2014年 1月 No.98
ホームドクター通信

◆お知らせ

新しい年を迎えました。旧年中は大変お世話になり有り難うございました。
本年もよろしくお願いします。

ノロに続いて、インフルエンザが猛威を振るいだしました。
1月になって、とても寒い日が続いています。 
それに伴い、インフルエンザが流行しており、学級閉鎖の情報も連日でています。
今回の医療情報は冬の感染症にしました。

インフルエンザ予防接種しています
1回2500円、2回目は2000円です。
忠岡町在住の65歳以上の方は1000円です。1月31日まで適用されます。
まだの方はお早めに。

3月1日に泉大津市民会館小ホールで、泉大津市医師会主催で市民フォーラムを開催することになり、シンポジストに指名されました。
テーマは認知症。医師会でしている多職種連携の会、連携ツール、かかりつけ医対象の認知症対応力向上研修などについてお話する予定です。
個人的には認知症サポート医講座を受けたり、勉強会があれば出るようにしています。

当院の診療では、認知症が疑われる方が受診されたら、問診である程度評価します。
また、治る認知症がないか、甲状腺機能を含めた血液検査、更に病院での脳MRI検査をします。
このMRI検査では海馬の委縮の程度を計算して貰うようにしています。
脳MRIでアルツハイマーか脳血管性認知症か、治る認知症の代表である慢性硬膜下血腫、正常圧膵頭症の鑑別をするようにしています。
せん妄、暴力行為、などの問題行動が目立つ方は専門病院に紹介、受診していただくようにしています。
フォーラムでは総合討論があるようですが、どうなるんでしょうね。
参加を希望される方は受付までお申し出ください。
こちらから窓口である泉大津市包括支援センターに申し込む予定にしています。

この数年2月の中旬の泉州マラソンに向け、12月、1月と走り込みの時期でした。
御存知の方も多いように、11月に足の骨折を受傷して、まだ走ることができません。
忠岡駅難波方面の改札をはいったところの展示に、泉州マラソンの忠岡町選手の名前が貼り出されており、その中に私の名前があるのですが、今回は出ません。
申し込みが9月だったもので、そのまま表示されてしまいました。
残念ですが、今回は友人の応援にまわります。

歌手でタレント・司会のやしきたかじんさんがお亡くなりになりました。享年65歳、食道がんだそうです。
1月3日にお亡くなりになって、正月休みが明けてから発表するよう、世間が松の内から悲しまないよう、本人から指示があったそうです。
逝去発表以降の皆さんのコメントの多いこと。
豪快なエピソードも多いですが、いずれもが感動的で、毒舌家であったにもかかわらず、とても優しい人なんだな、と再認識させられました。
コメントを寄せられた人たちへの影響力、半端じゃないですね。知事になったり、フリーのアナウンサーになったり、人生変わった人も多くおられました。
私もたかじんさんのラジオとか、たかじんのばぁ〜が好きで、20年くらい前にはよくコンサートにも行っていました。
コンサートでは、濃いサングラスをかけ、舞台を歩き回り、とても深々としたお辞儀を曲が終わるたびにされてました。
曲より喋りの方が多かったかも。
歩き回ったり、濃いサングラスは照れ隠しだったとお亡くなりになったあとのコメントで知りました。
最近はテレビを見なくなったので、御活躍をみることもなかったのですが。
ニュースで昨年3月に一度復帰され、再度体調不良でお休みになったのには、ちょっと不吉な予感がありました。

訪問診療している方の中にも、今日はたかじんさんが亡くなったので、一日泣いていた、という方もおられ、すごく愛されてたんだな、と感じます。

最後の一言は”ちょー、飲みに行ってくるわ”だったそうで、なんか、らしいですね。
ターミナルケアをライフワークにしている私にとって、とても響く一言です。
声が聴こえてきそうで。
私も最後にこんなセリフを言えるように、今から準備しておかなくては。
とっさの時にはでないかもしれないので。
一日の終わりにはゆっくり風呂に入って、ビール、が私にとっての定番ですので、人生の終わりにもこれと同じようなことを言いたい。
今から考えておきます。御冥福をお祈りします。

2月の水曜日の夜診・5日、12日、19日、26日 都合により休診します。
また、2月6日の木曜日、終日休診となります。
御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします。

◆冬の感染症:ノロとインフル

本格的な冬がやってきました。空気が乾燥し、気温が低くなる冬季は、感染症がピークを迎える季節でもあります。冬季に問題となる感染症にはかぜ症候群、インフルエンザ、肺炎などの呼吸器感染症と、ノロウイルス、ロタウイルスなどのウイルス性の感染性胃腸炎があります。今季ノロウイルスによる感染性胃腸炎が全国的に猛威をふるっています。広島、浜松の集団感染のニュースも記憶に新しいところです。
インフルエンザも一月から本格的な流行シーズンに入っています。今回は冬の感染症について書きます。

