ホームドクター通信
2010年12月 No.61

◆お知らせ


年の瀬を迎えました。
一年を象徴する一文字が「暑」だったように、今年の夏は本当に暑く、熱中症の話題が多く聞かれました。
秋も遅く始まったような印象がありましたが、12 月の中旬過ぎよりぐっと冷え込み、クリスマスには雪もちらついていました。
年々・本当に一年が過ぎるのが早いと感じています。
皆様にとってはどんな1年だったでしょうか。
昨年政権交代がおこり、何か変革があるものと期待していましたが、なかなか何も変わらず。医療介護方面でも特に変革が起こったとは感じられません。もう少し待たないといけないのかも、と思いつつも早急に解決しないといけない問題も数多くありそうで。沖縄の基地とか、中国・北朝鮮問題、経済対策など、大変でしょうが、政府には舵取りを頑張ってもらわないと。
医療のニュースでは昨年は新型インフルエンザの流行が一番の話題でした。
今年はまだ爆発的な流行はこの地域ではみられていません。散発的に発症が報告されるのみです。しかし、これからまた寒い日が続きますので、どうぞご注意を。
強毒性のトリインフルエンザの流行も危惧されています。感染対策をお願いします。いつも繰り返しになりますが、まず手洗い、マスク、うがい。手についたウィルスが感染するのは意外に多いです。
咳くしゃみが出る場合は他の人への思いやりとして、咳エチケットをお忘れ無く。
外出時にはマスクを。咳くしゃみがでるときは、ティッシュで口と鼻を覆うよう気をつけてください。

インフルエンザ予防接種について


忠岡町の65 歳以上の方、接種は3月末までできます。
1回1000 円です。
その他の方の自費での接種はワクチンがある間受け付けます。
3月まではある予定です。ご希望の方は予約ください。
価格は1回3500 円で、2 回目は2500 円です。今年はワクチンの供給本数が潤沢で、昨年のような騒ぎになることはなさそうです。接種は予約制にしていますが、定期診察時の接種にも対応しています。詳しくは受付にお問い合わせ下さい。

禁煙治療


タバコの値上げを機に禁煙を決意される方が増え、メーカーが対応できず、禁煙補助薬が品薄になっていました。メーカー努力がようやく実り、禁煙する皆様に十分に禁煙補助薬を提供できることになりました。
1 月から当院では、通常通り医療保険で禁煙治療対応できます。喫煙はニコチン依存症という病気で、ニコチンパッチや飲み薬などの治療薬で、楽に禁煙することができます。ただし、禁煙しよう、という意志が大事です。喫煙しながら、禁煙補助薬を使用して、やめられたらいいな、ではなかなか禁煙できないようです。
タバコを吸われている方、是非この機会に禁煙をご検討下さい。

年末年始休暇のお知らせ


12 月30 日(木曜日)午後〜1月4日(火曜日)まで休診させていただきます。
12 月30 日午前中は診療しています。
1月5日(火曜日)から通常診療となります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
定期薬服用中の方は休み中に薬が無くなるということのないようお願いします。

◆アネトス通信


戴帽式を終えて私は、
初心を忘れず常に患者さん
のそばに寄り添う看護師に
なりたいです
今年も残り少なくなりました。
アネトスのスタッフに看護学生が1名います。
先日、ホテルレクアルスターアルザ泉大津で戴帽式が行なわれました。
戴帽式とは、看護学生にナースキャップを与え、看護師を目指すものとしての職業に対する意識を高め、またその責任の重さを自覚させるための儀式です。
式ではナイチンゲールの像から灯りを受け取り、キャンドルの明かりの中で誓詞を朗読していました。
私も十数年前に経験したあの日ことを思い出しながら、スタッフには「ここの看護婦さんは素敵」と言われるような、色んな意味での素敵な看護師になってほしいと思いました。
アネトスの未来の星は介護を学び、さらに看護を学び始めて、決意を話してくれました。

◆特集:長く続く咳


風邪かと思っていたけれども、咳が1ヶ月続くということで診療所を受診される方が多くなっています。
きっかけは風邪だったかもしれませんが、通常の風邪が1 ヶ月も続くことはまずありません。何らかの原因が潜んでいるものと考えます。
受診された場合、咳の性状(いつから起こっているのか・夜に多いのか、寝ている間も続くのか・持続性、痰が絡むか)、咽頭痛・胸痛などの他の症状、服用されている薬のチェックなどを問診でお聞きします。そのうえで診察、喘鳴があるか、呼吸音の低下・雑音などがないかをチェックします。
喘鳴があれば、気管支喘息を考え次の検査にうつります。
喘鳴がない場合、当院では胸部レントゲン、炎症反応の確認のための血液検査を行います。胸部レントゲンに何か異常があれば、それに対応する治療、次の検査(主に胸部CT)を考慮します。
今回は、長引く咳で喘鳴がなく、胸部レントゲンも正常、という場合のお話をします。
日本呼吸器学会から咳嗽に関するガイドラインという診断・治療指針が出ています。
このガイドラインに沿って(検査機器が十分ありませんので当院なりにアレンジして)診療しています。
このような病態(レントゲン異常なしで咳が続く)で多い疾患をあげて、説明します。
日本で多いとされているのは咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群、感冒後遷延性咳嗽、胃食道逆流症、です。

