ホームドクター通信
2011年 12月 No.73

◆お知らせ

年の瀬を迎えました。
今年の一年を象徴する漢字は「絆」でした。
東日本大震災や台風被害で家族の大切さを感じ、支援の輪も広がったことに加え、女子サッカー・なでしこジャパンのチームワークも理由に挙がったそうです。
清水寺で特大の和紙に墨で書き上げた森貫主は「みなが手をひとつに携えて復興を重ねていこう。そんな願いを込めて書きました」と語っておられました。

今年も、12 月の中旬過ぎよりぐっと冷え込み、クリスマスは風が強く、とても厳しい一日でした。もうすぐ新年です。
年々・本当に一年が過ぎるのが早いと感じています。
皆様にとってはどんな1年だったでしょうか。

今年はまだインフルエンザの爆発的な流行はこの地域ではみられていません。散発的に発症が報告されるのみです。しかし、これからまた寒い日が続きますので、どうぞご注意を。
強毒性のトリインフルエンザの流行も危惧されています。感染対策をお願いします。
いつも繰り返しになりますが、まず手洗い、マスク、うがい。手についたウィルスが感染するのは意外に多いです。
咳くしゃみが出る場合は他の人への思いやりとして、咳エチケットをお忘れ無く。
外出時にはマスクを。咳くしゃみがでるときは、ティッシュで口と鼻を覆うよう気をつけてください。

インフルエンザ予防接種について(再掲)

10月1日よりインフルエンザ予防接種を行っています。
1回3500円、2回目は2500円、忠岡町在住の65歳以上の方は1000円です。
今年からWHO推奨を受けて、3歳以上13歳未満は成人量と同じ0.5mlの2回打ちに変更になっています。
13歳以上は0.5ml接種、1回または2回となっています。インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。
その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないこと。死亡者や重症者を出来る限り減らすことが期待されています。
ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。ワクチンの接種を受けていても、日頃から手洗い・うがいをきちんと行い、流行時期は人ごみをさけて感染機会を減らすことはとても大事です。
逆に、咳くしゃみが出る場合は咳エチケットをお忘れ無く。外出時にはマスクを。咳くしゃみがでるときは、ティッシュで口と鼻を覆うよう気をつけてください。

肺炎双球菌のワクチンのお知らせ

65歳以上の高齢者・基礎疾患があって抵抗力が落ちている場合は肺炎の原因微生物の約半数を占める肺炎球菌のワクチンの接種が勧められます。
ですが、現在メーカーより、品薄になっており、現在新しい接種予約はとらないよう推奨されています。東北3県の高齢者を優先的に接種するためです。
なので、接種はしばらくお待ちください。次期予算編成で、このワクチンが公費負担になることも検討されているそうです(決定事項ではありません)。
来年4月以降まで待つのが得策のようです。

診療手帳について

当院では、診察した患者さん宛てに診療内容を簡単に記録した診療手帳をお渡ししています。病院の先生からの評価がとても高いので、他院受診時は診療情報提供書とともに持って行っていただくよう、お願いしています。来年以降バージョンアップを検討しています。といいいますのは、東日本大震災などで、診療録が無くなってしまった方が、仮設診療所などいつもかかっていない他の医療機関を受診したときに、診療を担当する医師が一番知りたい情報は、今どのような薬を服用しているかと血液検査結果だそうです。いままで罹患した疾病などは患者本人からお聞きすることができます。病名もご本人が把握している場合が多いですが、その病気の重症度、進展具合は服用している薬から、医師であれば大体想像できます。また、どんな問題点を抱えているかは血液検査で大体わかります。当院の診療手帳は血液検査は貼付しておりますが、薬の情報がありませんでした。
処方箋で薬を処方されている方はお薬手帳を発行されている場合が多いです。薬局にお願いして、この情報を診療手帳に記載してもらうようにしようかと思っています。当院で薬を処方されている方には基本処方を手帖に添付しようと思います。これにより、当院の診療手帳を何かのときに持っておられると、他の医師の診療を受けやすくなると思います。もちろん、予約で当院から他院受診時は診療情報提供書は発行します。

