ホームドクター通信
2012年 5月 No.78

◆お知らせ

5月になりました。連休も終わり、初夏の候とはいえ(現在5月下旬)、ゲリラ豪雨・竜巻があったりと天候不順な5月でした。もうすぐ梅雨入りとなります。
今はいい季節ですが、だんだん蒸し暑くなってきますので、体温調節・熱中症などにも気を配る必要がありますね。

金環日食が5月21日の月曜日午前7時30分前後にありました。多くの方が朝から太陽・月の織りなす天体ショーをご覧になっていたようです。私も御多分にもれず、 日食メガネを持って見ていました。残念ながらデジカメによる撮影には失敗してしまいましたが。実況中継を、と思って、ラジオを聞きながら見ていたのですが、大阪市内の方は黒い雲に太陽が覆われて見られなかったとのこと。泉州では割と綺麗に見えたのですけど。月の影が太陽の中にすっぽり入り、リング状の太陽を見ることができた瞬間はなかなか感動的でした。何人の人がご覧になったんでしょうね。結構な視聴率だったのでは、、。ニュースで放映された、日食メガネを持って並んで観察する子供の姿が可愛かったです。6月にも天文現象として、6日の朝から昼すぎにかけて、地球から見て金星が太陽の手前を通過する「太陽面通過」が起こり、日本全国で始めから終わりまで見ることができるそうです。日食メガネを捨てないように

東京スカイツリーが完成し、5月22日開業しました。約634mの高さで、この数字には東京近辺の旧国名である武蔵国(「むさし」のくに)の語呂合わせも考慮したとしています。電波塔としては世界一高いですが、人工建造物としては、アラブ首長国連邦ドバイにある828mの超高層ビル、ブルジュハリーファにつぐ世界第二位となります。 かなりの人が見学に詰めかけるようで、連日結構大きなニュースになっています。違法駐車や騒音、ゴミの散乱などの問題も地域住民を悩ませているとか。事業主の東武鉄道が公表した年間来場者数は3200万人で、これは東京ディズニーリゾートの年間来場者数2500万人を上回るそうです。 なかなか大阪にいては、ちょっと見に行こうということはできませんが、現代建設の先端技術の集結と粋と雅というテーマのライトアップは一度自分の目でみてみたいな、という気がします。

平成24年度の住民健診が始まっています。
朝食を抜いて朝来ていただければ、いつでもできますが、できれば御希望の方は受付で予約を取ってください。

ISOの審査が8月3日に行われます。午前中の診療予約が少し制限されます。
今年の夏季休暇は8月15日から8月19日までです。8月20日月曜日から通常診療いたします。御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

今回の医療情報は認知症・新しい情報にしました。

◆アネトス通信

気候の方も、随分と暖かくなり初夏の気配がうかがえるようになりました。 皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか? 最低気温と最高気温の差が大きい日が多く、体調管理にはくれぐれも気を付けてください。

また、5月6日には再び自然の猛威が関東地方を襲いました。自然災害は予想もできず、本当に恐ろしいものですね。

先日、アネトスでは今年も忠岡町福士事業所の作品展に参加しました。
4名の利用者様に、書道・粘土細工・造花アレンジメント・デコレーションスリッパ等を出展して頂き、勝負事ではありませんが、他のどの施設よりも輝いているように感じました。
また、利用者様の感性の良さに驚きと感動を頂きました。
利用者様一人ひとりには、それぞれの物の見方や感じ方があり、「これは、今後の利用者様それぞれに合ったサービスにつなげていける」と、まだまだ未熟な私(南)ではありますが感じ取ることができました。
また、来年の作品展に向けて、利用者様と共に楽しみながら何か作っていけたら良いなと思っています。

◆認知症の話題

平成24年5月21日の総務省統計局の発表では、日本の人口は平成24年5月1日現在推計1億2761万人で 65歳以上のいわゆる高齢者人口は3032万人だそうです。
65歳以上の方の約8%、85歳以上では約25%が認知症であるといわれています。
現在認知症の方は全国で250万人はいるとされ、この数は高齢化社会に伴って次第に増え、25年後の2035年には約445万人と1.8倍に増えることが予想されています。
2010年9月にこの院内報でも認知症を取り上げましたが、今回は新しい情報として、認知症の話題をお届けします。

NHKは、このところ認知症の番組が多いですね。認知症について、手紙やメールがたくさん寄せられているということでしょう。昨年3月のためしてガッテンでは、「30秒で認知症かどうかを見分ける方法を発見!」とあり、「キツネ・ハト模倣テスト」が紹介されていました。
お年寄りと向き合って座る。影絵のキツネとハトを手で示し、10秒間でお年寄りがマネできるか調べる。65歳以上の年寄りで、手でキツネのマネをできない人は重度の認知症。
ハトのまねで、まごつく人は軽度の認知症になっている可能性があるとのこと。
確かに見分けられそうですね。もうひとつ、別の日の放送ですが、最近のニュースは何ですか?という質問を投げかけることも認知症を見分ける上で有効とのこと。質問をはぐらかせたり、ごまかしたりすることが認知症の症状だそうです。
こういう症状の方は、できるだけ早く診療所で、診断を受けることをお勧めします。

