2012年 7月 No.80
ホームドクター通信

◆お知らせ

暑中お見舞い申し上げます。
梅雨が明けたと思ったら、猛暑です。
熱中症で救急搬送される方が多くなっているとのことです。
7月29日に書いていますが、28日は太平洋高気圧に覆われ、最高気温が35度以上 の猛暑日となりました。
共同通信の集計によると、熱中症とみられる症状のため、群馬県や長野県などで 計5人が死亡、全国で1500人以上が救急搬送された。 気象庁は引き続き熱中症への警戒を呼び掛けています。
今年は昨年より強力に節電が 叫ばれています。エアコンも使うのに気が引けるので、熱中症には十分注意して ください。昨年も先月も書きましたが、個人的には、高齢者の方は遠慮せずエアコンを 使うべきだと思っています。若い人は涼しい恰好をして、水分・塩分を十分とり、エコな涼感グッズを使って我慢しましょう。
熱中症は梅雨明けの蒸し暑い日によく起こります。このようなとき体はまだ暑さに慣れていないので熱中症が起こりやすいといわれています。

暑い日が続くと、体がしだいに暑さに慣れて(暑熱順化)、暑さに強くなります。この慣れは、発汗量や皮膚血流量の増加、汗に含まれる塩分濃度の低下、血液量の増加、心拍数の減少などとして現れますが、こうした暑さに対する体の適応は気候の変化より遅れて起こります。
暑熱順化は、日常運動をすることによっても獲得できます。運動の強さ・時間・頻度や環境条件に影響されますが、実験的には暑熱順化は運動開始数日後から起こり、2週間程度で完成するといわれています。そのため、日頃からウォーキングなどで汗をかく習慣を身につけて暑熱順化していれば、夏の暑さにも対抗しやすくなり、熱中症にもかかりにくくなります。あまり暑くない時間に少し早足でウォーキングし、汗をかく機会を増やしていれば、夏の暑さに負けない体をより早く準備できることになります。

ロンドンオリンピックが始まりました。時差の関係で、なかなかリアルタイムに見ることができませんが、各種目で熱戦が繰り広げられています。日本人選手の活躍に期待したいものです。

高血圧の方には、家庭血圧の測定を以前よりお勧めしています。最近オムロンから、血圧の測定結果を自動的にウェブに登録してくれる血圧計が発売されました(HEM−7251G)。パンフレットを待合室に置いています。自分でもウェルネスリンクというサイトから血圧結果を確認することができますし、オムロンのメディカルリンクに登録すれば、カードが発行され、そのカードを対応医療機関にもっていきますと、診察室のパソコンからでも血圧結果を見ることができ、診療にもとても有効です。
血圧の診療には家庭血圧の測定がかかせないと感じております。医療機関に受診するときだけ血圧が高いといういわゆる白衣高血圧の方はかなり多いという印象をもっております。
10年前にHOMED-BPという東北大学の研究に参加し、家庭血圧による投薬をしていました。家庭血圧計で血圧を測定し、その血圧計を診察時に持ってきていただきますと、診察室のパソコンから東北大学のサーバーにアクセスして、家庭血圧のデータが転送されます。その家庭血圧の数値から処方薬を提示してくれるシステムになっていました。現在データを解析して、結果を医学誌に掲載準備中とのことですが、非常にいい研究でした。この研究に参加して、高血圧診療には家庭血圧測定が欠かせないと思うのと、インターネットに登録すれば、最適な降圧薬を指示してくれるサービスが今後でてくるのではないか、と思えました。家庭血圧測定がさらに普及されることを期待しています。

平成24年度の特定検診実施しています。(予約制)

主にメタボにフォーカスをあてた健診です。また、前立腺がん検診、肝炎ウィルス検診、大腸がん検診もしています。対象となる方は是非受けて下さい。

ワンコイン健診しています。あまり病院に受診しない方を対象としています。
500円で糖尿病、脂質異常症、肝機能、腎機能、貧血の検査をします。

ISOの審査が8月3日に行われます。
午前中の診療予約が少し制限されます。

お盆休み

8月15日(水)-19日(日)です。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

◆アネトス通信

梅雨明けはしましたが、まだまだ蒸し暑い日が続きますね(><)
皆様、体調は大丈夫ですか?
熱中症には、十分に気を付けて下さいね。

先日アネトスでは、今年も災害訓練を実施しました。
今年の内容は火災に設定しました。
当日は職員に加え、 2 名の利用者様にも参加して頂き、利用者様への声かけは勿論、職員間の声かけも的確にでき、滞りなく実施できました。
近頃、自然災害等が数多く発生し、いざという時の為にも日頃から備えることが大事ですね。

また、アネトスには二日間に渡り、 5 名の看護学生が実習にきました。
日頃と違う顔ぶれもあり、会話が弾む利用者様も居り、少し賑やかになり活気にあふれました。
看護学生の方は、あと国家試験を残す所ということでしたので、今後、色々な医療現場で活躍されることを願っています。

◆白癬・真菌感染症

前回に引き続き、白癬菌・真菌症の話をします。
今回は爪白癬、新型水虫:トリコフィトン・トンズランス菌について、です。

白癬菌は住み着く場所で病気の名前が変わります。が足につくと水虫、爪に侵入すれば爪白癬(爪の水虫)。 からだにつくと体部白癬(タムシ、ゼニタムシ)、頭につくと頭部白癬(シラクモ)、股につくと股部白癬(インキンタムシ)と呼ばれます。