1.冬に感染症が流行する理由

1) ウイルスの伝播性・感染力増強
冬期には、感染した人の分泌物に含まれるウィルスが乾燥するため、空中に浮遊しやすい状態になります。
また低温・低湿度下ではウイルスが体外でより長く安定して存在することが可能となります。

2) 人の免疫力低下
一方体温が低下すると代謝活動が低下し、免疫を担う細胞の働きも低下します。また乾燥によりのど・鼻腔・気管支の粘膜が乾いた状態となります。本来粘液でウイルスの進入を防いでいるのですが、ウイルスが粘膜内に侵入しやすくなり、感染を起こしやすくなります。

2.冬期に流行する代表的な感染症

1) 呼吸器感染症
 「かぜ症候群」(いわゆる「かぜ」)は日常診療において最も遭遇する疾患の1つです。
主にウイルス感染によって発生する上気道感染で、くしゃみ、鼻水、発熱、のどの痛み、咳などの症状を認めます。ウイルスの種類によっては症状が強く合併症を起こしやすい場合があり、インフルエンザは高熱、関節痛、筋肉痛などの強い全身症状を伴うことから、かぜ症候群とは区別して考えます。乳幼児ではRSウィルス感染症が問題となります。冬期には肺炎の増加が顕著となりますが、インフルエンザの流行期にはインフルエンザと細菌性肺炎の合併が問題となります。


2) 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の原因(細菌、ウイルス、寄生虫など)によるものを包括する症候群名ですが、冬季に流行する感染性胃腸炎の大半は、ノロウイルスやロタウイルス等 のウイルス感染によるものと推測されます。
ノロウイルス感染症による胃腸炎は、通常24〜48時間の潜伏期の後、突然の吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などで発症します。
通常3日程度で回復しますが、牡蠣などのウイルスに汚染された食物からの感染がよく知られていますが、その他に患者の嘔吐物や下痢便を介してヒトからヒトに感染します。ノロウイルスの感染力は非常に強く、しばしば保育所や幼稚園、病院や高齢者施設等で集団発生が報告されています。
一方 ロタウイルス感染症は冬季乳幼児下痢症の代表的な原因ウイルスであり、小児に多くみられます。48〜72時間の潜伏期の後に嘔吐、下痢、発熱が出現します。米のとぎ汁のような白色の下痢便が特徴です。

今回は視点を変えて、冬の感染症の代表格であるノロウィルスとインフルエンザウィルスの話題を提供します。
まずどちらも人体に病気をおこす病原体のうちのウィルスだということ。
ウィルスと細菌の違いを御存知でしょうか?
細菌は細胞壁をもち、DNAとRNAの両方を持っていますがウイルスはどちらか一つしか持っていません。
そのため、細菌はウイルスより数十倍、数百倍大きいです。
細菌は自分で代謝をし、自己複製しますが、ウィルスは自己複製はできず、生きた細胞に取り付いて、そのコピーを作らせることで増殖します。
臨床的に大きな違いは、細菌には抗生物質が効きますが、ウィルスには効きません。
インフルエンザもノロもウィルスです。
ただ一つ紛らわしいことにインフルエンザという名前の細菌があります。インフルエンザ桿菌といわれる細菌で、これは1800年代のインフルエンザの大流行の際に、原因菌として分離された細菌です。
そのためインフルエンザ菌という名称が付いていますが、インフルエンザの真の病原体はインフルエンザウイルスで実はこれは間違いだったということが後にわかりました。しかし、名称だけが残ることとなったのです。
小児のHibワクチンというのはこのインフルエンザ菌b型(Hib)に対するワクチンです。
このHibは細菌性髄膜炎の原因となる菌として知られています。

インフルエンザとノロの共通点。どちらも冬季に流行するということ。両者とも低温、乾燥に強いウィルスです。

では、その違いをまずワクチンについて。
インフルエンザにはワクチンがありますが、ノロにはワクチンがありません。
ノロウイルスは、どんどん変異するのでワクチンが作れないとされています。一方、インフルエンザにはワクチンがあり、接種後2〜3週間で予防効果が出ます。
ワクチンを打っても残念ながらインフルエンザにかかる人はいます。しかしかかりにくくなる、なっても症状は軽くすむ、とは言われています。

次に症状に関して。発熱、全身倦怠は共通です。
どちらもグタッとしています。
少し問診すればどちらか分かりますが、一見しただけとどちらか区別がつきにくい人もいます。
インフルは発熱と全身倦怠感や脱力が特徴。
一方、ノロは吐き下しです。
但し、吐く場合と下痢のどちらか一方の場合と両方の場合があります。発熱ではインフルエンザでは38度台の熱が出ます。なかには40度近い人もいます。
一方、ノロは37度台が多いようです。