今年度年末・年始休暇のお知らせ

12月30日(金曜日)〜1月3日(火曜日)まで休診させていただきます。
1月4日(水曜日)から通常診療となります。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。
定期薬服用中の方は休み中に薬が無くなるということのないようお願いします。

◆アネトス通信

 今年も、残すところあとわずかになりました。
  今月中頃より、急に寒さも厳しくなりましたが皆様体調の方は大丈夫でしょうか?
  日頃より、ご利用者様・ご家族様・地域住民の方々には、ご指導・ご協力を頂き、ありがとうございます。

 先日、アネトスでは4名のご利用者様にも参加して頂き、「地震」という内容で災害訓練を実施しました。
  今年3月には東日本大震災も発生したことから、職員も、より一層緊張感をもって取り組むことができました。その中で気づけた事は、ご利用者様の安全確保はもちろんの事、「広い視野をもって、的確な声かけをする」という事でした。
  これは、日々の利用者様へのケアにもつながっていると改めて感じました。

 また、職務の合間をみて、アネトス内の大掃除も少しずつですが進めています。
  アネトスでの心地よい時間を送って頂く為にも、今後も整理整頓を心がけ、清潔を保持していきます。

 今月号より担当が私になり、内容もまだまだと思いますが読んで頂き、ありがとうございました。
  今後、より良いアネトス通信を提供していきたいと思います。
アネトス通信担当の南です。

◆マイコプラズマ肺炎

今年の夏頃から、マイコプラズマ肺炎が流行しています。
厚生労働省によれば、11月中旬までの累計患者数は同省が統計を取り始めた'99年以降最多となります。11月には天皇陛下がこの肺炎のため、20日間ほど入院されました。現在公務に復帰されていますが、その前に孫である愛子様も同じマイコプラズマ肺炎に罹患されていたようです。今回はこのマイコプラズマについてお話します。

マイコプラズマ感染症とは?
マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を病原体とし、主に呼吸器症状を起こす感染症です。
簡単に言うと「咳の風邪-肺炎」というイメージです。
感染経路は、飛沫(ひまつ)感染、接触感染とされています。感染により抗体はできますが、生涯続く免疫ではないので全年齢層で感染のリスクがあります。国立感染症研究所が実施している感染症サーベイランスによれば、患者は幼児、学童、青年期に多く、1歳以下の乳児にはほとんどみられません。幼小児の咳の続く風邪は「RSウイルス」が多いですが、学童期以降はマイコプラズマが多いという印象があります。
また、流行に季節性はないとされています。
風邪との見分け方としては、乾いた激しい咳があり、夜寝ていても咳で目が覚める、熱があるにもかかわらず痰があまり出ないことなどがあげられます。
1〜4週間の潜伏期間の後(一般の風邪より長い)、発熱、倦怠感、頭痛などがみられ、数日して乾いた咳(せき)が出始めます。熱が下がってからも咳は1カ月ぐらい続き、約4割は呼吸時に気道を空気が通る際にゼイゼイ、ヒューヒューという雑音を発する喘鳴(ぜんめい)があります。大半は約1カ月で治癒しますが、喘息(ぜんそく)に似た気管支炎を起こしたり、胸水がたまって重症化したりすることもあります。

 「マイコプラズマ」は「細菌」ですが、細菌特有の細胞壁をもっていません。
細菌より小さく、ウイルスより大きく、両者にない性質を持ってるといえます。
そのため細胞壁を攻撃するタイプのペニシリン系やセフェム系の抗生物質は無効です。
以前は、4年に1度、夏季五輪の開催と同じ年に流行が見られたため、『オリンピック病』と呼ばれていたのですが、近年では毎年のように見られるようになってきました。

また、一般細菌と違い培養が難しく、特別な培地(PPLO培地)で培養しないといけません。さらに培養が1週間から一カ月くらいかかるので、診断されたときにはすでに症状が軽快していた、ということがありえます。

