ホームドクター通信
2012年 2月 No.75

◆お知らせ

2月も半ばを過ぎました。
時のたつのは本当に早く、かうかしていると、年末になって「今年も早かった・本当に月日のたつのは早い」と、言っていそうで恐いです。
しっかり、今年の自分を考えたいです。

猛威をふるうインフルエンザ少し下火になったとはいえ、まだインフルエンザが蔓延して、学級閉鎖などの情報が相次いでいます。

国立感染症研究所によると、1月30日から2月5日の間に、病院などから報告された患者数は最近10年間の中で最も多かった平成17年に次ぐ多さになったとのことです。推計全国の患者数は200万人を超えているとか。
今年はA型香港タイプが多かったようですが、最近B型も出てきているとのこと。寒い日が続きますので、ご用心を。インフルエンザの予防接種も3月31日までしています。

新しい抗ウィルス剤が出現したため、解熱までの期間が短くなりました。翌日には熱が下がっていることも稀ではありません。しかし、熱は下がってもウィルスが体内に存在していることが多いです。

学校保健安全法の施行規則(省令)では、インフルエンザの場合、出席停止期間は解熱後2日まで、です。

しかし、解熱後2日ではインフルエンザウィルスが体内から排出されており、二次感染の恐れがあります。
当院でも一名、金曜日の朝から熱がでて午後に受診しインフルエンザの診断。点滴して土曜日には熱が下がったため、月曜日から登校した方がおられました。
下校後の月曜の夜に登校許可書を持ってこられました。これは今までなかったことで大変驚きました。
今後は発熱後5日経過および解熱後2日を経過、が登校基準として推奨されています。当院もこの指導を採用しようと思います。

いつも繰り返しになりますが、まず手洗い、マスク、うがい。手についたウィルスが感染するのは意外に多いです。咳くしゃみが出る場合は他の人への思いやりとして、咳エチケットをお忘れ無く。外出時にはマスクを。
咳くしゃみがでるときは、ティッシュで口と鼻を覆うよう気をつけてください。

糖質制限ダイエットで、2週間で3kg減と書きました。この記載について、食いついてこられた方が数人いました。確かに3kg痩せましたが、これは正月で体重が増えたのが元に戻った、というのと、ちょうど走りこみの時期で月に200km走っていたのが要因として大きかったかもしれません。

しかし、糖尿病専門医と洋菓子職人が協力して、糖質5グラム以下のケーキづくりに乗り出しているそうです。小麦粉や砂糖のかわりに大豆の粉や人工甘味料を使います。糖尿病なのでケーキはなし、と言われ、さみしい思いをした方には朗報ですね。糖質制限ダイエットが糖尿の治療食、ダイエット食として市民権を得るのを心待ちにしています。

糖尿病の過去一カ月の血糖の平均を示すヘモグロビンA1Cの値に国際規格であるNGSP値を採用する、との発表があり先月号にも書きました。

ヘモグロビンA1Cの値は従来の日本規格のJDSから変更され、平均で0.4%上がることになります。
しかし、地域医療からの連絡によると、特定健診、特定保健指導については測定結果の表記や保険者に提出する測定値などは平成24年4月以降、平成25年3月の間は従来通り、JDS値のみを使用することが決定されています。
地域医療が間に合わなかったということでしょうね。すでにちょっと混乱しているようです。

◆アネトス通信

2012年になり、早いものでもう2月になりました。
まだまだ寒い日が続きますが、体調管理の方はいかがでしょうか?

先月号でも少し触れましたが、テレビ等でもインフルエンザの爆発的な流行が取り上げられ、学級閉鎖・学年閉鎖・所によっては学校閉鎖など色々と影響が出ている様です。

日常生活でできる予防方法として一般的に言われていることは、
@栄養と休養を十分とる。
A人ごみを避ける。
B適度な温度・湿度を保つ。
C外出後の手洗い・うがいの徹底。
Dマスクの着用
  等があります。

 アネトスでもそれに先駆けて、感染予防対策の研修会に参加してきました。学んだ事を実践すべく、利用者様の体調管理を第一に、施設内の室温・湿度の調節、一処置一手洗い、送迎後の手洗い・うがい、場合によってはマスクの着用等をして、感染・細菌・ウイルスに敏感な利用者様に、職員が感染源とならないように日々注意を払っています。

 また皆様も、「予防接種をしたから感染しない」、「1つの型にかかれば他の型にはかからない」という事ではないと言われているので、日頃からの体調管理にはくれぐれも気をつけて下さいね。

◆狭心症

狭心症天皇陛下が平成24年2月18日に手術を受けられました。病名は狭心症・受けられた手術は冠動脈バイパス手術。どのような病気・手術かを今回はお話します。

心臓は各臓器に動脈を介して血流を送り、栄養を供給する役目をしていますが、心臓自身も血流を受けています。心臓の栄養血管が冠動脈で、その冠動脈の血流が不足することによって、心筋が酸素不足に陥ります。
そのために胸痛など痛み、圧迫感生ずる疾患が狭心症です。血液の供給が減ることや途絶えることを虚血といい、狭心症や心筋梗塞症を合わせて虚血性心疾患といいます。
冠動脈が、一時的に閉塞するのが狭心症、長く閉塞してその冠動脈に栄養される心筋が壊死に陥ったものが心筋梗塞です。狭心症と心筋梗塞の大きな違いは、心筋が回復するかどうかで、狭心症では心筋が死なず回復するのに対して、心筋梗塞は心筋が死んでしまい回復しません。血管の痙攣により起こる場合もありますが、多いのは動脈硬化で狭くなったところに血栓などが詰まることです。

