2012年 12月 No.85
ホームドクター通信

◆お知らせ

年末です。本当に寒くなりました。底冷えしてます。
今年は皆様にとりまして、どんな一年だったでしょう。
年々、月日がたつのが早く感じます。

政権が交代しました。
近いうちに、と言われていて年内はないだろうと思っていたところ、突然の解散。
結果民主党惨敗、自民党が政権の座に返り咲きました。安部内閣が発足します。
最優先課題は日本経済の再生・外交でしょうが、医療政策はどのようなものなのか。注目してみたいと思います。いずれにせよ、いい方向に日本が向くことを期待しております。

いつも注目している今年の一年を表す漢字は「金」でした。金環日食のほか、ロンドン五輪での日本人選手の活躍や、東京スカイツリーの開業、山中伸弥教授のノーベル賞受賞などで、「多くの金字塔が打ち立てられた」ことが理由に挙げられたそうです。「金」は2000年シドニーオリンピックの年に続き2回目の選出とのこと。なるほど、そうきたか、という印象でした。

インフルエンザは現在のところ(H24.12月末)、この地域では流行はまだみられていません。
寒くなってきましたので、発症が危惧されるところです。感染対策をお願いします。まず手洗い、マスク、うがい。手についたウィルスが感染するのは意外に多いです。マスクをせずに咳やくしゃみをすると、ウィルスが2〜3 m 飛ぶといわれています。インフルエンザウイルスは飛沫の中に大量にいて、吸い込むと感染します。感染拡大を防ぐにはマナーの向上が必要です。

そこで必要なのが以前もご紹介しましたが、咳エチケット。以下の3か条が呼びかけられています。

  1. 咳・くしゃみの際はティッシュなどで鼻を押さえ、周りのひとから顔をそむけましょう。
  2. 使用後のティッシュは、すぐにふた付きのごみ箱に捨てましょう。
  3. 症状のある人は、マスクを正しく着用し、感染防止に努めましょう。

インフルエンザより12月中旬現在は先月院内報健康情報でお伝えしたノロウィルス(確定はできませんが)による嘔吐下痢が蔓延しています。
当院にもノロウィルスの診断キットがありますが、保険適応が3歳未満と65歳以上ですので、なかなか使えません。嘔吐したものの処理により手から家族内感染がよくおこります。こちらも手洗いにより予防しましょう。

インフルエンザ予防接種しています

1回2800円、2回目は2000円です。忠岡町在住の65歳以上の方は1000円です。来年1月末まで適用されます。
昨年からWHO推奨を受けて、3歳以上13歳未満は成人量と同じ0.5mlの2回打ちに変更になっています。
13歳以上は0.5ml 接種、1回または2回となっています。
まだの方は是非受けて下さい。

子宮頸がんワクチン、肺炎球菌ワクチン、Hibワクチンも引き続き受け付けています。
また新たに4種混合ワクチン(3種混合+ポリオ)が始まりましたが、品不足だそうです。

近隣のサービス付き高齢者住宅の管理医師になりました。当院が在宅医療を提供します。
和泉しんのう庵、忠岡ユアサイドの2か所です。
待合室にパンフレット置いています。入居御希望の方がいらっしゃいましたら、当院スタッフまで。

今年度年末・年始休暇のお知らせ

12月29日(土)-1月3日(木)まで休診させて頂きます。予約診察がこの期間にあたる方は診療予約、薬の処方日数など変更させていただきます。こちらも気をつけますが、定期薬服用中の方は休み中に薬が無くなるということのないようお願いします。
御迷惑をおかけして申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

◆アネトス通信

本年も残す所あとわずかとなりましたね。今年は、去年と比べると、まだインフルエンザの流行があまり取り上げられていませんが、皆様の体調はいかがですか?油断はしないで下さいね (;>_<;) 日頃からの、手洗い・うがいを心がけましょう。

アネトスでは、1年を通して色々な利用者様に利用していただき、お散歩や、色々なレクリエーションを実施する事ができました。
些細な会話等が、利用者様・利用者様のご家族との今後の関係づくりにつながり、そこから、安心・快楽へとつながっていくのだと、改めて思いました。
今後も、まず利用者様・利用者様のご家族を第一に、そして地域住民の方からも愛される施設づくりをしていこうと考えています。

PS アネトス通信を担当させていただくようになり、ようやく1年がたちました。まだまだ、内容にかけることあったと思いますが、ご愛読ありがとうございました。

来年も、どうぞ宜しくお願い致します。

◆胃癌について

人気お笑い芸人・雨上がり決死隊の宮迫さんが胃癌で手術をされました。
あんな若い元気な人でも胃癌になるの、というのが大半の皆さんの反応。
今回は胃癌についてサラッと簡単にお話します。

胃癌の現状

日本人にとって胃癌はとても身近な癌で、年間におよそ5万人が亡くなっています。先代の院長(私の父)も胃癌で亡くなりました。がんによる死亡原因としてかつて日本では男女とも胃癌が第1位でした。
現在では男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌、肺癌に次いで第3位となっています。(平成22年厚生労働省人口動態統計より)。
胃癌は、生活習慣の変化と医療(検診を含む)の進歩等により、世界的に罹患率、死亡率ともに年々低下傾向にある疾患です。

