2012年 9月 No.82
ホームドクター通信

◆お知らせ

9月も後半にはいり、急に寒さを感じるようになってきました。 特に朝晩は冷え込むようです。日中はまだ暑さを感じます。
徐々に秋が深まってきている感じを受けることができます。
夏生まれで、夏が好きな私としては寂しいかぎりですが、3年前からの趣味であるランニングシーズンの到来、といったところです。今シーズンは神戸マラソンに参加予定です。
神戸マラソンは大阪マラソンと同日の11月25日に開催されます。トレーニング開始して少し身体を絞らないといけません。

10月1日は当院の開院記念日です。平成12年に継承し、今年開院12周年になります。昨年はレントゲン 装置のデジタル化はでき、とても便利で楽になりました。
昨年予定していた予約システムはまだ導入できておらず、旧システムを使っています。まだ業者選定中ですが、できるだけ早く導入しようと思っています。
また月一回の院内報だけでなく、新しいメディア、ツィッ ター、フェースブックなどを利用した情報発信を2年前から画策しているのですが、これもなかなか実行できません。またどなたかのの力を借りて始めてみたいと考えているところです。
これからも皆様のご意見をお聞きしつつ、ご利用していただける方の健康管理・満足度の向上に努めていきたいと思います。

インフルエンザ予防接種

10月1日よりインフルエンザ予防接種を行います。
1回2800円、2回目は2000円、忠岡町在住の65歳以上の方は1000円です。

昨年からWHO推奨を受けて、3歳以上13歳未満は成人量と同じ0.5mlの二回打ちに変更になっています。
13歳以上は0.5ml接種、一回または2回となっています。
インフルエンザワクチンは打てば必ず発症がおさえられるというワクチンではありません。 その役割はかかりにくくすることと、かかっても免疫があるために重症化しないこと。死亡者や重症者を出来る限り減らすことが期待されています。ワクチンの予防効果持続期間はおよそ5カ月と推定されています。

ワクチンの接種を受けていても、日頃から手洗い・うがいをきちんと行い、流行時期は人ごみをさけて感染機会を減らすことが大事です。

高血圧の方には、家庭血圧の測定を以前よりお勧めしています。
開業して初期よりHOMED-BPという東北大学の研究に参加し、家庭血圧による投薬をしていました。家庭血圧計で血圧を測定し、その血圧計を診察時に持ってきていただきますと、診察室のパソコンから東北大学のサーバーにアクセスして、家庭血圧のデータが転送されます。その家庭血圧の数値から処方薬を提示してくれるシステムでした。
その研究の結果がHypertension Research という日本高血圧学会の英文誌に発表されました。
残念ながら欧米の壁は厚かったようですが、この雑誌も一流雑誌。この研究に参加して、高血圧診療には家庭血圧測定が欠かせないと思うのと、インターネットに登録すれば、最適な降圧薬を指示してくれるサービスが今後でてくるのではないか、と思えました。
HOMED−BPは終了しましたが、最近オムロンから、血圧の測定結果を自動的にウェブに登録してくれる血圧計が発売されました(HEM−7251G)。

またMedicalLinkというオムロンのサービスに登録して頂くと、引き続きHOMED-BPと同じような診療ができることになり、大変楽しみにしています。
血圧計・MedicalLinkのパンフレットを待合室に置いています。少し費用がかかってしまいますが(初期費用15750円・来年3月まででしたら血圧計下取りで10750円、月額840円)もしご自分の血圧を正確に管理したいと思われる方はお申し出ください。

◆アネトス通信

日本4大祭りの一つと言われるようになった岸和田だんじり祭りも終わり、気候の方も涼しくなり、ようやく秋へと近づいてきましたね。
今年の岸和田だんじり祭りは、 NHK の朝の連続ドラマ「カーネーション」の影響もあり、例年以上に賑わいました。

 さて、話は変わりますが、先日アネトスでは少し散歩に出かけようという事で、岸和田の中央公園に行ってきました。アネトス職員に加え2名の利用者様と行ってきました。 当日は天候も良く、メダカ捕りもしておみやげに持って帰って頂くとご家族様や、ひ孫さん達にも喜んでいただけました。
また、施設内での日々の生活とは違った利用者様の表情も拝見できて良かったです。
利用者様の体調や天候等もみて、また何か企画できたらいいなと思っています。