1.咳喘息
咳を唯一の症状とする喘息の1タイプ。喘鳴・呼吸困難はありませんが、喘息の前段階と考えられています。
病態は気管支の収縮ですので、気管支拡張剤が有効です。当院では主にホクナリンテープを使用して、その効果をみています。気管支拡張剤の吸入薬を併用する場合が多いです。
これで効果がなければ、ステロイド吸入剤を使用します。治療を中止すると約30%が気管支喘息に移行しますので、注意深い観察が必要となります。

2.アトピー咳嗽
何らかのアトピー素因・アレルギー体質があり、喉がイガイガするような掻痒感があり、痰を伴わない咳がでるという症状があります。
咳喘息と違って気管支拡張薬が全く無効です。痰を吸入を使って強制的に出して検査すると、アレルギーの証拠となる好酸球が増えているのが確認されます。
抗アレルギー剤が有効ですが、進んでしまった場合・これで軽快しない場合はステロイドの吸入薬を使用します。

3.副鼻腔気管支症候群
副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)と慢性下気道炎症が合併した状態。
痰を伴う咳が出ます。あとは副鼻腔炎の症状、鼻汁、後鼻漏(のどの奥を分泌物が落ちる)、咳払いなどがみられます。喀痰の中に炎症のサインである好中球が多くみられ、好酸球はありません。マクロライド系抗生剤(エリスロマイシン、クラリスロマイシンなど)が有効で、抗アレルギー剤は無効です。去痰剤が有効な場合も多いです。頭部のCT などで副鼻腔炎の存在を確認することもあります。痰が多い長引く咳は副鼻腔気管支症候群であることが多いとされています。

4.感冒後遷延性咳嗽
感冒が先行して、咳だけが続くという病態です。
普通のウィルスでは1カ月も咳が続くことはありません。しかし、百日咳、マイコプラズマ、クラミジアといった感染症では咳が長く続くときがあります。普通の感冒では喀痰の検査などはあまりしませんので、わからないことが多いです。
普通の風邪と思っていたらこのような感染症だった、特に百日咳が意外と多いことが知られています。
これらの感染症ではマクロライド系の抗生剤が有効です。その他、対症療法として、咳止めが処方されます。
他、通常の風邪のウィルス(ライノ、コロナ、パラインフルエンザ)、インフルエンザ、アデノウィルスでも免疫力が落ちているため咳が続くこともないことはありません。

5.胃食道逆流症
胃内容が食道に逆流することにより咳が引き起こされることがあります。
胸やけ、げっぷを伴うことが多いです。
逆流により下気道まで誤嚥される場合、逆流により上気道が刺激され、咳が出る場合、咳自体が胃逆流を引き起こし、増悪をくりかえす、などの病態が考えられています。原因疾患として、食道裂孔ヘルニアがある場合があります。治療は胃酸を抑える薬が有効で、今はプロトンポンプ阻害薬という薬を使います。

以上のように、長引く咳といっても病態は多様です。
胸部に異常のある咳も多いですし、忘れてはいけないのが、血圧を下げる薬の一部に咳を誘発する薬があるということ。
血圧の薬を服用されている方は一度チェックしてみてください。

専門科では気道過敏性の検査(気道刺激薬のアセチルコリンなどを少量から吸入して、肺機能検査の数値がどの程度の濃度で落ちるかをみる)、過敏性の検査(とうがらしの成分を少量から吸入してどの濃度で咳がでるかをみる)、喀痰の染色(好中球が多くでるか好酸球が多くでるかを確認)などが行われますが、我々のような一般の診療所では、上記疾患を念頭にいれての治療的診断(薬を使用してどれが有効かで疾患を判断する)が重要かと思っています。もちろん軽快しないときは専門科の受診をお勧めしています。
風邪のあと咳が続くときは市販薬に頼らず、一度受診してみてください。


◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

今年最後の院内報もぎりぎりの発行になってしまいました。
来年からは月初めの発行を目指します。
1ページ目にも書きましたが、12 月30 日(木曜日)午後〜1月4日(火曜日)まで休診させていただきます。30 日午前中は診療しています。1月5日(火曜日)から通常診療
となります。
それでは皆さん、よいお年を。