胃癌の原因

癌は遺伝子の病気です。正常細胞の遺伝子の変異が重なり、癌細胞となります。
その遺伝子変異をおこさせる原因ですが、胃癌では環境、遺伝などさまざまな因子があり、一言ではいえません。
有力なのは最近の研究から、ヘリコバクターピロリ菌感染が胃癌発症の大きな原因となることがわかってきました。
ピロリ菌が若いときに胃に感染し、長年かけて、胃に慢性胃炎(萎縮性胃炎)を引き起こし、慢性胃炎から、胃癌が発生するという経路です。
慢性の炎症による刺激が遺伝子変異・ひいては癌化に発展することはよく知られています。
ピロリ菌は大半が幼少時に感染するとされ、残念ながら感染予防の方法はありません。(近年、除菌治療はさかんに行われています。)
食物で胃癌発生および予防と明らかに因果関係を証明されているものはいまのところあまりありませんが、食塩の過剰摂取は胃癌発生の危険を高めること、野菜・果物の摂取は胃癌発生の有力な予防因子であることはほぼ間違いないようです。
そのほか、過剰なストレスおよび疲労などは免疫力を低下させ癌発生の要因のひとつとなります。
日本では食塩摂取の低下、衛生状態の改善に伴うヘリコバクターピロリ菌感染者の減少などによって胃癌罹患者が減少しているものと考えられます。

胃癌の症状・診断

胃早期癌ではほとんど症状はありません。進行癌になると、腹痛、食欲不振、黒色便などの症状がでてきます。
もちろん予防ができれば一番いいのですが、今のところ完全に予防できる方法はありませんので、癌ができても早期発見・早期治療をを行うことが重要なポイントになります。胃癌の診断は内視鏡で、胃の組織をとり、顕微鏡で検査して、癌細胞を発見することにより確定します。これに加えて胸腹部の CTなどで癌の進展度、浸潤・転移の有無を調べます。
早期発見できれば、劇的に進歩のある内視鏡的な治療が選択できます。
これは本当に手術に比べ、楽です。また早期癌は完全治癒が期待できます。ある年齢(癌年齢、50歳以上)に達したら症状がなくとも定期的に検査することが、進行胃癌にならない唯一の方法となります。
胃の検査は、主に検診などで行われる胃バリウム検査、と胃カメラ検査の2種類があります。
早期胃癌の発見となると、最近の器械の進歩もあり胃カメラのほうが診断能が高くなります。
高齢であり、ある程度進行した慢性胃炎(萎縮性胃炎)のある方は毎年定期的に胃カメラを受けられることをお勧めします。

検査で

胃カメラ検査は個人差はあるのですが、楽なものではありません。
当院では、以前より直径が6mmほどの極細の経鼻内視鏡を導入しています。
経口の内視鏡に比べ苦痛が少ないことが多いようです。

従来の口からの胃カメラの苦しさの原因は主に以下の原因が考えられます。

  1. 舌根部にカメラが接触することにより嘔吐反射が誘発される
  2. 検査中、咽頭部の狭窄感により呼吸がしにくくなる
  3. 胃に空気が入りゲップが誘発される

これらが同時に起こり苦痛が生じると考えられます。
経鼻内視鏡は胃内に空気を入れる面は経口内視鏡と同じなのですが、舌根部にはほとんど接触しないこと、細いため喉の狭窄感が軽くて済むことで検査を楽に感じさせるようです。
検査中声を出すこともできます。
経鼻内視鏡は、画像が経口内視鏡に比べわずかに落ちること、内視鏡治療ができない、など短所はあるのですが、多くの方に検診目的に定期的に(比較的楽に)胃カメラ検査を受けていただくという意味では、大変有用な手段と考えております。
日々診療を行っていますと、まだまだ進行胃癌の状態で発見される患者さんがいらっしゃいます。癌年齢に達したら、症状のないうちの定期的な胃カメラ検査をおすすめいたします。
当院では、内視鏡的な治療はしませんが、泉州地域には癌の内視鏡治療を得意とされている先生がたくさんおられます。
胃癌検診・経鼻内視鏡をご希望の際は、当院受付でご相談ください。

胃癌の治療

早期胃癌では内視鏡治療ないしは外科手術、進行癌では外科手術、転移のある進行癌では抗がん剤治療などが選択されることになります。
治療法を決める際には、日本胃癌学会によって定められているガイドラインが参考にされています。ステージ別に標準的な治療法が定められています。早期の段階であれば内視鏡治療を行うことができます。
この場合には、手術よりも体にかかる負担が少なく、入院期間も短いというメリットがあります。
ただし、胃癌が胃壁の深くまで浸潤していたり、リンパ節に転移している場合には使えません。
手術の場合には、内視鏡では治療できない状態になったがんも切除することができます。
ただし、胃癌の転移の状態によっては病巣が胃だけに限局しているわけではなくなってしまいます。
したがって、症状が進行して遠隔転移や遠い位置へのリンパ節転移がある場合には、手術ができないこともあります。
抗がん剤による化学療法は全身に治療効果を及ぼすことができます。
そのため、転移が進んでいる場合や、転移が疑われる場合に有力な選択肢となっています。
また、新しい薬も登場しており、かつてよりも良好な結果を期待できるようになっています。
このほかに、放射線を病巣に照射する放射線療法も行います。
原発巣だけではなく、骨転移による治療にも用いられています。

まとめ

胃癌にならないようバランスのよい薄味の食事を心がけ、疲れを溜めず、適度な運動を行い免疫力を高める生活習慣を作る。
ヘリコバクターピロリ菌の除菌治療を受ける。癌年齢に達したら定期的に胃カメラを受け病気の早期発見に努め、万が一胃癌ができても早期に治療を受ける。
こういったことが、現状では胃癌で命を落とさない方法と思われます。

◆編集後記

神戸マラソン以降、右膝の違和感・疼痛がでて、走り込みが滞っています。筋トレを中心に調整していますが。年末年始休暇を利用して、ぼちぼちLSD(ゆっくり長く走る練習)から再開したいと思っています。
皆様、よいお年を。