ホームドクター通信
2011年 1月 No.62

◆謹賀新年


明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
政治的状況、社会的状況に加え、国際情勢も混沌とする中での新年となりました。
少子高齢化がどんどん加速され、財源が無いなどの色々な理由で有効な政策の打てない政府では、将来の日本の医療・福祉がどうなるのか不安がつのります。
これから史上未経験の人口構成の社会を経験するわけですので、皆が安心してこの国で暮らせるような気概にあふれた政策を期待したいものです。

昨年当院も10 周年を迎えました。今年はホームページを充実させて、ブログ、ツィッター、フェースブックなど駆使しながら(いつも1カ月続かない)当院からの情報を発信させていきたいと考えています。

原稿執筆時、大寒も過ぎて1月末です。
この地域でも寒い日が続きますので、インフルエンザの発症が本格化しています。ほとんどがA型の新型インフルエンザのようです。強毒性のトリインフルエンザの流行も危惧されています。
今年はインフルエンザ用の点滴なども発売され、治療の選択肢も増えましたが、大事なのはやはり予防。感染対策をお願いします。
いつも繰り返しになりますが、まず手洗い、マスク、うがい。手についたウィルスが感染するのは意外に多いです。咳くしゃみが出る場合は他の人への思いやりとして、咳エチケットをお忘れ無く。
外出時にはマスクを。咳くしゃみがでるときは、ティッシュで口と鼻を覆うよう気をつけてください。

インフルエンザ予防接種について
忠岡町で65 歳以上の方の接種は3月末までできます。
1回1000 円です。その他の方の自費での接種はワクチンがある間受け付けます。3月まではある予定です。
ご希望の方は予約ください。価格は1回3500 円、2回目は2500 円です。今年はワクチンの供給本数が潤沢で、昨年のような騒ぎになることはなさそうです。
接種は予約制にしていますが、定期診察時の接種にも対応しています。詳しくは受付にお問い合わせ下さい。

公費負担の予防接種3種類が2月1日よりスタートします。泉大津医師会と忠岡町行政、保健センターの尽力により、新しく3種類の公費負担(対象者は無料)の予防接種が開始されます。
@子宮頸がん予防ワクチン サーバリックス
  対象者は中学1年から高校1年生の女子 3回接種
Aインフルエンザb型ワクチン ヒブ
  生後2カ月から4歳 3回接種
B肺炎球菌ワクチン プレベナー
  生後2カ月から4歳 3回接種
ヒブとプレベナーは初回接種が2カ月以上7カ月未満に接種となっています。
7カ月を過ぎると接種パターンが変わります。ヒブ、プレベナーは3種混合ワクチンとの同時接種も可能ですが、プレベナーは発熱が多い、と聞いています。
詳しくは保健センターまたは当院受付にお問い合わせください。

◆アネトス通信

新春のお慶びを申し上げます。
昨年は何かとご協力いただき、ありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年は感染性胃腸炎(ノロウイルス)の発生報告が、例年より早い11 月中旬から全国的に集団発生の報告件数が増加しているそうです。
ご病気の方や高齢者は重症化の恐れがあり、感染予防の徹底をアネトスでも図っていきたいと思います。ご家庭でも十分注意してください。
注意することはまずは手洗いです。
トイレの後、調理前、食事の前、外出から戻ったときなど、石鹸(液体が推奨されています)を使って流水でしっかり洗いましょう。
次に食事の調理方法で加熱が必要な食品はしっかり加熱しましょう。
嘔吐や便の処理は、水1リットルに対して家庭用塩素系漂白剤100ml(キャップ4杯)の消毒液を作り、マスクと手袋を用意して吐物の周囲から中心に向けて拭きます(吐物は乾燥するとノロウイルスは、空気中に浮遊します)。
トイレやドアノブ、電気のスイッチや水道の蛇口などは、水1リットルに対して家庭用塩素系漂白剤20ml(キャップ1 杯)で拭き掃除をしてください。