アネトスでは、若干の空きがございます。
施設内見学等、随時可能ですのでまたご連絡ください。

受付時間:月曜日〜金曜日(祝・祭日は除く) 9時〜17時
療養通所介護アネトス  TEL 0725-32-2884 担当:榎谷

◆甲状腺

福島の原発事故のあと、児童に甲状腺がんが1例発症したという報告がありました。チェルノブイリ事故のあとも小児の甲状腺腫瘍が問題になったというのも記憶に新しいところ。
では、なぜ原発事故のあと甲状腺腫瘍がおこりやすいのかをご説明しようと思います。
その前に、甲状腺のことについてお話します。今月号は甲状腺の働きと甲状腺の機能が亢進する病気バセドウ病、低下する病気橋本病について書きます。来月に甲状腺腫瘍のことについてお話する予定です。

甲状腺

甲状腺は、頚部・のどぼとけの下あたりの気管の前面にあり、蝶が羽を広げたような形で、重さ約15グラム・長さ上下方向3-5cmほどの小さな臓器です。
この甲状腺で甲状腺ホルモンが作られます。

甲状腺ホルモン は、甲状腺から分泌され、全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きをもちます。
甲状腺ホルモンの作用は、甲状腺ホルモン受容体を介して起こると考えられており、甲状腺ホルモン受容体は、全身のほとんどの細胞に発現しているため、甲状腺ホルモンの標的器官は全身のすべての細胞といえます。甲状腺ホルモンにはトリヨードサイロニン(略称T3)とサイロキシン(略称T4)の2種類があり、その違いは、ホルモン1分子中のヨードの数です。ヨードが3つものもがT3,4つのものがT4で、生理活性は、T3の方が強いのですが、血中を循環する甲状腺ホルモンのほとんどはT4です。甲状腺からはT3、T4の他に、カルシトニンと呼ばれる骨とカルシウム代謝にかかわるホルモンも分泌されますが、これは甲状腺ホルモンとは呼びません

甲状腺ホルモンの調節

甲状腺ホルモンの分泌量は、いくつものホルモンによって調節されていますが、代表的なのは、脳の下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン (TSH) です。T3あるいはT4ホルモンが低下するとTSHは上昇し、T3,T4が上昇するとTSHは低下する、といったフィードバック機能があります。
その甲状腺刺激ホルモンの分泌量は、間脳の視床下部から放出される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン (TRH)によって調節されています。

甲状腺機能検査
T3,T4といったホルモンは、血中では大部分が蛋白と結合した型で存在し、一部は遊離した型で存在します。遊離型をフリーT3,フリーT4(FT3,FT4)と呼びます。一般的には蛋白の影響を受けないFT3やFT4を測定し甲状腺機能を診断することが多いです。
FT4がより甲状腺の機能を反映しています。 FT3やFT4が上昇したものを甲状腺機能亢進症とよび、TSHは前述したフィードバック機能により低下し、更に脂質代謝にも影響し、総コレステロールは低下します。これらの症状・所見に眼球突出などの身体的特徴を伴うものをバセドウ氏病と呼ばれます。

FT3あるいはFT4が低下し、TSHが上昇しているとき、甲状腺機能低下症と診断されます。一般外来では甲状腺機能低下症のほうが甲状腺機能亢進症より、多く認められる疾患といわれています。中年の女性に多く、原因として自己免疫性疾患が考えられます。症状は機能亢進症とは逆に全身倦怠感、覇気がないなどの「うつ状態」様の症状やむくみなどの所見が現れます。一般外来では総コレステロール上昇の原因追究時に発見されることがあります。

バセドウ病と橋本病

甲状腺の疾患のうち機能亢進症であるバセドウ病と機能低下症である橋本病について簡単に説明します。いずれも自己免疫疾患という病態です。
自己免疫疾患とは、本来、身体に入り込んだ異物に対して起こるべき免疫反応が、正常な自己の細胞を異物とみなして免疫反応を起こす病気です。
 