検査について

インフルかどうかは簡易キットで調べます。
但し概ね発熱後12時間以上経たないと陽性になりません。
そのため、検査タイミングが早すぎて陰性になることがあります。
そんな時は、医師は諸症状からインフルと診断することもあります。これは臨床診断といいます。昔は臨床診断だけでした。我々は研修医の頃、指導医から、待合できちんと座って待てない人はインフルエンザである、と教わりました。
一方、ノロの診断キットはあり、当院にも置いてますが、保険が効かないこともあり、実際にはあまり使いません。
それはノロと確定してもインフルと違って特効薬が無いので、診断を確定させる意味があまりないのです。
ノロの簡易キットは小児の集団感染や老人ホームなど特殊な場合にだけ行う検査だとお考えください。

治療について

インフルエンザ治療薬として飲み薬、吸入薬、点滴という3種類の抗ウイルス薬が使えます。
昨シーズンから今シーズンは一回ですむ吸入薬の人気が高いようです。ただし御高齢の方、在宅患者さんの多くは吸入薬が使えません(吸い損いが困る)ので、点滴で対応する場合が多いです。一時期10代の使用で問題となったタミフルの使用頻度は減っていますが、経口薬を好まれる方もいますので、まだ使います。もちろんこうした抗ウイルス薬を使わない人もおられます。葛根湯や麻黄湯、後期であれば補中益気湯などの漢方薬を使うこともあります。基本的に、元気な人であれば、インフルエンザは何もしなくても一週間程度で症状は治まります。
一方、ノロは絶食することが最良の治療です。
しかし、脱水にならないために水分補給は重要です。
吐き気止め、整腸剤などの対症療法のみしかなく、待てば自然に治ります。学校ではインフルは発症後5日を経過するまでは学校を休まないといけませんが、ノロには明確な規定が無く、症状が治まれば登校や出社が可能です。乳幼児や高齢者は脱水や、嘔吐物による窒息や肺炎に注意が必要です。

感染予防について

両者とも手洗い、マスクが重要です。
くれぐれも他人にうつさないことが大切です。公共の場でウイルスを撒き散らさない。特に見知らぬ高齢者や虚弱者にうつさぬようマナーを守りましょう。
ノロウイルスの感染予防には、流水と石けんによる手洗いの励行と、食品等の十分な加熱、嘔吐物や下痢便の適切な処理がきわめて重要です。嘔吐物や下痢便の処理の際には手袋だけでなく、必ずマスクを着用しましょう。空中を浮遊するウィルスがいるからです。消毒、清掃には塩素系の洗剤(ハイター等)を希釈したものを使用しましょう。

インフルエンザ後の肺炎も予防したいです。65歳以上の方、何らかの基礎疾患がある方は、ぜひ肺炎球菌ワクチン接種を受けられることをお勧めします。

また、最初にも述べましたように、冬は乾燥すること、免疫力が低下することが感染にかかる大きな要因となります。
まず、乾燥対策。加湿器を活用しましょう。
昔はストーブの上にやかんがよく乗っていましたが、あれも乾燥を防ぐためには有効だっだでしょう。また、喉の乾燥をふせぐためにこまめに水分をとるようにしてください。
うがいをする、マスクをする、飴をなめるのも有効でしょう。
そして抵抗力、免疫力をつけるために。規則正しい生活を。睡眠時間は十分にとる。栄養をとる。適度な運動も有効です。
いつものうがい、手洗い、マスク・咳エチケットに加え、加湿、睡眠・栄養・運動を今回は提案します。
予防できることはして、快適に冬をすごしましょう。

◆アネトス通信

 皆様ご壮健で穏やかな新年をお迎えのことと存じます
アネトスでの勤務も1年半となり何人かのターミナル期にある利用者様と関わりました。ターミナル期の利用者様に関わる中、在宅で良い看取りを行うため重要であると思うことは、本人や家族に対する十分なインフォームドコンセント(説明と同意)が早期から行われているということです。インフォームドコンセントが十分に行われていないということは本人、家族が病状、経過、予後、を理解することができず死に向き合うことができません。その為、無益な延命治療を望み完治に対する期待を抱いてしまう。つまり、死を受けいれることができないということです。その為、病状が急変すると、どうすればよいのか分からず救急車を呼ぶことになってしまいます。また、状態が悪くなり本人との意思疎通がとれなくなった時の家族の代理判断の問題もあります。
緩和ケア研修で学びましたが、「緩和ケアが必要な時期」とは、終末期であるから、癌治療後であるからという状態で決まるのではなく、患者やその家族が何らかの苦痛や心配を持ち解決が必要になった時であり、その時が緩和ケアの時期だそうです。早期(がんと診断を受けた時)から緩和ケアが適切に行われることが重要だと学びました。
早期から緩和ケアが行われるということは、よい看取りを行ううえでも重要なことだと感じます。在宅で看取りを行うには様々な問題にぶつかることはありますが、アネトス(療養デイ)では在宅で良い看取りができるように医師、看護師、ケアマネージャー、ヘルパー等の利用者様をとりまく人々と連携を取り、よりよい関わりができるよう努めていきます。

◆編集後記

2月水曜日、午後診療を休診します。

※午後休診日:5日・12日・19日・26日

午前診療は、通常通り行います。

予約日の調整・変更などご迷惑をおかけいたしますがご了承ください。