温暖化の加減でしょうか、温度差の激しい冬です。日頃からの体調管理が重要となりますね。

◆特集:胆石症について

1月17日に燃える闘魂・猪木、胆石にも打ち勝つ!緊急手術を乗り越え笑顔で退院会見、というニュースがありました。
その記事によると、猪木氏は1月6日、都内で新年のあいさつ周りをしている最中に腹痛を訴え、救急車で搬送。病院で検査を行うと、急性胆のう炎、胆管炎、胆のう結石症が判明。
翌7日に胆管内の結石を除去する手術を行うと、さらに13 日には全胆のう、胆のう内の結石を完全に取り除く手術も行った。術後は経過も良好で、16日に退院の運びとなった。
とのことです。
記者会見で猪木氏を苦しめた疾患に対しては、「異種格闘技戦ならぬ『石』格闘技戦。一番つらかった」、「元気だったら、胆石もできる」とジョークを交えたコメントの一方で、「今回はお迎えが来たのかな」と心境を吐露。日本でも有数の『痛みに強い人』が弱音を吐くほど、壮絶な痛みだったことが想像されます。

40 代の普段は元気な太り気味の女性が、天婦羅や中華料理などの脂っこい食事の後上腹部が痛くなり、冷や汗をかいて体を曲げてのたうちまわって苦しんでいる、私の胆石症発作のイメージです。
痛みは疝痛と呼ばれるかなり強い差し込むような痛み。尿路結石や陣痛・胃潰瘍などと比較される痛みです。
ある調査によると、胆石は健康診断などで偶然に発見されることも多く、おおむね成人の10 人に1人が胆石をもっていると言われます。しかし50 〜 70%の人は無症状です。
では、胆石症とはどういう病気なのでしょうか。石の出来方から説明します。

食物を消化吸収するのを助けるために消化液があります。唾液、膵液、胃液、胆汁、腸液などが相当します。そのうちの胆汁は肝臓で作られ、肝管・総胆管を通過して十二指腸に流入します。胆汁の中にはコレステロール、胆汁酸、ビリルビン、リン脂質、水などが含まれています。その胆汁を一時ためておくところが胆のうで総胆管から分岐しており、肝臓に付着する袋です。胆汁は胆のうで濃縮されます。胆のうは胃に食物が入ったという信号がくると収縮して、その濃縮した胆汁を十二指腸に送り込みます。十二指腸〜小腸で胆汁と食物は混和され、脂肪・蛋白質の吸収が行われます。胆汁の通過する肝管−胆管−胆のうを胆道といい、その胆道にできた結石を胆石と総称します。胆石による病気、状態が胆石症です。日本人は胆のう内結石が多く、約80%。胆管結石は20%、肝内結石は1 〜2%の割合となっています。
胆石の出来方は大きく分けて2つ。コレステロール結石とビリルビン結石にわかれます。
その混合して出来た石もあります。

コレステロール結石の出来方
胆汁の中のコレステロールは本来水にはとけないのですが、胆汁酸により水に溶けるようになります。胆汁中のコレステロールが高くなったり、胆汁酸が少なくなると、胆汁中のコレステロールが結晶化し、石が出来てしまいます。コレステロール結石です。胆のう結石に多いです。業界用語でコ系石などと言ったりします。

ビリルビン結石の出来方
細菌がもっている酵素により、胆汁中のビリルビンが遊離し、カルシウムと結合して出来ると考えられています。胆管結石に多く、こちらは業界用語でビ系石です。