  バセドウ病は、甲状腺を異物とみなして産生された抗体(TSHレセプター抗体)が、甲状腺を刺激し続けることによって甲状腺ホルモンが過剰に分泌され(甲状腺機能が亢進した状態)、結果的に、身体の新陳代謝が活発になり過ぎる病気です。
病気が進むと、「寝ていても、全力疾走している」と例えられるほど身体の機能は活動的な状態になり、目が飛び出る(目の奥の筋肉、脂肪の肥大による)、暑がりになり汗をかく、動悸、手足の震え、不眠、体重減少、下痢など甲状腺ホルモンが過剰になるための様々な自覚症状が現われます。 ただ、こうした症状は徐々に進行していくため、自覚症状はあっても、自分が病気にかかっているという認識が遅れ、耐えられなくなるほど重篤化するまで症状を我慢してしまう方も多いようです。
 
  一方の橋本病は、甲状腺を異物とみなして産生された抗体(甲状腺組織に対しての抗体、抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)が、甲状腺自体の細胞を破壊していく病気です。橋本病の名称は、九州大学の内科医の橋本策の姓に由来します。橋本はこの病気を1912年にドイツの学術誌において初めて発表しました。甲状腺が破壊されると甲状腺ホルモンの分泌が減り(甲状腺機能が低下した状態)となり、疲れやすい、けだるい、寒がりになる、むくんだようになる、無気力、眠気、便秘、など、身体の新陳代謝は停滞するためバセドウ病とほぼ反対の症状(身体機能が低下した状態)が現われます。

バセドウ病と橋本病。
ともに、なぜこの病気になるのか、明確な原因はわかっていません。 このため特定の予防法はなく、早期発見・早期治療が最善の対処法になります。

バセドウ病と橋本病 〜検査と治療〜

検査

バセドウ病や橋本病の検査は、「血液検査(甲状腺ホルモンの量や特殊な抗体の存在を調べる)」と 「超音波検査(甲状腺の形や大きさなどを調べる)」 のふたつが中心になります。

治療

バセドウ病、あるいは橋本病の治療は、薬物療法が中心になります。
定期的に行なわれる血液検査をもとに、バセドウ病の場合は甲状腺ホルモンを抑える薬を、橋本病の場合は甲状腺ホルモンを補充する薬を服用し、血液中の甲状腺ホルモンの量をコントロールしていきます。こうした治療の過程で甲状腺の腫れはおさまり、耐えられないような自覚症状も緩和していきます。ただし、薬物療法による治療は長期にわたります。途中で治療をあきらめたり、自己判断で薬の服用を止めたりしないように、根気よく治療を受けなければなりません。 バセドウ病では抗甲状腺約投与中止に至るまで、平均3.5年かかります。投与中止後再発する場合もあり。薬中止の指標は確定されていませんが、血中甲状腺ホルモン、および血中TSH値が正常で、血中抗TSH受容体抗体(TRAb)が少なくとも1
年間正常であることが最低条件となります。橋本病で甲状腺ホルモンが低くなった方は、なかなか甲状腺が復活してホルモンを出すということが困難なため、甲状腺ホルモンの補充がずっと必要になります。
  バセドウ病の方で薬物療法だけでは症状が改善されない方、薬がのめない方、あるいは薬物療法以外の治療を望まれる方には、放射線療法(アイソトープ治療)や手術療法が医師から推薦されます。このふたつの治療効果には、たいへん目ざましいものがありますが、治療を受ける方の年齢や身体的条件、ライフスタイルに対する考え方などで、その治療法の適応を考える必要があります。ここは専門の医師からの説明をよく理解した上で、治療を受けなければなりません。当院ではそのような方には専門病院をご紹介しています。

◆編集後記

10月1日インフルエンザ予防接種行います。
子供・大人関係なく、1回2,800円となっております。
接種ご希望の方は、受付にて予約をお取りください。

【接種期間】
平成24年10月1日〜平成25年1月31日

料金:
1回目 2,800円
2回目 2,000円(1回目当院で接種した方のみ)