狭心症は普通は「労作性狭心症」といって労作時に起こります。
つまり、急ぎ足で歩いたり、階段や坂道を登ったとき、またひどく興奮したときなどに胸の中央部が締め付けられる、あるいはなにかを押しつけられているような圧迫感がでてきます。少し休むとおさまってしまうのが特徴です。
痛みはしばしば左肩・腕や顎まで拡がり、みぞおちに胃の痛みのように感じられることもあります。息切れ、として自覚されることもあります。痛みの場所はあまりはっきりしないのが一般的です。
「この一点が痛い」と指で示せるような場合は心配ないと思っていいでしょう。
症状の持続時間は数十秒から数分です。
もっと短い場合は心配ないことが多いです。

一方「安静時狭心症」といって、同じような症状が労作と関係なくでることがあります。
これは「冠攣縮(れんしゅく)」、つまり冠動脈が痙攣(けいれん)様に収縮してしまい、動脈硬化で細くなったのと同じような狭窄を一時的に作り出すために起きる現象です。

冠動脈が狭くなる主要な原因が動脈硬化です。
冠動脈不定化になりやすい因子を「冠危険因子」「リスクファクター」と呼びます。
これには脂質異常症:LDL(悪玉)コレステロールが高い・HDL(善玉)コレステロールが低い 高血圧 糖尿病 若年の冠動脈疾患の家族歴 喫煙 運動不足 肥満 などがあげられています。
重要なことはこれらの中には、努力や治療によって克服することができるものがある、ということです。

症状から狭心症を疑うと、まず心電図をとります。しかし、狭心症は胸痛のあるときに波形異常がみまれますが、症状のないときは異常がないのが普通です。
そのため、24時間心電図や運動負荷心電図で、狭心症発作のときの心電図波形を捕えようとする検査が行われます。
24時間心電図:労作時や夜中や明け方の状態も知ることができるように、24時間心電図を記録する検査です。ホルター心電図といいます。

以下の検査は病院にお願いしています。

運動負荷試験 :運動して労作時と同じ状況にするようわざと負荷をかけて、症状や心電図の変化を観察する検査です。

RI検査 :RI検査ではアイソトープを静注して心臓への放射性活性の分布をみます。血流の少ない部位では、放射性活性が低くなります。

冠動脈CT検査:最近CT検査が進歩し、冠動脈の状態がかなりわかるようになりました。冠動脈造影をするかどうかの決定に最近では欠かせない検査です。
冠動脈造影 :以上の検査で狭心症の疑いが濃厚、となると冠動脈造影という検査をします。これにより冠動脈のどこにどういう異常があるかをはっきりさせることができます。その人にもっともふさわしい治療法を決めるためにこの冠動脈造影が現在では最終の検査ということになります。

狭心症の治療法

狭心症のもともとの原因は多くの場合、動脈硬化です。いったん起こった動脈硬化を元通りに治すということは現時点ではまだ不可能です。
以下のような治療法が選択されます。
1. 薬物療法
2. カテーテル・インターベンション
3. バイパス手術

薬物療法:狭心症の薬には、硝酸薬・カルシウム拮抗薬・交感神経ベータ遮断薬があります。
その他にアスピリンなどの抗血小板薬もよく使われます。血管の緊張をできるだけ緩め、心臓の仕事を減らし、血液を固まりにくくしておくというのがポイントです。

カテーテル・インターベンション:動脈カテーテルよる冠動脈血行再建法をいいます。冠動脈造影と同じように、カテーテルという細い管を直接冠動脈の入り口まで通します。
このカテーテルの中を通して細い針金を狭窄部の先まで送り込みます。この針金をガイドにしてバルーンを狭窄部まで持っていき、拡張させ狭窄を押し広げるのです。狭窄した冠動脈をバルーンで押し広げたあとに、コイル状の金属であるステントを挿入することもあります。ステントを入れて広げられた狭窄部は内側から支えられ、再び狭窄することを防ぎます。このステントの再狭窄を防ぐために、ステント自身から薬剤が溶出するタイプもあります。

バイパス手術

天皇陛下が受けられた治療法です。冠動脈バイパス術は、狭心症に対する薬物療法が無効で、 カテーテルによる治療も困難または不可能な場合に行います。冠動脈の狭い部分には手をつけず、身体の他の部分の血管で狭窄部をバイパスする通路を作成します.バイパス用の血管(グラフト)としては、胸の中で心臓の近くにある左右内胸動脈、足の静脈(大伏在静脈)、胃のそばにある右胃大網動脈などを使います。

以前は心臓を停止させて冠動脈とグラフトを縫合していましたが、今は心臓を止めず、スタピライザーという特殊な手術器具で冠動脈を挙上して、心拍動下にグラフトを縫合します。産経新聞にいい手術の図があったので、借用しました。
天皇陛下の場合、心臓を止めずに、左右の内胸動脈をグラフトにして、冠動脈に縫合していました。
天皇陛下の手術を執刀した順天堂大学の天野先生、私と同年代ですが、宮内庁・東大からお呼びがかかるほどの外科医、ということですね。ブラックジャックのようで、私が憧れていた世界です。
手術の成功は公務・日常生活を送れるようになってから、それまでは成功という言葉を使いたくない、というコメントも納得です。天皇の一日も早い回復を祈念します。


◆編集後記

2月1日〜28日まで、当院についてのアンケート調査を行っています。
皆様の貴重なご意見をお聞かせください。
ご協力よろしくお願い致します。

2月19日に行われた泉州マラソンに今年も参加しました。詳細は、次号でお知らせいたしますのでお楽しみに・・・☆