診断には先に述べた培養でマイコプラズマを証明すること、血清診断で抗体があがっていること(2回血清を取り、比較することになり、2-4週かかります)、迅速診断はイムノカードという血液での迅速診断があり、診療所でも活用されますが、インフルエンザほど診断価値が無く、早期(感染後1週間程度)には検出されないといわれています。
確実なのはPCR検査ですがこれは通常の診療所では不可能です。
LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法という診断方法が日本で開発され、保険適応にもなりましたが、これも通常の診療所では検査できません。このように正確な診断は難しく、一般の診療所では痰を伴わない咳とレントゲンで肺炎像があることで診断していました。というより、乾性咳と肺炎像で、異型肺炎(マイコプラズマ、クラミジア)として下記に説明しますマクロライド系の抗生剤が有効であることで、臨床的診断をしていたと言っても過言ではありません。

治療の基本は、抗菌薬を用いた薬物療法です。
病原体に細胞壁がないため、ペニシリンなどの細胞壁を作らせないことによって効果を発揮する薬剤が効かない。そこで、細菌がたんぱく質を合成するのを阻害するマクロライド系やテトラサイクリン系、DNA複製を阻害するニューキノロン系の抗生剤などが主に用いられます。
今まで最も使用されているのは、マクロライド系です。クラリス・クラリシッド・クラリスろマイシン、エリスロマイシン、ジスロマックといった薬で、風邪のときによく処方される抗生剤で、マイコプラズマの特効薬でした。
今期のマイコプラズマのややこしいところはこのマクロライドに耐性のあるもの、つまりマクロライドが効かないタイプが増えたことです。
ちなみに,マクロライド耐性のマイコプラズマは2000年にはほとんどなかったのですが現在のマイコプラズマのマクロライド耐性率は2011年では80%以上となっています。
また,その耐性の程度は高度耐性だそうです。つまり全く効かない。

咳の患者が来れば,百日咳,マイコプラズマ,クラミジアを考えてマクロライドを投与すべきだという一部の感染症の専門家の話に乗せられて,まるで鎮咳剤のようにマクロライドの投与がなされていること,また気管支拡張症、慢性副鼻腔炎などの疾患でマクロライドの少量持続投与がなされていることのつけが回ってきたのかもしれません。

かくいう私も3年前くらいから、咳の患者さんには頻繁にマクロライドを処方するようになっていました。以前は風邪には基本的には抗生剤は不要、と考えていましたが、痰を伴わない乾性の咳の方には百日咳、マイコプラズマ、クラミジアが含まれているので、マクロライドくらいなら処方してもいいかな、という感じで安易に処方していたかもしれません。
では今後、何を処方するかといいますと、ミノマイシンなどのテトラサイクリン系(ミノマイシンは歯が黄色くなるといわれているので、小児には使いにくい)、クラビッド、タリビッド、オゼックス・トスキサシンなどのニューキノロン系、ですがこれも小児には使いにくい。ちょっと専門家の意見を聞きながら、薬を考えてみる必要があります。

予防のポイント

マイコプラズマに対する予防接種はありません。抗菌薬の予防投与も一般に行われません。
感染を広げないためのポイントは、咳エチケットと手洗いです。
咳があるときはマスクを着用しましょう。
咳やくしゃみをする時はティッシュやマスクを口と鼻にあて、他の人に直接飛まつがかからないようにしましょう。

周囲に咳等の呼吸器症状を呈する患者さんがいる方は、健康観察を行い、早期発見に努めましょう。 症状のある方は、早めに医療機関を受診しましょう。
医療機関を受診する際は、他の患者への感染を防止するため、必ずマスクを着用してください。

◆編集後記

当院からの情報、お知らせをメールで患者の皆様にお送りしようと考えています。
ご希望の方は info@majima-clinic.jp まで登録可能のメールをお送りください。
また受付でも随時、皆様のメールアドレス(携帯でもPCでも)をお伺いしていきますので、当院からのお知らせを受け取ってもいい、という方は是非ご登録ください。