ホームドクター通信
2011年 9月 No.70

◆お知らせ

9月も後半にはいり、急に寒さを感じるようになってきました。
今年の夏は当初暑さが厳しかったのですが、昨年に比べて暑さの持続が弱いよう です。
昨年は夏が長く秋を感じる間もなく冬になってしまった印象を受けましたが、今 年は徐々に秋が深まってきている感じを受けることができます。

今年は3月の大震災あり、また9月には大型台風で奈良・和歌山に大きな被害がで たりして、自然の脅威を感じさせる一年です。
今年の私の熊野帰省は、十津川経由でした。
9月5日の台風12号で、8月に私が通った国道168号線が壊滅状態になって います。日本一長い路線バス(奈良交通の大和八木(奈良)〜新宮(和歌山)を 走る路線バス・所要時間6時間30分、走行距離168キロ)が通る道として有名でした。

実はこれが国道かと思えるほど道はかなり狭いです。特に狭いところでバスに遭 遇しようものなら、100mくらいバックせざるを得ないようなところもあります。
でも、切り立つ深緑の山々とエメラルドグリーンのダム湖が美しい関西の秘境十 津川を縦断するドライブウェイ(十津川町HPより)、現在観光客の受け入れ困難とのこと・残念です。
早く復旧されることを願ってやみません。
不謹慎ですが、もう少し道が広くなることも期待して。

平成12年10月1日に継承し、昨年開院10周年でした。今年は11年目。レントゲン 装置のデジタル化、予約システムの変更を考えています。幸い電子カルテが安定してい ますので助かっています。また月一回の院内報だけでなく、新しいメディア、ツィッ ター、フェースブックなどを利用した情報発信を考えているのですが、一人では なかなか実行できません。また誰か(プロの方かな?)の力を借りてでも、なん とか始めてみたいと考えているところです。
これからも皆様のご意見をお聞きしつつ、ご利用していただける方の健康管理・満足度の向上に努めていきたいと思います。

インフルエンザ予防接種しています

10月1日よりインフルエンザ予防接種を行います。
1回3500円、2回目は2500円、忠岡町在住の65歳以上の方は1000円です。
今年からWHO推奨を受けて、3歳以上13歳未満は成人量と同じ0.5mlの二回打ちに 変更になっています。13歳以上は0.5ml接種、一回または2回となっています。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないこと。 死亡者や重症者を出来る限り減らすことが期待されています。
ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。

ワクチンの接種を受けていても、日頃から手洗い・うがいをきちんと行い、流行時期は人ごみをさけて感染機会を減らすことはとても大事です。

子宮頸がんワクチン

子宮頸がんワクチン、高校2年女子の初回接種が9月30日までとなっています。
今までのサーバリックスに加え、コンジローマにも効果のあるガーダシルという 薬も使用できるようになっています。
サーバリックスで一例死亡例がでましたが、不整脈によるものであり、ワクチン 接種とは関係ないという結論になっています。
またお問い合わせください

◆アネトス通信

人間が生きていくための基本は食事です。食事の役割には、健康の維持増進のほかに、生きる楽しみ、社会性を保つ、治療の一環などがあります。
私たちの食事に対する生理的な要求として、栄養素の組み合わせがよい、消化・吸収がよい、便通がよい、噛む必要性が大きいなどがあります。また、心理的・精神的な要求には、安全性、美味しい、心の満足感などがあげられます。そのほかに社会的・文化・経済的要求として、仲間と一緒であること、安いこと、準備しやすいこと、手に入れやすいこと、伝統的な文化を育てるなどがあります。
利用者やご家族は食事のどの役割を重要と考えているのかは、食事療法に影響を与えます。私たち医療従事者や介護者は、利用者・ご家族の求める食事が個人差や環境要因が大きいことを理解して、個人のケアに繋げていかなくてはいけないと考えています。
食欲の秋です。日々の食事を考え直す機会になれば、嬉しく思います。
* 朝晩の冷え込みが激しくなっています、体調を崩さないよう気をつけたいですね。

◆肺癌について

今、日本人の3人に1人が癌で亡くなる時代。以前は胃癌が癌の死亡率でトップで したが、現在では肺癌が一番多くなっています。
その侮れない肺癌についてご紹介します。

肺は胸腔内にあり、心臓をはさんで左右2つあります。
呼吸器として、主に空気中から血液に酸素を送り込む役目をしています。
口・鼻から吸った空気はのどー気管ー気管支ー細気管支ー肺胞に送り 込まれます。
肺胞で酸素は赤血球内に取り込まれ、かわりに二酸化炭素を受け取 ります。
肺はこのガス交換といわれる機能をしていま す。

肺の中の気管・気管支・肺胞の細胞が正常の機能を失い、無秩序に増えることに より肺癌が発生します。癌は遺伝子の病気というのはわかっていますが、細胞が なぜ癌化するのはまだ十分にはわかっていません。
癌 は周囲の組織・器官を破壊して増殖し、多くの場合腫瘤を形成します。
できた場所にとどまってくれたらまだいいのですが、リンパ流・血流に乗り、 他の臓器に広 がって増殖します。これを転移といいます。肺癌は血流、リンパ 流が豊富なためか、遠隔転移、リンパ節転移を起こしやすい癌として知られてい ます。

