。年をとると誰しももの忘れをするようになります。しかし、年齢相応の物忘れと年相応を超えた病的なもの忘れがあるのです。

健常な人でも、人の名前や本のタイトルなどを忘れてしまうことはよくあります。この程度のもの忘れは多くが年相応のもの忘れと判断されます。もの忘れについては昔は忘れなかったのに、と過去の自分と比べることが多いのですが、10年前、20年前と比べたら誰しも記憶力は衰えています。

もの忘れを年相応かどうか判断するのは過去の自分と比較するのではなく、周囲の同年代の人と比べるようにします。人と会って話した内容の一部や外出して立ち寄った先のことを忘れるのは健常なお年寄りでもよく見られますが、人に会ったこと自体を忘れる、外出したことそのものを忘れるなどがたびたび見られたら注意が必要です。



早めの受診をお勧めします。

最初の受診は心療内科・神経内科でなくて当院のような一般診療所受診で結構かと思います。
診療所では認知症を簡易的に計測する物忘れ問診検査、血液検査などをします。更に脳に器質的な異常がないかを脳のCTかMRIなどの画像検査で確かめます(画像検査は当院では病院にお願いしています)。



認知症ではもの忘れ以外にも次のような症状があります。

 1.段取りよく物事を行えない:今までできていた料理ができないなど家事に支障が出たりします。

 2.意欲の低下:仕事や趣味に対して、興味・やる気が薄れ無気力になり、新聞やテレビも見なくなります。

 3.イライラ・不安・うつ状態:誤りを指摘されてイライラしたり、不安に思う、落ち込んでうつ状態になるなど、精神的な変化がみられることもあります。


認知症は原因によってアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症に分けられます。

アルツハイマー病は脳にアミロイドβ蛋白という分解されにくい蛋白が沈着してきます。この蛋白は数10年かけて沈着してくるものと考えられています。

脳の中ではまず記憶や言葉の理解を司る側頭葉に沈着します。そのため、最初の症状として物忘れ(記憶障害)が現れます。その後と空間認識を司る頭頂葉、言語や実行機能、意欲などを司る前頭葉にも蛋白が沈着して、障害が広がっていきます。沈着した場合脳の委縮が見られることもあります。

血管性認知症は脳卒中によって脳の認知機能が損なわれる病態です。
脳の血管がつまる脳梗塞や脳の血管が破れる脳出血などの脳卒中を起こすと障害された脳の部位に応じて身体障害がでます。
脳卒中の部位により記憶の障害やその他の認知症状が現れることがあり、これが血管性認知症です。CT、MRIで確認されます。

現在、国内の認知症の患者数は約200万人といわれています。年齢によって増えてくる病気ですので、85歳以上では約4人に1人が認知症と診断されています。

認知症と診断されたら、アルツハイマーでは進行を抑える薬があります。

まだ使用できませんが、現在アミロイドに対する抗体薬を治験中とのことです。
血管性認知症の治療にはまず脳卒中の再発を予防することが大切です。

脳卒中の大きな原因が動脈硬化ですが、その危険因子として高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病があげられます。まずこれらをコントロールして、脳の血管が詰まりやすい場合は抗血栓薬などを使います。

また、頭をよく使うことが必要。回想療法、音楽療法、ペット療法、リクリエーション療法などがデイサービスなどで利用できます。いずれも楽しんですることが重要。

また、周囲の人が認知症になってしまったら、まず危険を回避する工夫をします。そのうえで怒ったり脅したりなどの人格否定はしないようにして、寄り添ってあげるようにサポートしてください。

認知症の方が利用できる介護保険の施設がありますので、担当ケアマネや当院に御相談ください。










◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

iPad、快適に使用中。

宮崎駿監督がiPad批判をしたとのことで、少しショックを受けています。

確かにiPadはcreativeなtoolにはなりにくいかも。

しかし、書籍・PDFファイルの閲覧、保存(ひいては書籍が処分できて本棚が整理できます)、
映画・ビデオの観賞には抜群のツールかな、と思います。