このようにして出来た胆石ですが、全部が症状を起こすとは限りません。胆のうの中に結石が浮遊しているだけでは症状は起こらないのです。胆道の狭いところを通過するのに詰まってしまったときに症状がおこります。胆のう管という胆のうと総胆管をつなぐ細い管に詰まってしまった時、総胆管に引っかかってしまった時、十二指腸に入るところで詰まってしまったときなどに痛みが起こります。
痛みは疝痛発作という激しい主に右上腹部痛で、右の肩や背中に痛みが放散することもあります。しかし、疝痛発作のような激しい症状が無く、食後の上腹部痛や吐き気、食欲不振のみの場合もあり、「胃が悪い」や胃痙攣が起こったと自己判断している方も多くみられます。更に胆管に詰まった結石により、胆汁が胆管から十二指腸に出なくなる場合、胆汁からビリルビンという色素が血中に取り込まれ、黄疸をきたすこともあります。
危険なのは、胆石により詰まった胆管内に細菌が入って胆管炎をおこしてしまうことや、十二指腸の流出部(乳頭)にはまり込み、胆汁と膵液両方とも流れなくなることで膵炎をおこしてしまうことです。
胆管炎、膵炎の場合は緊急の処置を要します。
診断は問診である程度のあたりをつけ、血液検査で肝臓胆道系の酵素の上昇、炎症反応、腫瘍マーカーをチェックします。胆石が疑われるときはまず腹部超音波検査をします。当院でも腹痛が受診時に起こっており胆石が疑われる場合は、検査しています。腹痛が消失しており、じっくり調べてほしいときは病院に紹介して検査してもらっています。
健診などで見つかった無症状の胆のう結石は治療の必要はなく、経過をみます。
胆のうの壁が厚かったり、ポリープ、腫瘍が疑われるときは治療をする場合もあります。
症状がある、胆石を溶かす薬で様子を見る場合、衝撃波(ESWL)で粉砕を試みる場合がありますが、主な治療は胆のう摘出術です。
最近は腹腔鏡下胆のう摘出術が行われています。腹部を切開する手術に比べて術後の経過、痛みが全く違い楽です。
胆管結石の場合は無症状であっても摘出を考えます。口から胃にいれた内視鏡を十二指腸の胆汁がでてくる部位(乳頭といいます)まで進めて処置をします。処置の種類は乳頭の括約筋を切開して広げる方法、バルーンで乳頭を広げて石を出やすくする方法があります。
うまく摘出できないときは開腹での手術による胆管切開術が施行されます。腹腔鏡下胆管切開術はまだ標準手術にはなっていません。

疝痛発作があった場合は胃の痛みと自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
また超音波検査で自分が胆石をもっているのかどうかを検査してもらうのも有用です。

胆石発作を避けるには?
暴飲暴食、高脂肪食を控え規則正しい生活をする、適度な運動をするなどの生活習慣の改善が大切です。

◆かかりつけ患者さん募集中

 最近の医療は病気の診療だけではなく、病気の予防、早期発見、初期治療に重点が置かれています。
そのためには、「かかりつけ医」として日常的に気軽に診療や健康診断を受けることができる医院を目指すことが大切だと考えます。
当院では「かかりつけ患者」として下記に同意していただける方を募集しています。興味がございましたらスタッフまでお尋ねください。

何をしてくれるの?

かかりつけ患者になるには?

慢性疾患をお持ちで、月に一度は当院に定期的に受診される方のうち、下記の項目に同意していただける方です。
以上を納得され、書面にサインしていただける方を当院のかかりつけ患者として登録させていただきます。

現在のところ、何かあれば当院に受診される方、住民検診などを当院で受ける方はかかりつけ患者の範疇にはいれていません。風邪をひいたら、今回はあそこの診療所、次回は○○病院という方もご遠慮いただいています。

かかりつけ患者になって総合的に管理してほしいと思われた方がいらっしゃいましたらお気軽にスタッフまでお声をおかけ下さい。



◆編集後記

禁煙する皆様に十分に禁煙補助薬を提供できることになりました。
1月から当院では、通常通り医療保険で禁煙治療対応しております。喫煙はニコチン依存症という病気で、ニコチンパッチや飲み薬などの治療薬で、楽に禁煙することができます。ただし、禁煙しよう、という意志が大事です。喫煙しながら、禁煙補助薬を使用して、やめられたらいいな、ではなかなか禁煙できないようです。
タバコを吸われている方、是非この機会に禁煙をご検討下さい。