肺癌の症状:咳・胸痛、喘鳴(呼吸時のゼーゼーという音)、息切れ、血痰、声 のかすれ、微熱、全身倦怠などが一般的な肺癌の症状です。肺癌に特徴的な症状 というのはあまりありません。初期は無 症状です。
健診や偶然撮った胸部レントゲンで発見されることが多いです。

胸部レントゲンで肺癌が疑われた場合、胸部CTで詳しい画像検査をします。
肺癌の存在診断に胸部CTは非常に有用で、自治体によって は肺癌検診を胸部CT でするところもあります。胸部レントゲンではわからない肺癌も胸部CTによって 発見されることがあり、治癒可能な早期肺癌の発見につながります。
40歳以上の喫煙者は肺癌検診のため、胸部CTを撮っておくことが勧めら れます。
並行して、癌かどうかあるいはどのタイプの肺癌なのかを調べるのに、喀痰の細 胞を集めて、顕微鏡で調べる検査も行われます。
痰が出ない場合、あるいは痰で診断が出来ない場合、気管支鏡が行われます。そ れでもわからない場合は、組織型を調べるのは治療方針決定に重要ですので、 経皮針生検、胸腔鏡下生検、開胸生検が行われることもあります。

肺癌の組織は、大きく扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌、小細胞癌に分類されます。
治療方法の観点からは、小細胞癌と非小細胞癌に分けられます。

肺癌が明らかになれば、肺癌がどの病期なのかを調べます。
1期から4期まで分けられており、1期は早期で肺に限局するとき、4期 は転移がある場合です。脳のCT/MRI,骨の検査、胸腹部CT、最近ではPET検査が行われ ます。癌の大きさ、周囲への浸潤、リンパ節転移、遠隔転移を評価します。

肺癌の組織検査、病期が明らかになれば、治療方法が 検討されます。
治療には手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子治療があります。
免疫療法、遺伝子療法、温熱療法などは肺癌に対して は研究段階ですので、 現在は手術、化学療法、放射線療法が単独あるいは組み合わされて行われています。
小細胞癌の場合は進行が早いので手術の対象にはなりにくいです。
非常に早期の場合のみ検討されますが、 小細胞癌とわかっている場合は先に化学療法を行うことも多いです。
非小細胞癌の場合、あまり進行していないもの、リンパ節転移のないものはまず 手術です。胸壁に浸潤している場合もリンパ節転移がなければ、手術の適応です。
リンパ節転移のある場合は個数、大きさにより手術を考えます。遠隔転移、癌性 胸水のある病期の場合は化学療法が選択されます。

手術は肺葉切除・周囲リンパ節摘出が基本ですが、片側肺を全部とるような手術 ・肺を部分切除する手術が選択されることもあります。最近では内視鏡を使った 手術もよくされており、侵襲が軽くすみ、術後が楽です。
化学療法は一般的に抗がん剤を組み合わせて行います。

イレッサという分子標的薬が特効薬として導入されましたが、肺の合併症のため問題となりました。
現在までわかっていることの要点をまとめると イレッサは日本人、タバコを吸わない人、腺癌の人に効果があり、このような人 はEGFR遺伝子に突然変異が起きていることが多いです。EGFR遺伝子に突然変異の ある人はイレッサが効きやすいとされています。
イレッサと似たタルセバ(Erlotinib)にも上記のことが ほぼ言えると考えられます
ちなみに当院ではタルセバの処方ができます。

最近はほとんどの場合、本人に病名、病期が告知されます。そのうえで一緒に治 療法を考えていくことになります。
また、痛みがある場合は、早くから痛みどめ(場合により医療用麻薬)が使用さ れます。

肺癌の原因

肺癌のリスクを考える上で喫煙が最も重要です。欧米ではタバコが肺癌の発生率 の90%以上とされていますが、日本では少し低く、男性で68%、女性では18%程度 と推定されています。自分が吸わなくても受動喫煙によっても肺癌のリスクは上 がると考えられます。タバコが全くなくなれば、肺癌は80%減ると考えられています。
フィルターは大きな粒子は除去しますが、発癌物質は除くことができず肺癌の予防にはなりません。
もちろん環境汚染等、タバコに関係のない原因で起きる肺癌もあります。
タバコを吸うと肺癌の危険性は増しますが、禁煙すると危険性の増大は止まります。
しかし、いったん変化した遺伝子はもとにもどらないので、肺癌になる危険性はゼロにはならず、
全くすったことのない人とくらべると危険性は高いままであとの人生を送ること になります。
特に青少年に喫煙をさせないことの重要性がここにあります。

一般に肺癌は40歳代後半から増加し、高齢者に多く発生します。
繰り返しになりますが、タバコを吸われている人は肺癌予防のためにも 禁煙を考えてください。
タバコを吸う40歳以上の人はレントゲン検査、CT検査、喀痰検査を 受けるようにしましょう。

◆編集後記

これを書いているのは実は8月31日です。
三振をしてもまだバッターボックスに立ってバットを一人で振っていると揶揄された管政権がようやく終焉を迎え、野田政権が誕生しました。
復興支援、医療介護対策、進展するよう期待しつつ見守りたいと思います。
当院からの情報、お知らせをメールで患者の皆様にお送りしようと考えています。
ご希望の方は info@majima-clinic.jp まで登録可能のメールをお送りください。また受付でも随時、皆様のメールアドレス(携帯でもPCでも)をお伺いしていきますので、当院からのお知らせを受け取ってもいい、という方は是非ご登録ください。