爪白癬

痛みやかゆみがなくても、爪が白く濁ったり、分厚くなったりしていたら爪の中に白癬菌が潜んで活発に繁殖している可能性があります。
爪の病気のなかで一番多いのは「爪白癬(つめはくせん)」、いわゆる爪の水虫で、日本人では8人に一人がかかっていると言われています。
爪白癬は爪のなかに白癬菌という水虫の原因菌(カビ)がすみついて起こる感染症です。
白癬菌は先月も書きましたが、人の角質層、毛、爪などに含まれるケラチンというたんぱく質を栄養として生存しています。なので、爪に生息することが可能なのです。
爪白癬の症状で最も多くみられる初期症状は、爪の一部が白や黄色っぽく濁ってくることです。
また、時間が経つに連れて、濁った部分が拡がって爪が厚くなっていくのですが、厚くなった爪はもろくてボロボロと崩れ落ちるようになります。
爪そのものには神経が通っていないため、爪のかゆみや痛みは感じません。むしろ爪の周りがかゆくなることがあります。
爪白癬の場合は爪が厚く変形してくるので、靴を履いたときに痛みが生じたり、ひどい場合には痛くて歩けなくなったりすることもあります。

診断はやはり変形した爪から白癬菌を確認することです。
爪を一部削り取って、顕微鏡検査、培養検査をします。

爪は硬く、白癬菌は爪の根元で皮膚に隠れた部位の奥深く潜んでいるので、塗り薬を使用する場合は爪の生え際に塗って、奥深くまで染み渡るようにしますが、薬やスプレーだけでは、爪の中まで浸透しにくく、白癬菌まで有効成分が届かないことが多いです。
そこで、爪白癬の治療には主に医師の処方するラミシール、イトリゾールなどの飲み薬が使われます。
飲み薬は血流にのって爪まで運ばれ、身体の中から白癬菌に作用して死滅させる効果があります。薬の服用期間は手の爪で3〜6ヶ月、足の爪で6〜10ヶ月ほど。
新しい爪に生え替わりながら、ゆっくりと治っていきます。

爪白癬も、身近な人にうつしやすい感染症です。
爪白癬にかかった爪は、いわば白癬菌の貯蔵庫のような役割を果たしており、常にまわりに菌をばらまいています。こうして自分の水虫を治りにくくしたり、家族や友人など身近にいる人にうつしてしまうのです。
感染源にならないうちに、爪の水虫を治しましょう。
治療しない限り、周りの人への感染を絶ち切ることはできませんので。爪がおかしいかな、と思ったら医療機関に御相談ください。

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新型水虫・トンズランス

一時期、柔道選手の間で感染する新型水虫が注目されました。

その正体はトリコフィトン・トンズランス菌。感染力が非常に強いのが特徴です。
この新型水虫の原因であるトリコフィトン・トンズランス菌は元は中南米に生息していたそうですが、1960年台に中南米からアメリカに持ち込まれたと言われいます。
トリコフィトン・トンズランス菌は感染力が強いため、柔道、レスリングなど体を密着させ、擦過傷ができやすい競技の選手間で感染が広がりやすく、新型水虫は柔道、レスリングなどの国際試合を通じてヨーロッパに広がったといわれています。 2000年以降になると日本にも新型水虫が広がり始め、現在では学生の部活動などを通じて新型水虫の感染が広がっています。また家族間での感染例も多くなってきています。

柔道、レスリングなどの選手の場合、新型水虫は競技中に肌が密着しこすれる部分、顔、首、腕、上半身などに直径数センチの赤い発疹としてあらわれます。また新型水虫は頭皮にできることもありこの場合、はじめは小さなポツポツ程度のため見逃されることが多く、そのままにしておくとフケの量が増え、重症化すると化膿し、毛か抜けることもあります。
新型水虫(トンズランス菌)は病気そのものは怖いものではありませんが、自然に治癒することは難しく、放置すると治癒にも時間がかかります。また感染力が強いため、完全に治癒しないと、再発する可能性が高く、また他の人への感染源になってしまいます。
新型水虫に関する情報については、柔道などの選手、指導者には認知されはじめましたが、まだまだ一般の家庭の方の認知は低いようです。家族に柔道などの競技者がいる場合については、日ごろからのチェックが新型水虫(トンズランス菌)への感染防止には非常に重要です。
今までになかった発疹が顔、首、腕などにできていたり、フケが増えたなどの症状が見られる場合、新型水虫(トンズランス菌)の感染をも考えられますので、医療機関を受診してください。
もし柔道などの競技者や、競技者の家族である場合は医師にその旨を伝えるのが良いでしょう。

皮膚科で行う検診は通常の水虫の検診と同じで、皮膚を少し削って顕微鏡による確認、あるいは培養検査でトンズランス菌がいるか確認をします。
頭皮の場合は100円ショップで売っているような丸型シャンプーブラシを使用して、頭皮全体を10〜15回くらい、ブラシの先端が頭皮に届く程度にやや強めにまんべんなくブラシします。そのブラシをマイコセル寒天培地に押しつけて、培養します。
ここでトンズランス菌が確認されると、トンズランス菌の量を確認し、軽症であれば抗真菌薬を塗り治療します。軽症の場合およそ一ヶ月で治癒します。頭皮の場合は抗真菌剤入りのフルフルシャンプーなども使用します。トンズランス菌の量が多い、治りにくい場合は内服薬(抗真菌薬)を服用します。

頭皮の培養検査で使用するブラシ 白癬・真菌感染症 白癬・真菌感染症

予防は前回書きました清潔と乾燥につきます。家族への感染を防止するためにも怪しい場合は受診して、真菌感染であれば早めの治療をお勧めします。

今回の写真はトンズランス感染症研究会とノバルティスファーマの爪ネットから拝借しました。

◆編集後記

また今回も遅くなってしまいました。
行動科学の勉強はして、理屈ではギリギリ癖の克服方法はなんとなくわかったよ
うな気がするのですが、やはり実践は難しい。
次回は夏休み終了後の8月20日発行を目指します。