治る認知症

また、同じくためしてガッテンでは今年の2月には治る認知症のことが取り上げられています。
認知症はその原因から、いくつかの種類にわけることができます。
認知症で最も多いのは、変性性認知症の代表であるアルツハイマー型認知症で、全体の約50%を占め、次いで脳血管性認知症およびレビー小体型認知症がいずれも20%で、残り10%がその他の認知症です。

その他に認知症の中には治療により治る認知症があります。
その中のひとつ、正常圧水頭症は、NHKのためしてガッテンで取り上げられたため、急に気にされる方が多くなりました。主症状は精神活動の低下(認知症状)、歩行障害、尿失禁です。この症状を呈する方のうち、CTやMRIで著明な脳室拡大を認めるにもかかわらず、腰椎穿刺で測定した脳脊髄圧は200mmH2O以下と正常範囲である場合、正常圧水頭症と呼びます。

私たちの頭の中には「髄液」と呼ばれる液体がいつも流れています。
髄液は、脳の中心にある脳室(脈絡叢)で産生され、脳と脊髄の周りを循環して、静脈に吸収されていきます。ところが、何らかの原因により髄液の流れや吸収が妨げられ、脳室に髄液がたまると脳室が拡大し、脳が圧迫されることで症状が徐々に出現し、特発性正常圧水頭症といわれる病気を引き起こします。原因不明のものを特発性正常圧水頭症、原因が明らかなものを続発性正常圧水頭症と呼びます。続発性正常圧水頭症の原因としては、くも膜下出血、頭部外傷、髄膜炎などがあげられます。
髄液は腰椎の方まで流れてきますので、腰椎穿刺で髄液を採取することができます。正常圧水頭症の方の髄液を20ml抜くと(タップテストという診断方法)、症状が軽快することが知られています。このテストで有効だった場合、髄液を腹腔内に流す手術をすると認知症が軽快することが期待されます。認知症と診断された患者さんの5〜6%が正常圧水頭症であると考えられています。認知症の数が現在250万人ですので、15万人前後と予想されますが、最近の調査で約30万人の方が罹患している可能性があるという報告もあります。

そのほかに頭部打撲の後遺症で頭の中に血の塊ができる硬膜下血種も手術で血腫を除去することにより認知症が軽快する可能性があり、甲状腺の機能障害である甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症なども治療により認知症が軽快する場合があります。

新しい検査

一般的なCT・MRIは脳萎縮・脳溝脳室拡大など、脳の形態的異常を証明します。
脳血流量を測定するSPECT検査、脳の酸素消費量・ブドウ糖消費量などを測定するPET検査は脳の機能的異常を証明します。SPECT、PETは放射性医薬品を用いた検査(核医学検査)でまだ一般的な検査とはいえませんが、CT・MRIにて確認される形態的異常が出現する前の認知症早期発見が可能です。
最近MRIを利用した早期アルツハイマー型認知症診断支援システムが開発されました。VSRAD(ブイエスラッド)というシステムです。
早期アルツハイマー病では、脳萎縮が海馬において特に著明であるため、MRIにより収集した脳全体の立体データ・矢状断と呼ばれる縦割り画像を専用端末・専用解析ソフトで脳全体と海馬の萎縮の程度を数値で評価します。実際には海馬体の周辺にあたる嗅内野を含むいわゆる海馬傍回のあたりを中心に解析されます。
萎縮の程度は0が萎縮なしで、海馬の萎縮が脳全体のそれより強いほど、大きな数値となります。2以上なら早期アルツハイマー病の疑いあり、1以上であれば、前駆を含む軽度認知機能障害の可能性を疑い、経時的にフォローすべき、とされています。
VSRADは一般の医療機関で広く使われるMRI装置があれば良く、手軽にまた短時間で判定できるため、今後の普及が期待されています。当院近くの岸和田市民病院 ・徳洲会病院などでもVSRAD検査は可能とのことです。

新しい治療

アルツハイマー型認知症の新しい治療薬の発売が相次いでいます。国内ではこれまでエーザイの「アリセプト」だけでした。
小野薬品工業は「リバスタッチパッチ」、ノバルティスファーマも同じ薬を「イクセロンパッチ」として販売を始めました。これは体に貼るタイプで、患者が指示通りに薬を使っているかどうかを一目で確認でき、介護者の負担軽減につながると期待されます。
「他の薬との併用」をうたうのは第一三共の「メマリー」。この薬はは「アリセプト」と異なる作用機序の薬ですので、併用することで認知症の進行をさらに遅らせる効果があります。
ヤンセンファーマ(東京)は飲み薬「レミニール」を発売、これはアリセプトと同系統の薬です。

新しい薬はいずれもすでに世界70カ国以上で販売されている実績があり、各社は「日本での市場も急速に伸びる」とみて投入を決めたようです。

治療の幅も広がり、また治る認知症もありますので、簡単な検査で認知症が疑われる方は医療機関を受診してください。MRI検査により、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫なども診断可能ですので、是非、血液検査とMRI検査を受けられることをお勧めします。

◆編集後記

また遅くなってしまいました。この先送りにしてしまう・間際になって焦って行動するという性格をなんとかしなければ、といつも思います。